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214 駆け出し職人と契約

本日三回目の更新です。


 家に帰る前に露店を見て周る。

 目的は≪魔導機械≫だ。

 その中でも駆け出しの職人が作ったものを探す。

 駆け出しってことは品質やレア度が低いものを探せばいいのかな。


 売っているということは本人か、もしくは本人から買った商人の可能性が高い。

 なんとか職人を見つけ出す。

 葵用の装備を作ってもらいたいからな。


「よし、タマ、なるべくレア度や品質が低い≪魔導機械≫を探すぞ!」

「あいあい!」


 もう9時になりかかる頃だ。

 朝とはいえ、もう大通りには大量の露店がひしめいている。

 これだけ露店があると、今日すぐに見つかるとは思えない。

 そもそも売ってる保証もない。


 だけど、せっかくストーレにいるんだし探すのもいいだろう。

 可能性が少しでもあるなら、それはチャンスだ。

 見つからなくても、無駄になったりはしない。

 露店を見るだけでも楽しいからな。


「モジャ、見て見て! これ!」

「うん?」


 そこにあったのは、小さい王冠。

 タマが装備しているものとほぼ同じものだった。

 細かい装飾が少しだけ違う。


「おっ、お嬢ちゃん、見る目あるねぇ! それはあの≪牛丼食べたい≫の作品さ。ずぅっと前から依頼してて、やっとこさ一つウチに卸してくれたんだよ。……うん? お嬢ちゃんの頭の上のそれも≪牛丼食べたい≫の≪ミニクラウン≫じゃないのかい?」

「そうだよ!」

「そんなに好きなのか。どうする、買っていくかい?」


 何かと思ったら、やっぱり同じ職人の作品だった。

 店主はタマの頭の上のそれを見て怪訝な顔をしている。

 が、タマの笑顔を見て納得したようだ。

 

「買う!」

「えっ、買うのか?」

「頑張ってる葵のプレゼント! 葵とお揃いにする!」

「そうかいそうかい。それじゃあ60000cなんだが、払えるかい?」


 前より高くなってるな。

 プレミア価格っていう奴か?

 見た目はほとんど同じだからな。

 もしかしたら、見た目だけじゃなく装備としての性能が上がってるのかもしれない。


 支払いをしようとしたら、タマに動きで止められた。

 プレゼントだから自腹で払いたいようだ。


「はい!」

「はい丁度ね。毎度あり!」

「わーい、ありがとー!」


≪ミニクラウン≫

防具/帽子 レア度:B 品質:B+

Def:+5 Mdef:+5 

王冠を模して作られたおしゃれ用の帽子。

高貴な可愛さを演出出来る。

牛丼食べたいの銘が入っている。

Atk+5


 試しに見せてもらったら、若干性能が良くなっていた。

 値段に見合ってるかは分からないが、多分希少価値と両方かな。


 ちなみに、これはタマが自腹で買った。

 ウチは稼ぎはある程度分配してるからな。

 タマもそれなりにお金を持っている。


「おそろい! 葵とおそろい!」

「良かったな、タマ」

「うん!」


 いやー、いい買い物が出来た。

 良かった良かった。

 って、あれ?

 ……危ない、目的を見失う所だった。


「いいかタマ、≪魔導機械≫だ。頼むぞ」

「あいあいさー!」


 まだ全然探せていない。

 捜索を続行する。


「あっ、お兄さんいい笑顔あるよー。見て行かない?」

「おはようございます。今日も笑顔()()売ってるんですか?」

「いえいえ、今日は私特製の武器もありますよ。勿論笑顔も売ってます!」


 広げられた露店には、大量の≪笑顔の仮面≫が並んでいる。

 そしてその隙間に、何本かの短剣が置かれている。

 完全についでにしか見えない。


「そういえば挑戦するって言ってましたね。上手く出来ましたか?」

「うーん、まだ微妙ですね。ちょっと特殊な武器に手を出したせいか、最後の数本だけなんとか形になりました。そこにあるので、良かったら買って行きませんか?」

「手に取って見てもいいですか?」

「どうぞー」


 正直言うと武器は間に合っている。

 愛用の剣があるし、サブウエポンもついさっきマッスル☆タケダから筋肉を受け取ったところだ。

 ……言葉にすると字面がやばいな。


 でもせっかくだし見せてもらう。

 こういう武器やアイテムの見た目や性能を眺めるのも、楽しい。


 少し幅広の両刃の短剣だ。

 刃渡りはそんなに長くない。

 刀身には一本の黒い筋が入っている。

 詳しい性能はっと……うん?


「これ、誰が作ったんですか?」

「さっき説明したじゃないですかー。私ですよ」

「え、本当に?」

「確かに銘は入れてませんけど、嘘ついてどうするんですか」


 俺の手の中にある短剣は、種別が≪魔導機械≫だった。

 レア度はDで品質はE。

 攻撃力も物理も魔法も両方低いし、追加効果もほとんど無い。

 まさに駆け出しの作品としか思えない。

 

「それじゃあ純白猫さんが≪魔導機械≫の駆け出しの職人……?」

「まだまだ職人って呼べるレベルじゃありませんよ。見た目がカッコイイからついつい≪魔導機械≫に手を出しちゃいましたけど、茨の道ですねー」

「そうなのー?」

「材料費が馬鹿にならなくって。材料を揃える為にお金稼がないといけないので、それ買ってくれると嬉しいんですが」


 タマの疑問に答えた純白猫の視線がこっちへ向いた。

 いつものシンプルな笑顔の仮面だ。

 それくらい望むところだ。

 むしろ、それ以上だって構わない。


 とりあえず、友好的なのをアピールする為に俺も笑顔を顔面に貼り付ける。


「純白猫さん、≪魔導機械士≫用の装備を作ってくれるなら、材料をいくらでも揃えますし加工費も払いますよ」

「マジですか?」

「マジです。材料はこっちの提供で練習し放題、出来た装備は加工費上乗せで買い取ります」

「乗りましょう」

「契約成立ですね」


 がっしりと握手を交わす笑顔の仮面を装備したプレイヤー二人。

 怪しく笑うその姿は、傍目にはどう映るだろうか。

 けどそんなことは関係ない。

 葵へ贈るお祝いの目途が立ったというのは、それぐらい喜ばしい事だからな。

 


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