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202/407

193 影響と活性化

本日二回目の更新です。


 タマとはしゃぐゴロウを眺めつつ、モグラにメッセージを送る。

 合流したいという連絡だ。

 しかし、返事は期待出来ない。


 少し前にゴロウが送ったメッセージにも返事がないからだ。

 とりあえずは≪マッスル☆タケダ≫の露店へ向かう。

 ゴロウ曰く、そこで待ち合わせをする手筈になっていたんだそうだ。


 俺でも分かる待ち合わせ場所で良かった。

 モグラが普段立ち寄る場所なんて、タケダの露店かゴロウの露店しか知らない。

 仲が悪いとかでは、多分ない。

 狩りと宴会くらいしか一緒にしてないからだ。


 日常生活を過ごせば、モグラのことをもっと知れるだろう。

 特に魅力も必要性も感じないけど。


 路地裏を歩いていると何人かのプレイヤーに遭遇した。

 ただすれ違っただけだから確証は無いけど、ゴロウを狙ってたPKなんじゃないか?

 俺とタマを見て躊躇ったんだとすれば、嬉しい。

 以前程雑魚に見えないってことだからな。


 タケダがいつも店を構えている場所に到着した。

 ゴロウ程ではないが、やはり大通りからは外れている。

 しかし、モグラどころかタケダの姿もない。

 露店自体が存在しない。

 もしかして、タケダもPKに襲われている?


「あっ、モグラさんから返事来た」

「なんて書いてあるんですか?」

「今から戻るからゴロウちゃんはナガマサさんとそこで待ってて、だってさ」

「分かりました」


 二人はこの場所を離れていたようだ。

 ゴロウがしていた待ち合わせの時間はもう過ぎている。

 何があったのかしっかり聞いておかないと。


 あと、別行動してるミルキーにも連絡しとこう。

 ゴロウさん確保、これからモグラさんと合流するよ、っと。

 居場所も教えておこう。

 合流しない内に移動することになったら、その時また連絡しておけばいい。


 俺の方にもモグラからメッセージが届いた。

 ゴロウを助けたことのお礼と謝罪、あと数分でこっちへ来るという内容だった。


 それから5分程して、モグラとタケダがやってきた。

 珍しくタケダも武器を装備している。

 大きなハンマーだ。

 見た目と名前の通りにパワーキャラらしい。


「あ、ゴロウちゃん! 生きてて安心したよ」

「おっす、二人とも。お互い災難だったな」

「今回はマジで死ぬかと思った。ナガマサさんが来てくれなかったら、今頃路地裏で木箱みたいに固まってたぜい」

「こんにちは。……お互い?」

「こっちも手が離せなくてさ。ナガマサさん、来てくれてありがとね」

「いえいえ」

「とりあえずどこかゆっくり座れるとこに移動しよう。ちょっと話し合いたいんだ」


 というわけで、近くの酒場に移動した。

 モグラとタケダの行きつけらしい。

 奥の小部屋へ通された。

 ミルキーに場所を連絡しておく。


 話は全員揃ってからということで、適当に飲み物を注文した。

 皆はお酒を頼んだが、俺とタマはオレンジジュースだ。


 微妙な空気の中、しばらく雑談に興じる。

 ついでだし、モグラにいくつか質問しておく。

 要注意なスキルがあるかどうかを確認しておけば、不意の大ダメージを防げるかもしれないし。


「すみません、お待たせしました。こんにちは皆さん」


 しばらくして、ミルキーが到着した。

 ミルキーはオレンジジュースを頼もうとして、水に変更した。

 あの微妙な顔からして、筋肉モリモリのオレンジを思い出してしまったようだ。


「さてと、とりあえずゴロウちゃんのピンチに駆けつけてくれたナガマサさん達に、何が起きてたか説明しないとね」

「お願いします」

「――正午に届いたメッセージは見たよね?」

「はい」

「うん?」

「見ました」


 タマが首を傾げる。

 プレイヤーじゃないからな。

 理解出来なくても仕方ない。

 とりあえず頭を撫でて誤魔化しておこう。


「制限があるせいで詳しくは説明できないけど、あれを読んでPK達が自棄を起こしたらしくてさ」

「自棄?」

「どうせばれるならと思って、それまでに精一杯好き放題しようと思ったんだとよ」


 モグラの説明はざっくりしていた。

 自棄って何だと思ったら、タケダが説明を引き継いだ。

 

「なるほど」

「どうやらタケダさんとゴロウちゃんは、前から狙われてたっぽいんだよね。それで、早速行動を起こしたってわけ」

「狙われてた? そうなんですか?」

「二人とも、性能のいい装備を売ってて話題になってたからね。お金とアイテムを狙って目を付けられたんだと思うよ」


 そういえば前の宴会でそんなことを話してたような気がする。

 職人として名前が売れるのは、良いことばかりじゃないんだな。

 素材を売った側としてはちょっと責任を感じてしまう。


「とは言っても、別にナガマサさんのせいじゃないからね。そこは気にしなくていいよ」

「そうだぞ。人の財産を殺してでも奪い取ろうっていう、PK連中の性根が腐ってるだけなんだからな」

「んだんだ。むしろ助けてもらって本当ありがとうごぜぇますだ」

「にゃあ」

「にゃーこさんもありがとうって!」


 俺の考えを見透かされたように、モグラに声を掛けられる。

 タケダとゴロウも後に続く。


 ゴロウはお礼を言ってるだけだけど。

 しかも何故か口調がおかしい。

 にゃーこも、タマが言うようにお礼を言ってくれているような顔をしている、気がした。


「はは、ありがとうございます」

「で、話なんだけど、まぁ大したことじゃないよ。これから一週間はPKが活発化するから、人気の無いところには行かないようにしよう。特にゴロウちゃん」

「肝にようく刷り込んでおきます」


 モグラはPKに関する諸注意を伝えていく、

 狙われやすいのは、所持しているお金やアイテムと戦闘力が比例していない、タケダとゴロウ。

 ゴロウは狩りに出るようになってレベルも結構上がっているが、それでも美味しい獲物には違いないらしい。


 間が悪いし、モグラ曰く隙だらけに見えるらしい。

 だからか、注意のほとんどがゴロウに向けられている気がする。


 タケダの方が戦闘苦手らしいのに。

 やっぱりあの筋肉の分だろうか。

 見た目は超絶筋肉戦士だもんな。


「で、ナガマサさん達にもお願いがあるんだよね」

「なんでしょう?」


 PKに関する注意だったら俺達はお邪魔なのではと思ってたら、別に話があったようだ。

 一体何だろうか。

 もしかして、PKの討伐を手伝って欲しいとか?


 もしそうだとすると、ちょっと考えてしまう。

 殺伐とした生活はあまりしたくない。

 俺達に直接襲い掛かって来たら反撃するけど、積極的に探し回りたい訳ではない。


「オレもかなり忙しくなりそうだから、初心者さんの育成兼護衛をお願いしたいんだ。駄目かな?」



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