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「ほらゼノ、あたし達も帰るわよ」

「ん、あ、ああ、そうだな」

「ゼノさん達のお陰で新しい素材もポーションも両方手に入ったから、きっと報酬いっぱいだよ!」

「やったわね!」

「うん、やったよ!」


 ルインに声を掛けられて我に返った。

 少しぼーっとしていたようだ。

 クエストを完全に達成出来たからか、二人とも楽しそうだ。


 いつまでも考えていても仕方がない。

 彼らはこの世界の住人だ。

 ゲームを続けていればまたその内、会うこともあるだろう。


 真っ赤に輝く夕日が目に染みる。

 時折、畑仕事を終えた様子のNPCが広場を横切って行く。


「よし、帰ろうか」

「あんたを待ってたんだけどね」

「ごめんごめん。ほら、暗くならない内に戻ろう」

「そうね。ほらほら、早く行くわよ。さっきもらったコインを吸収しないといけないんだから!」

「あっ、一人で先に行くなよ。って、聞いてないな。シュシュ、俺達も行こう」

「うん!」


 俺達は、農耕の村バーリルを後にした。

 現実世界では深夜だからか、フィールドのプレイヤー達の姿は少なかった。

 それでもチラホラはいたが、襲い掛かってくるようなのはいなかった。

 良かった良かった。


 早足で移動したお陰で、完全に暗くなる前にストーレの街へと戻ってこれた。

 もう夜になるし、シュシュの宿まで直接移動した。

 今日は、ここまでだな。

 

「それじゃあ俺達は一度ログアウトするよ」

「えっ、あたしの強化は!?」

「思ったより遅くなったから、また明日な。もう眠気が限界だ」

「えー」

「悪いけど、我慢してくれ。もうメニューを開く気力すら無い」

「もう、しょうがないわね」

「ありがとな」


 ルインは不満そうだが、もう眠い。

 このまま寝落ちしそうなくらい意識がぼやけてしまっている。

 さすがに慣れてない対人戦をあれだけ続けたのは、負荷が大きかったようだ。


「けどそうなると、あんたが戻ってくるまで退屈ねー」

「すぐ戻って来るさ」

「早くしなさいね」

「はいはい」

「ゼノさん、ありがとう!」

「どういたしまして。明日からもよろしくな」

「うん!」


 ルインからのお願いで、俺はシュシュを守る。

 それ一日や二日だけのことじゃない。

 このゲームを続ける限り、ずっとだ。

 そう決めた。


「それじゃあまた」

「またね」

「またねー!」


 残った気力を振り絞って、メニューを開く。

 そしてログアウトを選ぶ。

 決定。

 視界が暗くなっていくのと同時、俺は意識を手放した。







「んぅ……」


 ゆっくりと瞼を開けると、視界が薄暗い。

 ああ、ログアウトしたけどそのまま寝たのか。

 重たい頭を起こして、ヘルメット型のゲーム機を外す。

 よし、これで軽くなった。


 とりあえずトイレを済ませてから洗面所へ。

 眠気覚ましに顔を洗って歯磨きをする。

 よし、目が覚めた。

 

 パックの紅茶を淹れて、カップを持って部屋に戻る。

 昨日はゲームを始める前にちょろっと見ただけだったから、掲示板を確認しておこう。


 椅子に座って、電源を入れっぱなしだったパソコンを起こす。

 

 一日経ったが、掲示板に情報は増えてるだろうか。

 ざーっと画面を動かしながら、目についたスレッドを開く。


 観光スポットスレ、相棒を見せびらかすスレ、一番変な相棒を選んだ奴が相棒スレ、最強ステ振り議論、ユニークスキルを自慢するスレ。

 スレッドのタイトルだけ見ても、色々な楽しみ方をしてるんだなと分かる。


「げ……」


 何となく気になったスレを遡っていると、変な声が出た。

 ≪ゲーム内で見かけた変人スレ≫に、俺のことが書いてあったからだ。


 名前や容姿は出ていないが間違いなく、俺だと分かる。

 バーリルでβNPCへの付き纏いを止めさせる為に、課金アイテムを賭ける変態……。

 少数派なのは分かるけど、そんな書き方しなくてもいいじゃないか、なあ。


 でも、おかしいとは思わない。 

 自分も、これを書いた人も、みんな。

 俺がβNPCに対して人間のように扱うのが自由なら、それを見た他のプレイヤーが理解出来ないのもまた、自由だからな。


 でも変態はちょっと嫌だ。

 もう少し言い方ってあると思うんだよな。

 せっかくだから書き込んでみよう。


 袋叩きにされた。

 本人乙ってこの野郎、どうしてそんなことが分かるんだよ!

 合ってるけど、確定する要素無いだろ別に!


 庇ったからって本人って決まった訳じゃないんだからな!

 俺以外に庇う書き込み無かったけど!


 まあ、匿名掲示板なんてこんなものだ。

 気にしないようにしよう。

 

 今日は、ナガマサにもらったコインでルインの強化だな。

 そんなに大したものじゃないとは思うけど、あの大魔境を作った本人がくれたものだ。

 自然と期待も膨らむ。


「その前に、まずはご飯だな」


 ゲームを長時間するには、栄養と健康の管理は必須だ。

 きちんと食べて、休んで、ゲームをする。

 身体を壊してしまったら、ゲームどころじゃなくなってしまうからな。


 さー、今日も張り切って遊ぶぞー!



ゼノ編、ここまでで区切りです!

思ったより長くなりましたが、次からはナガマサ視点に戻ります!

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一位のキャラには記念SSと記念イラストを作成します!

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