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外伝 CO-ROU・THE・CROSSOVER Ⅲ

クロスオーバー外伝続きです。

本日三回目の更新です。

コラボの詳細は後書きにて


 PKの名前は≪ハッタリくん≫。

 昔の有名な忍者キャラの名前をもじったものだと思われる。

 手にした武器は忍者刀。

 今日はつくづく忍者尽くしだ。

 

 俺とタマは瞬間移動が出来る。

 横腹に蹴りでも入れようと足に力を入れようとして、止めた。

 タマの前にも手を翳して制止する。

 俺の意思が伝わったようで、タマもその場に留まった。


「レナ!」

「えっ!?」


 声を掛けるまでもなくカイトは気付いていたようだ。

 レナを庇うように、PKの攻撃を苦無で弾いて見せた。

 俺が動きを止めたのも、カイトの視線を感じたからだ。

 任せておけと、そう言われた気がした。

 間違ってなくて良かった。


 以前はここで完全に譲って後で後悔した。

 一撃は任せたし、もういいだろう。


「ごふっ!?」

「はぁ!?」

「えっ? えっ!?」


 カイトに攻撃を防がれて一旦後ろに跳び退いたハッタリの横腹に、俺の右足が突き刺さる。

 ≪五体解放≫の効果で、目視出来る範囲に一歩を踏み出せる。

 見えてさえいれば距離を跳び越えて蹴りが入る便利なスキルだ。


「助けはいらなかったんだけどな」

「まぁまぁ、助けてくれたんだしさ」


 カイトはムッとした様子で近寄ってきた。

 申し訳ないとは思うけど、危ないと思ったら迷わず手を出すことにしてるんだ。

 許してほしい。 


「すみません。でも、相手はβNPCで何してくるか分からないから、つい」


 ハッタリは俺に蹴られた勢いで木に叩きつけられて気絶してしまった。

 残りHPは1。

 これは先日取得した≪ナガマサ流手加減術≫の効果だ。

 手加減しようとさえ思えば相手のHPを1から減らせなくなるスキルだ。

 これで、相手を殺す心配がない。


「まぁいいか。とどめは刺させてもらうぞ」

「すみません、それはさせられないんです」

「はぁ?」


 ハッタリの方へ向かおうとするカイトの前に出る。

 進路を塞がれたカイトは怪訝な顔をしている。

 NPCに邪魔されたらそうなっても仕方ないな。


「どうして邪魔するんだ?」

「それは――」


 そのPKは実は人間で、HPが0になると死ぬからです。

 君に殺人はさせたくない。

 言葉は出ない。

 視界に7の数字が表れて、6になる。そして消えていく。


「――カイトさんが、良い人だからですかね」

「いや、意味が分からないんだが」

「すみません」


 カイトは微妙な顔をしている。

 レナも突然の展開に困惑しているようだ。

 困ったな。

 さっさとPKにトドメを刺してしまおうか。

 

「おっと――あれは、俺の獲物だ」

「ちょっと、戦うなって言ったのは誰だったか忘れたの?」

「俺だけど、獲物を横取りしてくるなら話は別だろ」


 横取りしたかった訳じゃないけど、どうせ説明出来ない。

 それならもう心の中で謝って、強引に仕留めてしまおう。

 知らないとはいえ、相手がPKとはいえ、タマと遊んでくれたカイトに殺人をさせるのはしのびない。


「レナ、援護頼む!」

「ああもう、了解!」

「タマ、俺一人でやるから手は出さないように」

「あいあい!」

「余裕だな、これでもくらえ!」


 カイトが苦無を投げてきた。

 勢いがある。

 眉間に直撃コースだ。


「≪影分身≫!」


 左腕にマウントしていた盾で弾く。

 盾が視界を遮った一瞬でカイトの姿が消えた。

 と思えば、すぐ横に迫っていた。

 どうやら苦無に視線を誘導して、盾の動きに合わせて素早く移動したらしい。


 ちょっとびっくりした。

 だけど俺の方が速いし早い。

 右手の剣を叩きつける


「あれ?」


 切り裂いたと思ったカイトは、煙になって消えた。

 ああ、影分身ってそういうスキルか。

 忍者だっていうのを忘れたらいけないな。


 ――キィン。


 一旦距離を取りながら、煙の中から飛んで来た苦無を剣で弾く。


「≪韋駄天≫! ≪代わり身≫! ≪多重分身≫!」

「増えた! すごーい!」


 まだ残っていた煙を散らして飛び出したのは、十二人のカイトだった。

 俺を囲うように散開している。


 多いな。

 それを見たタマが大はしゃぎだ。

 確かにかっこいい。


「狐火!」

「「「「狐火!」」」」


 レナと大量のカイトから小さな炎が放たれる。

 一人一個で十三個。

 多分魔法ダメージだから、当たっても俺にダメージは無い、と思う。


 が、あえて正面から打ち破る。

 何故か。

 そっちの方がかっこいいからだ。


 殺し合いじゃないし、カイトは戦いの工夫がすごいし、なんか楽しくなってきた!


