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閑話

本編ではないので少し短いです。


「告知してたサービス開始日に間に合う目途が立ったから休めると思ったのに、なんで仕事が無くならないんすかね?」


「無くなるわけないだろうが。細かな調整に未実装部分の実装準備、新規コンテンツの制作、色々あるぞ」


「ぐへぇ、マジ鬼畜っす」


「気持ちは分からんでもないが、作業量が私の75%を下回ったらシバくぞ」


「マジ勘弁っす。……そういえば気になったんですけど、被験者って現実に知り合いとかいないんすか?」


「そういうしがらみがなるべく少ない連中を選んではいる。が、完全に無くすのは無理な話だ」


「ええっ!? それやばくないっすか?」


「何がだ?」


「だって、これから普通のゲームとして公開するのにもし被験者の知り合いがいたら……」


「そんなこと、対策済みに決まっているだろうが。それでもうちの職員か? お前は今まで何をしてたんだ?」


「ゲームの調整してました」


「私達の本分は研究だ、それを忘れるんじゃない」


「なら研究をさせて欲しいんですけど」


「何だって? もう一回言ってみてくれ」


「何でもないっす。なんでもないっすからその端子を置いてください。刺しても何も出力しませんって」


「いや、脳に直接繋いでやればタイピングの必要が無くなるかもしれないぞ」


「多分作業どころか生命活動すら出来なくなるんで勘弁して下さい!」


「仕方ないな。で、何だ、知り合いがいたらだったか?」


「はい」


「被験者達のキャラクターの顔は現実世界とは違うものになってるからばれやしないさ」


「顔を変えてるんですか。知らなかったっす。なるほど、元々そういう契約なんすね?」


「してないぞ」


「え?」


「契約書には一言もそんなことは書いていない」


「ええ……。それだと反発されたり……どうせ何も出来ないんでしたね」


「そうだな。しかし、データを収集するという本来の目的に影響があっても困る。だから、被験者達のゲーム開始時に生成された顔面を、生まれ持っての顔だと認識するように記憶を改ざんしてある」


「またサラッと鬼畜なことしてますね」


「我々はあくまでもナチュラルな感情の動きを求めている。顔を変えることがどんな影響に繋がるか分からない以上、仕方のないことだ」


「知り合いに会ってもばれないように顔を変えないといけないけど、被験者自身が顔が変わっていることを認識してるとまずいってことっすか」


「そうだ。なに、被験者達が気付くことは絶対にない。全ての役割を果たす脳をこちらの好きに弄れるんだからな。元来の顔を表す電気信号を、ゲーム内の顔を表す電気信号に変換するだけでいい」


「マジ鬼っすね」


「バレなければ何もしていないのと一緒だ。何も問題はない」



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