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276 装備と流通

ナガマサ編再開です!


 いつの間にか寝てしまっていたようだ。

 大き目のベッドの真ん中で目を覚ました。


 二階の寝室の内、一番大きな部屋。

 ここは本来空き部屋のつもりだった。


「よ、っと」


 両隣で寝ている二人、ミルキーとミゼルを起こさないようにベッドを降りる。

 この二人がいつの間にか模様替えをしていて、なんやかんやあってここで寝てしまった。


 昨日は疲れが勝ったせいかすぐ寝てしまった。

 でも、よく考えると女の子に挟まれてたとかすごい状況だ。

 思い出すと恥ずかしくなってきた。

 少し離れて、一度落ち着こう。


「あ、おはよー」

「おはおはー」

「おはよう!」

「おはようございます。三人共、早いですね」


 一階に降りると、モグラ、ゴロウ、タケダが既に起きていた。

 今の時間はまだ朝五時だ。

 こんなに起きるの早かったっけ。


「薄暗い内にストーレに帰ろうかと思ってね。人はまだ多そうだけど、明るい内に出歩くよりはマシだと思うから」

「そういえば、そうでしたね」


 もうフィールドは一般プレイヤーで溢れてる筈だ。

 そんな中を俺達が出歩けばどうなるか。

 面白半分に襲い掛かってくる可能性が高い。


 始めたばかりのプレイヤーは怖くはない。

 けど何が起こるか分からない。

 危険を冒すよりは、慎重なくらいで丁度良いだろう。

 流石モグラだ。


「それじゃあお世話になったね。オレも落ち着いたし、また今度狩りにでも行こうよ」

「はい、行きましょう」

「その時は俺もお願いね」

「にゃあ」

「俺の方には新しい素材や作製の依頼を持ち込んでくれよな」

「あ、そうだ」

「うん?」

「どうしたんだ?」


 サービス開始で、どういう状況になったかまだよく分からない。

 もしかすると、しばらく落ち着いて会えない可能性もある。

 このまま帰すのも勿体ない。

 

「俺が作った装備があるんですけど、買い取ってもらえませんか?」

「マジ? 財布が許す限り買わせてくださいお願いします!」

「そうだな、俺もあるだけ買わせてくれ」

「余るようならオレにも買わせてほしいなー」


 ゴロウが勢いよく喰いついた。

 タケダもすぐに同意して、モグラまで乗っかって来た。

 そんなにグイグイ来ると思わなかったからびっくりした。

 自分で言い出しておいてあれだけど、そんなに食いつくと思わなかった。


「性能とか見てから決めなくていいんですか?」

「値段は影響するかもしれないが、買うかどうかはまず買うで間違いないだろ」

「んだんだ。商売の下手な俺でも分かる。ここは買うしかねぇ!」

「そう、ですか」


 ゴロウの謎の勢いに押されてしまった。

 理屈はよく分からないが、良いものだと確信されてるっぽい。

 確かに性能は良いんだけどね。


 暇な時にせっせと作り置きしておいた装備を見せていく。

 詳細の画面を開く度に、三人は興奮した声を上げる。


「いやー、やっぱりナガマサさんはすごいね」

「これならきっと飛ぶように売れるぞ。俺達と同じプレイヤーでも、全然レベルが上げられてない連中は結構いるみたいだからな」

「すげー! これなら一本五千cとかでも買っちゃいそう」

「確かにね。初心者の頃にこんな装備が売ってたら、有り金叩いてでも買っちゃうと思う。ナガマサさん、これ、買い取り希望価格は?」


 希望価格か。

 正直考えてなかった。

 材料は畑にいくらでも生えてくるし、掛かった費用はタダみたいなものだ。

 初心者向けだし、安くていいかな。


「一振り五百でどうですか?」

「えっ、安くない?」

「材料費が掛かってないから損にはなりません。それに、安い方が初心者さんの助けになるじゃないですか。モグラさんへの恩返し分です」

「さっすがナガマサさん、優しいね」

「全くだな。それじゃあ一本五百として、いくつあるんだ?」


 ストレージを開いて数を確認する。

 端数は俺が配ったりあげたりするようだから、数えない。


「短剣三百、長剣三百、短槍が百です。練習用も同じ数あります」

「多いね」

「今いくら持ってたっけ……」

「ゴロウさんよ、買えないならウチで引き取るぜ?」

「いや、大丈夫! 大丈夫だからちょっと持ち物買い取ってくれません!?」

「おう、構わないぜ」


 ゴロウがタケダと取引を始めた。

 持ち金が足りずに、この場で用意するようだ。

 何もそこまでしなくても。


「間違いなく得する買い物だからね。ゴロウちゃんの判断は間違ってないと思うよ」

「そういうものですか」

「そういうものだね」


 待ってる時間で、初心者用のアクセサリーを作成した。

 材料は勿論雑晶だ。

 ただ硬いだけの石だから、それなりの性能にしかならなくて有難い。

 

 バッジとして作って、名前は≪初心者バッジ≫にした。

 最大HPが+1000、最大SPが+400のアクセサリーが出来上がった。

 装備制限はレベル30以下。

 ゴロウのお金が調達される間に、四百個作製した。


「ふぅ、お金の用意が出来たから取引してクレイモアー」

「新しい装備品作ったんですけど、どうしますか?」

「え?」

「こんな感じの性能なんですけど」

「これは……初心者には欠かせない装備になりそうだね」

「ナガマサさん、俺はいくらでも買い取るぞ」

「タケダさんもっかい取引してクレイモアー! 金が足りなくて爆発する―!」

「買い取るから少し落ち着け……」


 ゴロウはまたタケダに持ち物を買い取ってもらうようだ。

 また少し待つことになったけど、暇つぶしに装備を作ると同じことになりそうだ。

 仕方ないから大人しくしとくか。


「ふぅ、充分な数が確保出来たー! ありがとうナガマサさん! あとタケダさんも助かった」

「いいってことよ。いやしかし、良い買い物が出来たぜ。卸売してる連中に売り込んどくからな」

「ありがとうございます」

「オレにも売ってくれてありがとね。初心者さん捕まえたら有難く使わせてもらうよ」

「はい、是非そうしてください」


 そんなこんなで、取引が終わった。

 三人共帰り支度を済ませ、少し明るくなってしまった外へと出て行った。


 さーて、とりあえずは俺も畑仕事を済ますか。



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