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本日四回目の更新です!
シュシュを連れて≪農耕の村バーリル≫へ行く為に、まずは戦力の強化が必要だ。
魔法特化のステータスで武器はナイフ一本。
スキルは魔法が一つだけ。
低レベルのノービス。
こんなの、途中で力尽きる可能性が高い。
今の段階ならそこまでレベル差はないだろうしさっさと移動する手もあるが、しっかり準備をしてから出発する。
同じタイミングで始めた連中は同じくらい強くなるだろうが、どんどん先のマップに行くに違いない。
村への道筋はほぼ初心者向けマップしか通らないから、強くなった奴らには物足りない筈だ。
というわけで、まずはステータスとスキルにポイントを振ることにした。
ディルバインを倒した時にレベルが上がってた分を放置してたからな。
魔法型の俺にとってスキルの有無は死活問題だ。
有効に使わないといけない。
基本レベルは2、職業レベルは3上がっていた。
どんなスキルを取るか迷うところだ。
シュシュとルインは買い物に出かけた。
村まで行くのに必要なものを揃えてもらう為の、お使いだ。
お金は俺が最初に持っていた所持金、1000cを預けてある。
それで、回復アイテムと杖をお願いした。
正直不安だが、今は時間が惜しい。
大丈夫、大丈夫だ。
正直不安だが、きっと、多分、ちゃんとしたものを買って来てくれる筈だ。
いっそMatkさえ増えればなんでもいい。
初心者用ナイフよりはマシだからな。
ともかく、そういうわけで俺は一人、シュシュの部屋でスキルの取得が出来る。
うーん、悩ましいが、二人には近くで買い物を済ませるように言ってある。
帰ってくる前に決めてしまわないといけない。
うーん、悩ましい。
名前:ゼノガルド
種族:人
Lv:4(2↑)
Str:1
Vit:1
Agi:1
Dex:25(5↑)
Int:46(5↑)
Luc:1
職業:ノービス
職業Lv:6(3↑)
スキル
魔法の心構え Lv1
リラックス Lv1(New)
魔法適性 Lv1(New)
属性適性・水 Lv1(New)
魔力修練 Lv1(New)
雷撃散弾 Lv1(New)
魔法一筋 Lv1(New)
悩んだ末に、こうなった。
ステータスは相変わらずの二極振り。
スキルの方は、職業スキルで魔法系のサポートスキルを取得。
≪リラックス≫はSPの自然回復効率アップ。
≪魔法適性≫は消費SP軽減で、≪魔法修練≫は詠唱速度アップ。
どれも効果は微々たるものだけど、無いよりマシだ。
汎用スキルもいくつかあったけど、無視した。
魔法さえあればいい。
パーソナルスキルの方は、もう一つユニークスキルがあったからそれを取得した。
そう、戦闘中に咄嗟に取った≪雷撃散弾≫、これもユニークスキルだ。
というか、これは俺が考えたオリジナルの技だ。
丁度俺が中学生くらいの、あの時に考えた、うっ、頭が。
どうしてそんなものが、魔法スキルとしてあったんだ。
それは分からないが、助かったのは間違いない。
ノービスの魔法スキルでろくなものが無かったから、しばらくは主戦力だしな。
がんがん使っていこう。
昔の記憶?
そんなの知らないね。
新しく取得したのは≪魔法一筋≫。
効果は、パーソナルスキルでの魔法スキルの発生確率が上昇する、とある。
こういう、成長に影響するパッシブスキルは早い段階で取っておく方が効率が良い。
俺にはうってつけのスキルだな。
でも、一筋っていうほどこのゲーム長くやってないよな。
ゲーム内で一時間も経ってないぞ。
……まさか、俺の記憶を読み取ったのか?
ははは、まさか、ね。
うわぁ、なんつう変態技術だ。
βNPCなんて作れるくらいだし、普通に出来そうだ。
正直、アイコンや見た目が一緒だったらNPCだって気付ける自信が無い。
それぐらい、人間そのものの反応だからな。
ルインもシュシュも、NPCとはとても思えないクオリティだ。
先行販売分に当選して良かった!
もっと楽しんでやるぞ!
