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270 パーティーとサプライズ


「ふぅ、とりあえずこんなところかな」


 出来上がったアクセサリーを仕舞う。

 葵へのプレゼント用を作ってみたけど、それなりのものが出来た。

 練習で作ったやつは武器と一緒に売ってしまおう。


 時計を見ると、もう17時を過ぎていた。

 いつの間にか夢中になっていたようだ。

 装備を作るのは案外楽しい。


 これは上位のスキルをとってしまってもいいな。

 外出するかどうかは様子を見ながらだし、暇つぶしにも丁度いい。


 作った武器をどうするか、だけが問題だな。

 今日の分はタケダとゴロウに仲介してもらって市場に流す。

 手数料でいくらか払うつもりだけど、引き受けてもらえたらいいな。


 商売は上手く出来る気がしない。

 相場とか値段とか、難しい。

 モグラに呆れられていたゴロウよりも駄目な商売をする未来が見える。

 ここはお金を払ってでも委託してしまうのが正解だろう。


 売れるかどうかをじっと待つのも耐えられるか微妙だし。

 露店を出してる人達はよく待てるよね。

 ドキドキし過ぎて俺には無理だと思う。

 そうやって待つ時間も楽しいのかもしれないが、そっちに手を出すつもりはない。

 多分。


 並べていた武器と材料を片づけていく。

 床いっぱいに転がっているのは、出来の良いのをつい眺めたくなってしまったせいだ。

 それを見ながら武器を作って、また並べてニヤニヤする。


 次はどの素材を使おうかと、並べた素材を見てニヤニヤする。

 武器を作りながら、完成させた武器を眺めてはまたニヤニヤする。

 ニヤニヤしたまま完成した武器を、追加で並べて更にニヤニヤする。


 さっきまでの俺はこんな感じだった。

 自分の部屋でやってて良かった。

 リビングでやってたら、散らかしてしまってみんなの邪魔になってたかもしれない。


 床に置いていたものを全てしまうと、すっかり元通り綺麗になった。

 油断するとすぐに汚してしまいそうだ。

 使ったものはすぐに片づけて、この状態を維持しないと。

 自由に使える個室を持つなんて凄く久しぶりだから、大切に使っていきたい。


 下へ降りると、タマと葵はおろし金を挟むようにくっついて寝てしまっていた。

 二人とも、今日は朝早かったからな。

 気持ちよさそうだ。


「お前は起きてるんだな」

「キュルル」

「もう少ししたら起こすから、それまで大人しくしてやっててくれるか?」

「キュル」


 二人の様子を眺めてたら、おろし金のつぶらな瞳と目が合った。

 話しかけると静かな返事をくれた。 

 俺のお願いも快く引き受けてくれた。

 いつも乗せてもらってるし、おろし金にも何かお礼を考えておかないとな。


「あれ、もう下りて来られたんですね」

「ああうん、丁度キリが良かったから。何か手伝おうか?」

「それじゃあテーブルを出してもらっても良いですか?」

「了解」


 我が家である≪モジャの家≫はかなりの広さを持つ。

 リビングなんて、三十人くらいは余裕で寛げるくらいはある。

 ミゼルの好意で隣の家を吸収した結果、こうなった。


 ただ、普段は俺達家族しかいないから持て余している。

 テーブルも一つあれば充分だから、ミゼルが使っていたものをそのまま使わせてもらっていた。


 今日はお客さんがそれなりに来るから、テーブルの追加をお願いされた。

 家の専用ストレージの画面を開いて、テーブルをタップ。

 リビングの空いたスペースに設置した。


「ありがとうございます」

「他には何かある?」

「それじゃあ食器を用意してもらっていいですか?」

「分かった」


 料理はミゼルとミルキーに任せて、俺はセッティングを手伝った。

 そうこうしてる内に、玄関のドアがノックされた。


「はーい」

「やっほー、来たよ。さっきはありがとね」

「よお、さっきぶりだな。お邪魔しても良いか?」

「どうぞどうぞ」


 玄関を開けると、そこにはモグラとタケダが立っていた。

 二人を奥へと案内する。

 ゴロウは少し遅れるとかで、別で来るらしい。


 まだ17時半くらいだからな。

 多分モグラ主導で待ち合わせて一緒に来たんだろう。

 この人は軽そうな見た目の割に、待ち合わせの時間よりもかなり早めに行動している節がある。


