245 盾とゴーレム
今日は純白猫へのお礼の素材集めと、ついでに≪太古結晶暗黒盾ゴーレム≫の取り回しの練習が目的だ。
だからペースは緩い。
前回が全力疾走だったから、余計にそう感じる。
瞬間移動を繰り返しながら、ノンストップ一時間だったからな。
あの時は流石に疲れた。
タマはすごく楽しそうだった。
が、俺にはあの高速戦闘は辛い。
何がって、全力で突き進んで行くタマに合わせるのが、だ。
タマは全速力で移動しつつ、敵を粉砕していく。
そんなタマに付いて行きながらタマが敢えて残した敵を砕き、アイテムを拾って追いかける。
≪強欲≫のスキルを念じるだけで発動すれば、半径20mの範囲のドロップアイテムは全て拾える。
そうでなければとても追いつけない。
持ってて良かった≪強欲≫。
ミルキーの≪思念詠唱≫も便利だ。
本来必要な、スキル名の発声がいらなくなる。
スキルを連打するのに凄く便利だし、前回みたいな超高速アイテム拾いにも有用だ。
一々叫んでたら舌を噛んでしまう。
今日は普通に歩いて、出会った敵を俺が盾で粉砕する。
タマは退屈がっていたから、別行動を許可した。
このエリアで脅威になるモンスターはいないからな。
そもそも、タマの脅威になるモンスターがこのゲーム内に存在してるか謎だ。
さて、しばらく試してみたが、この盾はやっぱり使い勝手がいい。
受け取った直後くらいしかろくに使ってなかったのが勿体ない。
攻撃手段が豊富だったり、攻撃を防ぐ場面が少なかったのもあるが、勿体ない。
まず普通に殴ってもよし。
相手は死ぬ。
次は投げても良し。
相手は死ぬ。
≪シールドブーメラン≫を使うと瞬間的に自動で帰って来るから楽。
スキルの弾速がかなりのもので、すごい勢いで飛んで帰ってくる。
無属性攻撃だから超連打できる。
スキルを使わなくてもゴーレムなので、帰ってこいと言うと自動で帰っては来る。
射出しても良し。
盾自体が≪自律行動≫≪遠隔操作≫≪浮遊≫≪飛翔≫のスキルを所持しているから思考で操作出来る。
だから自由自在に操れる。
そのままぶつければ、空飛ぶ鈍器だ。
≪五体解放≫に空中を蹴る能力が無ければ縦横無尽に飛ばして、足場にして駆け回るかっこいい戦法が使えたかもしれない。
飛行速度は≪Int≫と≪Dex≫に依存するとかで、俺のステータスだと滅茶苦茶速い。
瞬間移動が無ければ俺の全力疾走と同じくらいの速さで飛ぶことが判明した。
こんなのぶつけられたら間違いなく痛い。
≪ダイヤモンドナイト≫だって木端微塵だ。
さて、次は自律行動も試してみるか。
どのくらいの命令が聞けるか、という実験だ。
「俺を守れ」
盾ゴーレムが空中に浮かぶ。
俺の周囲をふよふよと漂っている。
歩くと、邪魔にならないようについてくる。
これで敵に遭遇してみるか。
少し探すと、≪エメラルドナイト≫と≪ブラックダイヤモンドナイト≫がいた。
二体ともこちらに気付いて向かってくる。
よし、盾の性能を試すチャンスだ。
移動速度は≪エメラルドナイト≫の方が早い。
走ってきた勢いそのままに、右手の短剣で切り付けてくる。
ギィン!
盾が俺を庇うように攻撃を受けた。
甲高い音が響くが、頼もしいくらいにびくともしていない。
ブラックダイヤが向かってきながら、攻撃魔法を連続で放ってくる。
微妙に散らされたそれらも、盾が受け止めた。
確かMdefの方が高かったし、なんともない。
流石、イカ産の素材で強化しただけはある。
何もせず、しばらく様子を見てみた。
近接攻撃も魔法攻撃も、盾は全て防いで見せた。
二体の前後からの連続攻撃ですら、完全ガードだ。
なんかものすごいアクロバティックな動きだった。
おお、防ぐだけじゃなく、押し返したり弾いたりも出来るのか。
高性能だ。
「攻撃しろ」
試しに命令してみると、盾の動きが変わった。
それまで俺を守るのが優先だったからか、一切攻撃はしていなかった。
それが、命令した途端に高速回転しながらエメラルドナイトの胴部に接触した。
大量のダメージを垂れ流したと思ったら、一瞬にしてエメラルドナイトは切断されてしまった。
えぐい。
盾はそのまま向こう側へ飛んでいく。
ブラックダイヤモンドの剣が俺の背中を通り抜けた。
どうやら≪Miss≫のようだ。
振り向くと同時に、弧を描くようにして高速で戻ってきた盾の先端が、ブラックダイヤモンドナイトの横腹に突き刺さった。
衝撃でブラックダイモンドナイトは爆散した。
強い。
それからしばらく、いくつもの命令をして試した。
≪あいつを狙え≫くらいまではいけた。
ただ、≪あいつに体当たりをしてから次はそいつ、一旦俺を守ってから突撃≫みたいなのは駄目だった。
動きが止まったりはしなかったが、従ってはくれなかった。
短い命令じゃないと難しいらしい。
新しい命令をすると、それまでの命令は破棄される。
攻撃しつつ防御等、系統の違う命令を二つ同時には行えない。
逆に、系統が同じなら二つで一つの命令として扱える。
これがポイントだ。
俺の頭と左手に持ったフルーツを守れという命令は受け付けた。
俺の頭と左手に持ったフルーツと、右手に持ったフルーツを守れという命令は受け付けなかった。
多分、二人までなら同時に守れるんじゃないだろうか。
二人の間の距離と相手の数にも寄るんだろうけどな。
それでも心強いことには変わりない。
この盾、もう一つ欲しいな。
ミルキーの職業が盾の名が付くものだったし、今の小盾じゃ心許ない気がしてきた。
ゴーレム結晶だったっけ。
あれをもう一個手に入れて、マッスル☆タケダに依頼するか。
俺の盾の強化のアイデアもあるしな。
よし、そうしよう。




