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 昭二のステータスは、多分そんなに高くない。

 前教えてもらったユニークスキルのせいで、弱体化してるからだ。

 確か、ステータスが十分の一だったかな。


 酷い減り具合だけど、これは俺も持っていた封印スキルの影響だ。

 進化するとすごい効果を得るが、それまではすごい制限を受ける。


 よし、決めた。


「とりあえずそのまま作成をお願いします」

「いいのか?」

「はい、大丈夫です」

「よし分かった、任せとけ」


 最初は窺うようだったが、断言すると良い笑顔を向けてくれた。

 詳しく説明しなくても理解してくれたようだ。

 さすがタケダ、いい筋肉だ。


 予定通りの素材での作成をお願いして、俺とタマは一度村へ帰ることにした。

 城へ戻り、おろし金に飛んでもらう。


 あっという間に、我が家の放牧スペースへと降り立った。

 おろし金のお陰で移動が楽だ。

 たっぷりおやつをあげて労ってあげないと。


「タマ、おろし金を可愛がってやろう」

「「わかったー!」」


 タマにおろし金のことをお願いすると、二人に分かれて元気よく返事をしてくれた。

 二人になれば二倍可愛がれる。

 なるほど、賢い。


 ストレージからおろし金が食べそうなものを取り出して、テーブルの上に重ねておく。

 これは、バーベキューの時にタケダが作ってくれた屋外用のテーブルだ。

 何かと便利だからそのまま使わせてもらっている。


「それじゃあおやつはここに置いとくぞ」

「はーい!」

「おろし金ー! おいでー!」

「キュル!」

「おろし金、いつもありがとうな。ゆっくり休んでてくれ」

「キュルル」


 タマの呼び掛けで寄って来たおろし金の鼻先を撫でる。

 甘えるように顔を手に押し付けながら、小さく鳴く様子が可愛い。

 よしよし、可愛い奴め。


 さて、おろし金はタマに任せて俺は昭二のところへ行こう。


 昭二の家は、モジャの家からそんなに離れていない。

 数分歩けば到着した。

 こじんまりとした、年季の入った家だ。

 ドアを軽くノックして、声を掛ける。


「おはようございます。昭二さん、いらっしゃいますか?」

「はいはい。――おお? ナガマサさんかいな。何かあったんか?」


 すぐにドアが開いて、昭二が現れた。

 驚いているようだ。

 さっき畑で話をしてたのに、また来たら驚きもするか。


「昭二さん、レベルを上げましょう」

「レベル?」


 そう、簡単なことだ。

 新しい農具を扱うのにステータスが足りないなら、足りるようにすればいい。

 ようは、昭二のレベルを上げてしまえばいいだけの話だ。

 

 レベルを上げれば、一般プレイヤーにPKされる危険性も減るだろうし。

 今は村から出ていないらしいけど、多分、出たくても出られないんじゃないかと思う。


「突然過ぎてよく分からんのう。一体どういうことなのか、説明してくれんかな?」

「あ、はい」


 昭二は不思議そうな顔をしている。

 ちょっと唐突過ぎたか。


 昭二に、順を追って説明していく。

 農具を造ろうとするも、扱うのにある程度のステータスが必要だと予測されること。

 せっかくの恩返しなので、クオリティを落とすのも申し訳ないこと。

 それじゃあレベルを上げてしまえばいいじゃん、と思ったこと。


「なるほどのう。よう分かった」

「付き合ってもらえますか?」

「そりゃあ勿論じゃよ。儂からすれば有難いだけの話だけんのう」


 昭二はかか、と笑っている。

 良かった。

 ここでも遠慮されたらどうしようかと思った。


「儂にも家族が増えたからのう。いつまでもこんなヨボヨボはしておれんよ」


 シワシワで人の良さそうな顔だが、その眼は力強い。

 

 最近、村の外だけじゃなく中でも一般プレイヤー達が騒がしい。

 多分寄って来てるのは俺のせいなんだけど、いざこざもよく起きているらしい。


 そんな状態では、ルインや紅葉にいつ何が起きるか分からない。

 そうなった時、対処できるようにしておきたいと思ったんだろう。

 

 それなら俺も、全力でレベル上げをお手伝いしなければ。

 昭二には封印スキルもあるし、それが進化すれば相当強くなれる筈だ。


「それじゃあ昭二さん、行きましょう」

「今からなんか?」

「はい。善は急げです」

「分かった。田吾作も連れて来るけん、ちと待っとってくれるか?」

「はい」


 昭二は家の中に引っ込んで、すぐに出てきた。

 頭の上には相棒のセキセイインコも一緒だ。

 中で話声もしてたから、ルインと紅葉にも声を掛けてきたんだろう。


「それじゃあ行きましょう」


 昭二を連れて、放牧スペースへ戻ってきた。

 そこではタマとおろし金が戯れる、ほっこり空間が出来上がっていた。


「タマ、おろし金、出発だ!」

「世話になります」

「「出発だー!」」

「キュルル!」


 おろし金の背中に昭二を乗せて、前後をタマで挟む。

 これで落ちることはない。


 やって来たのは、≪輝きの大空洞≫だ。

 まだ知られていないのか、一般プレイヤーどころかβNPCすらいない。


 一層の横穴を通って、輝きの城の跡地へ到着した。

 ここから、更に難易度の高い≪無明の城≫へ行ける。

 その分経験値もがっぽり稼げる筈だ。


「こんなとこもあるんじゃのう……」

「そういえば昭二さん、今のレベルはいくつなんですか?」

「うん? あーっと確か……8じゃのう」

「8?」


 思ったよりも低い。

 というか低すぎないか?


「えっと、それは基本レベルですよね?」

「そう……じゃな。もう一つのは10じゃ」


 もう一つ、っていうのは職業レベルか。

 あれ、ということはもしかして……。


「職業はなんですか?」

「ノービスと書いてあるのう」


 どうやら、昭二は転職をしていなかったようだ。

 そうか。

 バーリルには冒険者ギルドは無い。

 最初からずっとあの村で生活していた昭二がしていなくても、無理はない。

 

 もしかすると、最初のチュートリアルすら飛ばしてしまった可能性もある。

 いや、でもレベルとかスキルは知っていたから、そんなことはないだろう。


「とりあえず転職しましょう」

「よく分からんけど、ナガマサさんが言うならそうするかのう」



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