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本日三回目の更新です!
再びゲームにログインすると、相変わらずの不思議空間だった。
目の前に光が集まって、弾けた。
そこから一枚のコインが落ちてくる。
「おっと」
「うん? ああ、戻って来たのね。おかえり」
「ただいま」
どうやら俺がログアウトしている間は、ルインも同じように隔離されているようだ。
ぼーっとしてたら落としそうで怖いな。
「あー、ドキドキしてきた。早く十二時にならないかな」
「そんなに楽しみなの?」
「そりゃそうだって。何せ、十年近く待ったんだからな!」
「ふーん……ま、私の為に頑張りなさい」
ルインはどこか冷めたような態度だ。
ほんと、NPCにしては感情が豊かな奴だ。
正直、人と話しているのと何の違いも感じない。
クオリティ高すぎるだろ。
中に人が入ってるって言われた方が、まだ納得できる。
そのくらい、会話が自然だ。
ルインと駄弁っていると、イノウエがやって来た。
美人だけど、無表情すぎて怖い。
ファンタジー風受付嬢っぽい衣装は色気があって良いんだけどな。
中身をルインにしたら好みに近づきそうだ。
『ゼノガルド様、間もなくサービス開始の時刻となります。準備はよろしいですか?』
「ん? あ、おう」
いつの間にかそんな時間になったらしい。
なんかすごい見られてる気がするが、きっと気のせいだろう。
『それではゲーム開始と同時に、四つの国に所属する街や村の中から、ランダムで選択して周囲のマップに転送致します』
「分かった」
頷いたところで、鐘の音が響いた。
多分、十二時を知らせる合図だ。
『それでは、時刻になりましたので転送を開始します』
「頼む」
「さあ、行くわよゼノ! 世界は私達のものよ!」
「急にやる気出してきたな……。ま、そのくらいのつもりでやった方が楽しいか」
『ようこそ、CPOの世界へ』
イノウエの言葉と共に、空間が眩く輝き始める。
まぶしっ。
『グッドラック!』
視界が掻き消えていく一瞬、イノウエの口元が歪んだように見えた、気がした。
眩しさに閉じていた瞼を、ゆっくりと開ける。
そこは、広大な草原だった。
柔らかな風に、鼻をくすぐる土と緑の香り。
足元からは、柔らかい土と草のわしゃわしゃした感触が伝わってくる。
遠くを見れば、何か白いものや、ピンク色のものが跳ねている。
多分あれはモンスターだな。
俺と同じような格好をしたプレイヤーも、ちらほらと姿を現している。
「すごい……」
これがCPO。
伝説の、VRゲーム。
俺は、待ち望んでいた場所にやって来たんだ。
そう思うと、感動で胸が一杯だ。
とりあえず深呼吸しておこう。
VRの空気を目一杯吸収するんだ。
「すー、はー、すー、はー」
「あんた、何やってんの?」
「CPOの空気を取り入れてるんだよ」
「は? わけわかんない」
俺の掌に乗せられたルインが呆れたように呟く。
いいんだ、分からなくて。
俺にもよく分かってないからな。
感動し過ぎてテンションがおかしくなってるのは、なんとなく分かる。
ともあれ、いつまでもこうしてる訳にもいかない。
目の前の仮想ウインドウを見る。
『チュートリアルを開始しますか?』
『はい』『いいえ』
どうせなら、さっきの謎空間で済ませてしまえば良かったのに。
とは思うものの、何か都合があるんだろう。
さくっと済ませて、冒険を始めてしまおう。
「よし、ルイン、チュートリアルだ!」
「とばしたりしないの?」
「ばっかお前、確かにスタートダッシュは大事だけど、チュートリアルはもっと大事なんだぞ」
「そうなの?」
ルインは、不思議そうに聞いてきた。
ゲームのシステムを多少は知ってたように思ったが、やっぱりそんなに詳しくないようだ。
「チュートリアルっていうのは、それを聞くだけで初心者がゲームを楽しくプレイ出来るようになってる、すごいものなんだぞ」
「ふうん?」
「ま、俺も飛ばすことはあるけどな。けどネトゲだとチュートリアルをこなすとボーナスがもらえたり、チュートリアルでしか見られないイベントとかもあったりするからな。ゲームを楽しむなら、しっかり受けておいた方が良い」
「楽しむ、か。なるほどね」
熱弁の甲斐あってか、ルインは納得したように呟いた。
俺だってチュートリアルなんて放り投げて、今すぐにでも駆け出したい気分だ。
だけど、このゲームを隅から隅まで楽しむ為には、それは出来ない。
別に、スタートダッシュをかましてトッププレイヤー争いをするつもりもないしな。
のんびり楽しめたら、それでいい。
「それじゃあ早速、チュートリアるか」
「そんな言葉聞いたことないわ……」
「今作ったんだよ」
はいの方を指で押す。
微かな感触が返って来て、またしても視界が切り替わっていく。
ああ、この場でやるんじゃなくてどこか別マップに転送される系か。
どんなチュートリアルなのか、楽しみだ。
ゲームが好きなだけで基本苦手な俺でも分かりやすいのを期待するぞ。