 モグラとタケダを椅子に座らせた後は、タマと葵を起こした。

 二人とも、起きた途端にモグラやタケダに突撃した。

 思った通り、構ってもらえると嬉しいようだ。


 その後も、お客さんは続いた。

 昭二とルインに、ゴロウも時間ギリギリにやってきた。


 すっかりパーティーの準備は出来た。

 が、純白猫はまだ来ない。

 丁度今18時になったところだし、少し遅れるのかもしれない。

 メッセージを送っておいてとりあえず始めるか。


 宴会の作法は以前モグラに教えてもらった。

 お茶の入ったグラスを持つ。

 皆が話を中断して、俺の方を向いてくれた。


「お待たせしました。今日は、葵ちゃんの成長を祝う会です。飲んで食べて、存分に楽しんで行ってください。挨拶は手短にしたいと思いますので、皆様乾杯の用意を」

「ちょっと待ったぁ!」


 さくっと乾杯に移ろうとした俺を、止める声が上がった。

 突然なんだ?

 割り込んだのは、モグラだった。


「どうしたんですか?」

「実は今日は、もう一つ目的があって集まったんだよね」

「え?」


 今日のこの集まりは、葵の送別会だった筈だ。

 俺がミルキーと話して開催を決めて、皆を呼んだ。

 他の目的って、そんなのあったっけ?


「……サービス開始のお祝いですか?」

「ブッブー」


 パッと思いつくのはそれしか無かった。

 だけど違ったようだ。

 じゃあなんだろう。

 皆意味深な笑顔を浮かべているが、教えてくれる気はないようだ。


 でも良く見ると、ミルキーとミゼルも困惑している。


「分からないようだから教えてあげようかな」

「お願いします」

「今日はね、ナガマサさん達の婚約記念パーティーとの同時開催だよ!」

「「「おめでとー!」」」


 パパパパーン!!

 突然、乾いた音が連続で鳴り響いた。

 何何何!?


 ミルキーとミゼル以外の全員がクラッカーのようなものを鳴らしたようだ。

 皆が持つ三角錐の筒のようなものの先端から、煙が微かに上がっている。


 滅茶苦茶びっくりした。

 あー、びっくりした。

 咄嗟に守属性魔法をまき散らすくらいにはびっくりした。


 皆は笑顔で、俺達三人を見ている。

 少し落ち着こう。

 深呼吸、深呼吸。

 よし、落ち着いた。


「これは一体、どうしたんですか?」

「びっくりした? いやー、ごめんごめん、そんなに睨まないでよ。実はね」


 話を聞いてみると、簡単な事だった。

 昨日のことを葵がモグラに報告。

 そこからモグラの企みが始まって、皆でこうしてお祝いしてくれることになったようだ。

 

「まだサプライズゲストがいるよ」

「え?」

「どうぞー!」


 モグラの声と同時に、玄関のドアが大きく開かれた。

 そこいたのは――巨大なケーキ?


「私だ!」

「僕もいますよ!」

「私もいます」


 ケーキは台車のようなものに乗せられていた。

 その後ろから颯爽と現れたのは、パシオン、そしてシエル。更にアルシエ。

 謎の組み合わせ過ぎる。


「我が友の結婚を祝いに来てやったのだ、感謝するが良い」

「僕も、ナガマサさんが婚約したと聞いて、居てもたってもいられなくなりまして!」

「私もお祝いがしたくてついて来ちゃいました」


 ということらしい。

 ケーキはシエルとアルシエからだそうだ。


「わざわざここまで来てくださったんですか、ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「ナガマサ様は、素敵なご友人がおいでですわね。私からもお礼を言わせてください」

「そんな、僕はナガマサさんのお陰で彼女と一緒になれたんです。一生感謝しても足りないくらいなんですからこれくらい!」


 この巨大なケーキは、昭二の家を借りてアルシエとコック達の手で作ったそうだ。

 村の中を運ぶのはゴロウがストレージに入れて、家の前に設置したらしい。

 だから遅かったのか。

 普通に遅刻しかけたのかと思ってた。


「まだ、私からのプレゼントが残っているぞ?」


 シエルとアルシエにお礼を言っていると、パシオンが割り込んできた。

 物理的にも、俺とシエルの間にスライドして来る。


「私からは黄金のパシオン像を贈ろう! 私だと思って毎日拝み、磨くが良い!

「ありがとうございます、いりません」



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