……ああ、スキル振りだった。
基本レベル分のスキルポイントは1余ってるが、あえて残しておく。
≪魔法一筋≫の効果で良い魔法スキルが出るかもしれないからな。
さて、ポイント振りは終わったし、そろそろ帰って来てもいい頃なんだが。
「ただいま!」
「帰ったわよー」
「おかえり」
なんて言ってたら、丁度帰って来た。
二人とも手ぶらに見えるが、多分シュシュの相棒の中かストレージに仕舞ってあるんだろう。
「良さそうな杖はあった?」
「うん、あったよー。はい、ゼノさんの杖!」
「お、ありがとう」
シュシュが1mくらいの杖を虚空から取り出して、俺に手渡した。
木を削って作ったような、よくある感じのデザインだな。
データを確認してみる。
うん、そこまで強くはないが、あのお金で買える範囲だしこんなもんだろう、多分。
Matkが10も付いてるだけ、あのナイフより上出来だ。
こっちの方が、俺の手にもしっくり来るしな。
「ふふふんふ~ん」
「どうしたシュシュ、やけにご機嫌だな」
杖の握り心地を確かめていると、シュシュの鼻歌が気になった。
すごい楽しそうだ。
「ふっふっふ、見て見てゼノさん!」
「これは、パン?」
「そう、パンだよ!」
シュシュが俺の顔の前に突き出したのは、パンだ。
ふっくら焼き上がっていて、熱気を感じる。
この香りはまさか、焼き立て?
「見つけて、お釣りが余ってたから、つい買っちゃって……でも匂いが嗅げて満足したから、返すね!」
「ええ……」
段々とトーンダウンしていき、しまいには涙目になり始めたシュシュを見て、困惑しか出ない。
しかも最後だけ頑張って元気を出したのが、余計に切ない。
「ルイン?」
「シュシュも頑張ってたのよ。だけど、一日の食事がガッチガチに固いパン一個と雑草のシュシュには抗えなかったみたいね……。買った直後に事情を聞いてしまったら、あたしには何も言えなかったわ」
ルインも俺と同じような気持らしい。
だろうな。
人間みたいな思考をしてるっぽいルインなら、そうだろうと思った。
「シュシュ、これは返さなくても大丈夫だ」
「でも」
「おつかいに行ってきてくれたんだから、これはお礼にシュシュにあげるよ。お疲れ様」
「えっ、ほんと? いいの!?」
「いいよ」
「――やったー! ゼノさんありがとう!」
「グスッ、良かったわねぇ」
良かった良かった。
ルイン、お前コインなのに泣けるのか?
「ん?」
コインの生態について考えていると、目の前に白いものが差し出された。
これは、半分に割ったパンだ。
「はい、半分こ!」
「え、いいの? お腹空いてるんじゃ」
「一緒に食べた方が美味しいから! それに、助けてくれたお礼もまだ出来てないし……」
俺と分けようとしてくれてるのか。
お腹が空いてる筈なのに、優しい子だ。
変に遠慮しても困らせるだけだろうな。
お金を稼げたら、また何か買ってあげよう。
「そっか、それじゃあ有難く」
「いただきます!」
「いただきます」
「あ、お、おいしい……! 美味しいよゼノさん!」
「そうだな」
シュシュはパンに勢いよく齧りついて、幸せそうだ。
まるでリスか何かのように小刻みに食べている。
すーっと、ルインが俺の前に飛んできた。
「あたしのは?」
「食べられるのか?」
「試してみないと分からないじゃない」
「別に構わないけど」
パンをルインに差し出してみる。
ルインが虫のようにパンにとまった。
そしてそのまま沈んでいく。
「うおい、めり込んでるめり込んでる」
「もごごごごご」
「パンでくぐもって何言ってるか分からないぞ」
「ぷはぁっ! 美味しいわ!」
柔らかいパンに埋まっていたルインがゆっくりと飛び出してきた。
こいつ、コインの癖にパン食べやがった!
「もっともらうわね!」
「あっ、こら、パンの中に入るな!」
しばらくパン争奪戦を繰り広げた後、我に返ってレベル上げの支度を開始した。




