232 露店と本気狩り
大通りの露店を、端から端へざっと見た。
大通りというだけあって幅が広い。長い。
並んでいる露店の数も多いから、結構時間が掛かってしまった。
もう13時を回ってしまっている。
「お腹空いたモジャ」
「そうだな。俺もお腹空いたし、お昼ご飯にしよう」
今から帰るとミルキーに連絡しよう。
――あれ、メッセージが来てる。
ミルキーからだ。
葵と一緒に修行とハイキングを兼ねてお出かけするが、一緒にどうか、というのが一通。
お出かけするからお昼は各自で済ませようというのが一通。
そうか、二人でお出かけしてるのか。
俺もタマも行きたかったけど、メッセージに気付かなかったのが痛かった。
いい加減設定戻しておかないと。
ああでも、その前にミルキーに謝罪のメッセージを送っておかないと。
すぐにミルキーから、気にしなくても良いと返事があった。
女二人でお出掛けするのも楽しいそうだ。
それなら邪魔するのも悪いな。
タマも見た目は葵と同じくらいの女の子だ。
でも中身はもっと幼い感じがする。
成長するようなことはあるんだろうか。
「むむむー、お腹減ったー!」
「ああ、ごめんごめん。お昼ご飯食べに行こう」
「わーい!」
タマはタマだな。
良い子に育ってくれればそれでいい。
やって来たのは、以前俺が拠点にしていた宿。
日中は食堂、夜は酒場も営業している。
適当にタマが食べたいものを選ばせて、注文する。
ピークは過ぎたのか、客は疎らだ。
お陰で料理もすぐにやって来た。
「はいお待ち」
「いただきます」
「いっただっきまーす!」
やって来た料理を綺麗に平らげた。
おいしかった。
タマもお腹が膨れてご満悦だ。
席はガラガラだし、戦利品の確認でもするか。
露店を眺めてるだけでも楽しいが、やっぱり見てると欲しくなる。
自分のお小遣いの範囲で、いくつか購入した。
≪銀翼のブローチ≫。
文字通り、銀で出来た翼モチーフのブローチだ。
綺麗だし、ミルキーのローブに付けたら似合うんじゃないかと思って購入した。
見た目装備らしく、効果はほとんど無い。
≪灯りと暗闇のランタン≫
夜につけると明るくなるが、明るいところでつけると闇を発生させるランタン。
タマにねだられて購入。
使い道は特にない。
≪電撃棒≫
手に持って魔力を流すと手がパチッとする棒。
触れている人に電気が流れるわけじゃなく、魔力を込めた本人だけに来るらしい。
前にも見たプレイヤーが作った用途不明のもの。
新作が出てたからつい買ってしまった。
≪ニット帽(茶)≫
文字通りの茶色いニット帽。
見た目装備。
≪荒野のマント≫
程良いぼろぼろ加減がかっこいいマント。
こういうのにちょっと憧れてた。
四つ買ったから後でミルキーに自慢しつつ、皆で装備したい。
少しの魔法攻撃耐性がついている。
こんなところか。
もう少し買いたかったけど、荒野のマントが地味にいいお値段したから手持ちのお金が無くなった。
しばらく狩りに行ってないからそろそろ行かないとな。
お金が無いと困ってしまう。
そうだ、今日はもう予定が無いし、タマと二人で行くか。
ミルキーと葵は二人でお出掛けしてるし邪魔することもないだろう。
ミルキーは食事の用意とかしてたり、時々畑仕事までしてるのに俺は最近お金を稼いでいない。
そろそろがっつり稼がないと、家族として申し訳が立たない。
「タマ、狩りに行こう」
「やったー!」
タマが両手を上げて喜んでいる。
狩りが好きだからな。
行けてなかったのが申し訳ない。
行先は≪無明の城≫にするか。
葵の武器の材料に宝石が必要になる。
既に渡した分で足りるだろうとは言われているが、念の為集めておいて損はないだろう。
必要が無ければ売ればいいし。
あ、ついでにあの宝石も集めたい。
沢山落としてくれるといいな。
いや、沢山落とすまで狩り続ければいいんだ。
狩り尽くそう。
おろし金の背に乗って、まずは≪輝きの大空洞≫へ。
そこから隠しエリアである≪無明の城≫へと移動する。
クエストをクリアした際に少し崩壊したが、狩りをする分には問題ないらしい。
「タマ、とりあえず一時間全力で行くぞ!」
「おー!」
久しぶりの狩りだし、今日は思いっきり行こう。
このマップの構造や、出現するモンスターはしっかり把握出来ている。
脅威になりそうなものは何もない。
事故に気を遣わなくてもいいということだ。
とにかく効率重視でひたすら狩る。
タマと二人で≪五体解放≫の瞬間移動で城内を駆け回る。
モンスターは見かけた瞬間に粉砕。
ドロップアイテムは俺が≪強欲≫でまとめて拾う。
拾う動作をしなくていいし、範囲内のアイテムをまとめて拾えるのは便利過ぎる。
全力で走り回る事一時間。
結構なアイテムが集まった。
うーん、だけどもっといける気がする。
やっぱり久しぶりということもあって、上手くいかない部分もあった。
攻撃と移動、≪強欲≫のタイミングが特にだな。
だけど最後の十分くらいは調子が良かった。
せっかくだしこのままもう一時間行くか。
「タマ、まだ行けるか?」
「まだまだ行けるよ!」
流石タマだ。
いつでも元気一杯で頼もしい。
「よし、行こう!」
「おー!」
近くに沸いた≪ダイヤモンドナイト≫を粉砕して再び駆け出す。
もう一時間ノンストップ騎士狩りだ!
宝石寄越せ! あと心臓も寄越せ!




