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222 瞬殺と予兆


「モジャマサ、起きて!」

「んぅ……」


 タマの声。

 そして俺の身体ががっしがっし揺さぶられる。

 俺を起こそうとしているようだ。

 もう朝か?


 目を微かに開けてみると、まだ暗い。

 明りの無い部屋は真っ暗だ。

 いつも起きる時間なら、薄らでも明るくなってる筈なのに。


 時間は――2時か。

 まだ起きるには早いな。

 二度寝しよう。


「早く起きるモジャー!」

「うわわわわわわ……!」


 時間を見て目が閉じようとしたところで、頭を盛大にワサワサされた。

 あまりの勢いで目が覚めた。

 一体どうしたっていうんだ。


「どうしたんだタマ……今日何かあったか?」

「タケダを見張ってたあいつが、仲間と一緒にタケダの後をつけてるよ!」

「マジか。よし、よく知らせてくれたな」

「タマはさいきょーだからね!」


 タマが、分身が見ている光景を教えてくれる。

 マッスル☆タケダは今日の商売を終えて、帰宅する途中のようだ。


 昨日ストーレの街へ行った時に、姿を隠してマッスル☆タケダの様子を見ている怪しい男を見つけた。

 問い詰めてみたものの、特に確証も無かったから放流した。

 ストーカーとかファンなら俺が手出しすることではないが、もしPKだったら、タケダが襲われてしまうかもしれない。


 だからタマの分身に見張ってもらっていた。

 それが今、こうして役に立った。

 監視してもらってて正解だったな。


「タケダさんが襲われた場合、助けられるか?」

「もちろん! タマにお任せすればだいじょーぶ!」


 タマは≪滅魔双竜法≫の効果で、二人になることが出来る。

 単純な分身というわけではなく、ステータスや思考を分割したそれは、タマ自身と言ってもおかしくはない。

 思考はリアルタイムで共有していて、二人のタマはそれぞれが考えて行動も出来る。

 簡単に言えば、文字通りタマが二人になるスキルだ。


 俺とミルキーも使うことは出来る筈だが、色々と怖いので封印している。

 他の≪滅魔竜法≫のスキルも、結局手は出していない。

 スキルは一杯あるし、使うことはないだろう。


 もう一人のタマ、タマBが見張ってるからタケダは安心だ。

 ストーキングしてる集団が何かしようとしても、タマBが瞬殺する。

 手加減はしっかりしてもらうから、死にはしない。


 しかし、俺もストーレに向かった方が良いんだろうか。

 仮にあいつがPKだったとしたら。


 謎の集団がタケダの前に現れた瞬間に、タマBによって全滅する。

 訳が分からな過ぎる。

 タマBの説明でしっかり納得してもらえるといいんだけど。


「あいつらやっぱりPKだったみたい。マッスルに攻撃しようとしてる!」

「やっぱりか。戦況は?」

「おわった!」


 あいつらは行動を開始したようだ。

 タマに様子を聞くと、既に鎮圧したらしい。

 思った通り一瞬だった。

 予想以上に一瞬だったけどな。


「よしよし、よくやったな。タケダさんはどうだ?」

「タマと一緒に笑ってる!」

「あの人も大概タフだよなぁ」


 PKの集団に襲われそうになったのに、困惑すらしてなさそうだ。

 タマが片づけたとはいえ、もっと動揺してもおかしくないだろうに。

 少なくとも俺ならびっくりする。


 念の為メッセージを送っておく。

 数分経たずに返事が来た。

 俺は、怪しい男を見つけて見張っていた旨を書いた。

 それに対して、助けてくれたことへの感謝が綴られていた。


 そうだ、ついでに≪魔導機械士≫用の装備を作成出来る職人を探してくれたことへのお礼も送っておこう。

 見つかった報告もしておかないと、まだ捜してくれているかもしれないし。


 連絡が遅くなったことも合わせて謝罪しておく。

 いくつかメッセージをやりとりして、お礼とお詫びを兼ねてタケダを筋肉の島(フルーツアイランド)へ連れて行く約束をした。


 先日渡した素材を、タケダも集めたいそうだ。

 ≪筋肉の欠片≫を使うと筋肉筋肉した武器になるみたいだからな。

 モンスターの見た目もタケダ好みだろうし、彼にとっては楽園みたいなものかもしれない。


 メッセージとタマAB間でのやりとりで、タケダとはしっかりと話が出来た。

 PK達は全部で12人。

 タケダやタマに被害は無し。

 全員タマBによって縛り上げられているそうだ。


 12人って、多くないんだろうか?

 モグラ達が討伐しに行ってるたまり場とやらに全員がいるわけではないだろうけど、ちょっと気になる。

 このことはモグラにも連絡しておこう。


 特に被害も無いので、説明しに行くのは止めた。

 タマBも、スキルを解除すれば元の一人になるだけだから迎えに行く必要もないし。


「モジャ、誰かこっちに来るよ」

「え? こんな時間に?」

「うん。いっぱいいるー」


 今は深夜の2時を過ぎている。

 この村の住人達は老人が多い。

 寝る時間も早い。


 こんな時間に誰かが訪ねてきたことは、今まで無かった。

 うちで宴会をした時は全裸の男達が村を疾走した後帰って来たことはあるが、今日は誰も招いていない。


 タマの索敵は範囲が広く優秀だが、完璧に把握出来る訳ではない。

 人数と大きさ、なんとなくの強さくらいのもので、見た目等の情報は得られないらしい。


 可能性が高いのはパシオンか?

 妹のミゼルに何かがあったと聞けば、騎士団を従えてやって来ても何もおかしくはない。


 もしくは、昭二。

 村でもまとめ役に近い昭二は、何かあれば武器を持って立ち向かうことが出来る人だ。

 俺達がドラゴンモードのおろし金に乗ってこの村に来た時も、逃げずにいた。

 村で何かが起きて、村人を引き連れてやって来たのかもしれない。


 どちらにしても、何かトラブルがなければこんな時間に来ることはないだろう。

 確かめる必要があるな。

 


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