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291 武勇伝と金の像


 フルーツアイランドからストーレ経由で帰宅する頃には、すっかり夕方になっていた。

 移動手段は、おろし金に頑張ってもらった。

 筋肉二人組を乗せても安定感を失わないのは流石だ。


 家の周りには、また一般プレイヤー達の姿があった。

 だけど、数はそんなにいない。

 大量に追加販売したのが効果あったのかもしれない。


 放牧スペースに降り立つおろし金を見てざわついていたが、気にしない。

 

「ありがとうなおろし金。お疲れ様」

「おつかれさまー! よーしよしよしよし!」

「キュルル!」


 おろし金の顔を軽く撫でると、首元にタマが飛びついた。

 そのままおろし金の顔をすごい勢いで撫でている。

  

 ドラゴンモードのおろし金に釣られたのか、一般プレイヤーが増えてきている。

 あんまり目立つのも良くないか。


「可愛がるのはいいけど、続きは家の中でしような」

「はーい!」

「キュル!」

「いこ、おろし金!」

「キュル!」


 声を掛けると、タマは元気に家へと駆けだしていった。

 おろし金も、カナヘビモードになって付かず離れず後を追う。


 このままここにいたら、また面倒に巻き込まれるかもしれないからな。

 一般プレイヤー達のざわめきを聞きながら、俺も裏口から家の中へ。


「おかえりなさい」

「おかえりなさいませ」

「ただいま」


 扉を閉めると、ミゼルとミルキーが出迎えてくれた。

 タマ達が先に帰宅したのを見て、裏口の前まで来てくれたようだ。


 俺の左腕に止まっていたシーソーが宙を飛んで、柱の一本へと移った。

 まるで飾られている盾のようだ。


 リビングには葵と石華がくつろいでいる。

 向かいにはタマが二人と、おろし金。

 さっそく今日あったことを語っているようだ。


 二人とも、興味深そうに聞いている。

 あれは今までにないくらい不思議な空間だったからな。

 モンスターのいる場所に行って、狩りをせずに帰ってくるなんて初めてだ。


 ボディビル大会を普通に満喫してたなんて、冷静になってみると違和感しかない。

 意識が筋肉に引きずり込まれていたんだろうか。

 恐るべし、筋肉。


「タケダさん達との狩りはどうだったんですか?」

「私も、気になりますわ」

「楽しかった……かな?」

「どうして疑問形なんですか……」


 言い切ろうと思ってた筈なのに、間が空いた上に微妙に語尾が上がってしまった。

 ミルキーが不安そうな顔をしているが、心配されてるんだろうか。


「別に、危なかったとかはないよ、大丈夫。詳しくは、晩御飯でも食べながら話すよ」

「お願いします」

「冒険のお話が聞けるんですのね。楽しみですわ!」


 タマの擬音ほぼ100%×2の体験談を聞いてる内に、夕食の時間になった。

 二人の作った料理を食べながら、今日の様子を話す。


 ミルキーは少しだけ呆れていたが、それでもみんな、楽しそうに聞いてくれた。

 葵は特に興味深々だったから、今度またタケダを誘って行くのもいいかもしれない。

 ムッキーもきっと、喜んで参戦するだろう。


 ミルキーはやっぱり、微妙な顔をしていた。

 畑の細マッチョを見慣れても、ムキムキテカテカのマッスルは苦手らしい。


「そういえば、みんなは何して過ごしてたの?」

「私は葵ちゃんと一緒に畑の方に行ってました。ミゼル様に植物の種をもらったので、植えてみたんですよ」

「そうなんだ。どんな植物なの?」

「ええっと……」


 その種は、パシオンが持って来た物だそうだ。

 リリース前日のパーティーの日にもらっていたらしい。

 ミゼルと仲良くして欲しいと、お願い付きで。


 いつの間にそんなプレゼントを……。

 俺には金のパシオン像で、ミルキーには植物の種。

 二人ともが興味のある素材だと思うと、普通に嬉しい。


 ただ、俺の場合は溶かしていいものかちょっと困る。

 とりあえず今は、魔除けとしてリビングに飾ってある。


 意識が逸れてしまった。

 種がどんなものかは、ミルキーもパシオンもよく知らないらしい。


 今度詳しく聞いておいた方が良いだろうか。

 変なものは渡さないとは思うが、念の為だ。


「私は、畑でムッキーと修行」

「なるほど。調子はどう?」

「ばっちり……!」

「そっか、なら良かった」

「近いうちに≪心≫の修行に入る……!」

「おお、ついに始まるんだね」


 葵は謎の筋肉アイテムを手に入れる為の修行を始めるようだ。

 三種類集めたいって言ってたな。

 

「葵ならだいじょーぶ!」

「うん、間違いないね」

『葵は強い子じゃからな』

「みんな、ありがとう」


 タマが断言し、俺も同意する。

 石華も更に乗っかって、ミルキーとミゼルは微笑んでいる。


 葵の笑顔も、固さが取れてきた気がする。

 良いことだ。


 ミルキーやミゼルは言うまでもないし、石華も可愛がってくれている。

 タマは同年代なのもあって、一番仲良しだ。

 もっともっと馴染んでもらえるように、俺も頑張ろう。


 畑の様子が気になったから、ついでに聞いてみた。


 ミルキーによると、相変わらず観光客的なプレイヤーは多いようだ。

 だけど畑の中には入って来てもすぐに叩きだされるし、特に問題はないとも教えてくれた。


 畑を出入りする時に邪魔だったりはしたが、お願いしたら素直に退いてくれたらしい。

 オンラインゲームだし変な人の比率は多いかもしれないけど、そんな人ばっかりじゃないよな。


 でも、移動中に絡んできたプレイヤーはいたようだ。

 情報を教えてほしいだけならまだマシで、畑の素材を寄越せとか、そういうのもいたと、眉を寄せながら教えてくれた。


 補足として、その流れで決闘を挑まれて、ミルキーは相手を瞬殺したと葵が教えてくれた。


「あれはすごくしつこくて、決闘を受けないと離れてくれなかったから仕方なくです!」


 なんて、ミルキーは慌てて弁明していた。

 別に変なことじゃないと思うんだけどなぁ。

 俺だってそうすると思う。


 何にせよ、新しく作った盾ゴーレムが役に立って良かった。

 興奮気味に語る葵によると、大活躍だったそうだからな。



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