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257 強襲と戦利品


「タマ」

「だいじょーぶ!」

「よし、タイミングは任せる」

「あいあい!」


 ≪闇のオーロラ≫とやらに触ってみる。

 硬くなさそうなのに、しっかり硬い。

 不思議な感じだ。

 流石ファンタジー。


「無駄よ無駄無駄。いくら貴方達が凄くても、闇のオーロラは越えられないわ」

「やっぱり無理か」

「ふふふふふ、無様な姿を眺めながら、私は更なる高みへ上るわ!」


 元ルインがコインを握りしめた。

 封印が解けたのか、ヤバそうなエフェクトが溢れ出す。

 そしてそのコインを、そのまま呑み込んだ。


 元ルインの身体から闇が溢れ、弾けた。

 姿が悪魔っぽい姿から、かなり変わっている。

 むしろ人間の方が近い。


 ルインと名乗っていた時の姿で、ドレスを黒にして羽とか角とか尻尾を付けた感じだ。

 そのパーツも悪魔っぽくはない。

 ドラゴンか何かに見える。

 コインの影響なんだろうか。


「これが神滅の力……。それも、あの忌々しい神竜と並ぶと言われたほどの!」

「くっ、なんという威圧感だ。ナガマサ、あれに勝てるか?」

「問題ないと思いますよ」

「だいじょーぶ!」


 パシオンの問いかけに、素直に答える。

 タマも自信たっぷり元気いっぱいだ。

 ルインが興奮して独り言を呟いている間に、俺は全員に≪守属性魔法≫を掛け終わっている。


 これで物理攻撃も魔法攻撃も状態異常も、全て防ぐことが出来る。

 オーロラの向こうから攻撃してくるくらいなら何の問題もない。


「ああ、力が溢れる! ……痛めつけてやりたいところだけど、あいつがやられるのを見てたのよね。今日のところは目的も果たしたし、素直に引くことにするわ」


 ルインは、俺達と戦う気はないようだ。

 くるりと背中を向けて、テラスへと向かった。

 テラスの奥の柵の前で、またこっちを向いた。

 何か言い残したことがあるようだ。


「けれど、覚えていなさい。力を蓄えたら、この国を滅ぼす為に私は帰ってくる。その時まで、せいぜい足掻くことね!」


 ルインの背中の翼が大きく広がる。

 こっちを向いたまま、ルインは後ろに向かって大きく跳んだ。

 そのまま空を飛んで逃げるつもりのようだ。

 勝ち誇った顔をしている。


「キュルア!」

「ごぶふっ!?」


 そのまま、上空から急速に落下してきたおろし金の口に咥えられて、視界から消えた。

 まるでパニック映画みたいな見事な急展開だった。

 みんな呆然として見ている。

 あ、オーロラが消えた。


「ナガマサ! 今のはまさか、おろし金か!?」

「そうですよ。万が一に備えて、上空で待機してもらってました」

「えっへん!」


 パシオンは、ルインを口でキャッチして窓の外を一瞬通ったものの正体に気付いたようだ。

 

 パシオンに事情を聞かされた後、俺はあることを思い出した。

 家に、タマの分身を置いてきたことに。

 二人に分かれたタマは一心同体。

 常にお互いがリンクしている状態だ。


 だからタマにお願いして、おろし金と一緒に城の上空に待機してもらっていた。

 しかも、便利なスキルが使えるということで葵にも同行してもらった。

 お陰であの見事な奇襲が成功した。


 いやー、一瞬見えたルインの驚いた顔が最高だった。

 俺の家族が大事に思ってる物を狙うような奴は、容赦しないからな。


「やったモジャー!」

「キュルル!」

「ドッキリ大成功……!」


 テラスからタマBと、葵、ドラゴンモードのおろし金が入ってきた。

 おろし金にはここは手狭だったのか、いつもより少し小さくなっている。

 口にはなんと、ルインを咥えたままだ。

 気絶しているようでぐったりしている。


「おろし金様が≪魔の者≫を捕えたぞ!」

「流石守護竜様だ!」

「守護竜様万歳!」

「おろし金万歳!!」

「「ふっふーん!」」


 騎士や兵士達がおろし金を称えだした。

 うんうん、おろし金は立派だからな。

 タマの自慢のペットだ。

 今もいつもより二倍誇らしげにしている。


 そんなこんながあって、パシオンの婚約者はミリル王女に決定した。

 候補の三人中二人が脱落した訳だから、当然と言えば当然だ。

 だけど意外な事に、パシオンもミリルのことを気に入ったらしい。

 意外な事に。

 いやほんと、意外な事に。


 なんでも、パシオンが倒れた時や、≪魔の者≫が正体を現した時の態度が気に入ったんだとか。

 パニックにもならず、自分の出来る事をしようとしていたのが高評価とも言っていた。

 確かにそんな感じだった。

 何故かパシオンを庇うような動きをしてたしな。


 テンションはやたら高いけど、良い人なんだろう。

 なるほど、パシオンとは相性が良さそうだ。








 俺達は戦利品をもらって、我が家へ帰宅した。


 ぐったりしている。

 とりあえず縄を解いておくか。


 さて、どう話せばいいのかな。


「ただいまー」

「おかえりなさい」

「おかえりなさいませ」


 裏口から家に入ると、ミルキーとミゼルが出迎えてくれた。

 他の皆も挨拶を交わして、思い思いの席に着く。


「どうでしたか? 無事に依頼は達成出来ました?」

「お兄様に結婚相手なんて、きちんと決まったんでしょうか?」


 二人とも、ベクトルは違うが今回の依頼に興味津々だ。

 仕方ない、ありのまま話そう。


「実は色々あってさ」


 城であったことを二人に説明した。

 おやつにフルーツを齧りながら、二人とも楽しそうに聞いてくれた。


「そんなことがあったんですか。お疲れ様でした」

「≪魔の者≫が再び現れたことも驚きですが、お兄様が他の女の人を気に入るだなんて、まだ人として真っ当な部分が残っていたのですね……!」


 ミゼルなんかもう別のところに感動してしまっている。

 中々に酷い。

 気持ちは分かるけど。


 タマBとおろし金の姿がない。

 まだ裏庭で遊んでいるようだ。

 説明の為にも入って来てもらうか。


「タマ、戦利品をテーブルの上に並べてもらっていいか?」

「あいあいさー!」

「へいお待ち!」


 タマAが返事をすると、タマBが勢いよく現れた。

 そしてパシオンからもらった戦利品を並べていく。


 200Kc、装備品、コイン、縄でぐるぐる巻きにして猿轡さるぐつわを噛まされたルイン。


「んー! んんー!」

「タマ、これは戦利品じゃないって何度も言っただろう。その辺りに置いてきなさい」

「やだー!」

「タマが飼うー!」


 ルインは、殺さなかった。

 何故か人の姿になったルインは見た目通りの、十五歳の女の子程度の能力しか持っていなかった。

 処理を面倒臭がったパシオンは、何故か分離したコイン諸共俺に押し付けて来た。


 流石に断ったけど、タマが何故か乗り気に。

 というわけでここにいる。

 絵面が完全に犯罪者じゃない? 大丈夫?



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