「≪氷結弾≫」


 俺の手からは青い弾が放たれる。

 弾速はかなりのものだ。

 火球を追って走り出していた十二人カイトと俺の間の地面に着弾。

 半径10m程の範囲に吹雪が吹き荒れる。


 十二人のカイトと火球は一瞬で吹雪に呑まれて姿を消した。

 レナはギリギリ範囲の外にいたから無事のようだ。

 

 ふと、吹雪の中に丸太が転がっているのに気付いた。

 視界が悪くて気付くのが遅れてしまったようだ。


「≪――≫!」

「おっと!」

「ちぃ!」


 何かスキルを発動している声を聴いた。

 咄嗟にしゃがむと、頭の上を何かが通り過ぎた音がした。

 多分苦無だ。

 危ない危ない。


「おらぁ!」

「おわっ」


 安心していると、背中を蹴られた。

 反応と切り替えしがすごく早い。

 ダメージは無いが、蹴られた勢いを利用して立ち上がってそのまま振り向いた。

 そこには、カイトが苦無を構えて立っていた。

 不敵な笑みを浮かべている。

 とても楽しそうな笑顔だ。


「あんた、かったいな。それに、スキルも動きもとんでもない。βNPCってのが皆こうなら、確かにあいつにも苦労したかもな」

「どうも」


 正直言って、俺は強い。

 でもそれはとんでもない効果のユニークスキルと、とんでもない数値のステータスのお陰でしかない。

 ≪ゲームの操作≫という点で見れば、普通のプレイヤーより劣るかもしれない。

 

「だが、それとこれとは話が別だ。ケリはつけさせてもらう」

「はい」


 だが、カイトは違う。

 スキルの使い方や戦い方が上手い。

 工夫して戦っている。

 倍率が高いスキルを放ってるだけの俺とは大違いだ。


 純粋に、すごいと思う。

 もっと戦ってみたくなる。


「モジャマサー!」

「……すみません、ちょっといいですか?」

「――どうぞ」


 タマの呼びかけが聞こえた。

 カイトに断りを入れると、すごく微妙な顔をしながらも承諾してくれた。

 なんかすみません。


「すみません、ありがとうございます。どうした、タマ?」

「すごく近くまで大きいの何かが来てるよ! 手出しはしてないよ! タマ偉い?」

「おお、偉い偉い。でも何か? 何かって……もしかして」

「カイト! すごい勢いで木がなぎ倒されてる音がするんだけど!」

「何ぃ!?」


 咄嗟に迎撃態勢を構えた俺達の前に、大量の≪突撃足軽クワガタ≫を率いた数匹の≪騎馬武者クワガタ≫が飛び出してきた。

 運の悪いことに、そこに転がっていたハッタリが踏まれて砕け散った。

 PKだし可哀そうとは思わない。


 しかも、まだ終わっていない。

 更に奥から、武者クワガタを一回り大きくしたようなモンスターが突進してきている。


 名前は≪大将軍クワガタ≫。

 手には大太刀、背中には二本の……幟? 旗を背負っている。

 甲冑のような甲殻は一際大きくゴツゴツとしていて、かなり固そうだ。


 もしかしなくても、夜限定モンスター。

 ≪将軍クワガタ≫のパワーアップ版に違いない。

 周囲に四体の忍者クワガタがシュバッと現れた。

 取り巻きまで変化してるのか。

 

「カイトさん、一時休戦で」

「仕方ないな、行くぞレナ!」

「ら、ラジャー!」

「タマ、二人を巻き込まないように範囲攻撃以外で思い切りやっていいぞ!」

「らじゃー!」



クロスオーバーを募集されているところへ私が飛びついて、実現させて頂きました。

作品は烏妣 揺先生の「CO-ROU・THE・CHRONICLE〜虎狼忍術史伝〜」です。

URLはこちら「https://book1.adouzi.eu.org/n5108fh/」


同じVRMMOジャンルですが、忍者をテーマにしたゲームと、ヒロインと主人公の掛け合いが魅力的な楽しい作品です。

恐らく先生の作品の魅力を最大限発揮することは私では出来ないと思いますので、少しでも興味が湧きましたら是非読んでみてください。

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