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148 出汁巻玉子と喋るパンツ

本日二回目の更新です。


 タマがおろし金に寄りかかったまま寝てしまい、ミルキーとミゼルが楽しげに話しているのを見ていた時のことだ。


「ナガマサさん、ちょっと見てほしいものがあるんすけどいいすか?」

「え、いいけど、どうしたんですか?」


 突然出汁巻玉子が謎のお願いをしてきた。

 詳しくはここでは言えないらしい。

 何か怪しい。

 悪い奴じゃないのは分かってるから、そんなに警戒はしてないけど。


「ちょっと俺の部屋で男同士の話をしてくるよ」

「分かりました」

「いってらっしゃいませ」


 二人に見送られて俺の部屋へやって来た。

 俺の部屋は二階にある個室の一つだ。

 ミルキーの部屋も二階にある。


「見せたいものっていうのは?」

「オレもあれからレベルを上げたので、その成果っす」


 成果っていうと、スキルとかだろうか。

 それは室内でやって大丈夫なものなのか?

 攻撃スキルだと、せっかくの我が家が崩壊したりしない?


 出汁巻のスキルと言えば、脱げば脱ぐほど強くなるとか無かったか?

 もしかしてあれの系統じゃ――こいつ、既に脱いでやがる!!


 出汁巻は装備を解除して、パンツ一丁になっていた。

 この真っ黄色のトランクスが出汁巻玉子の相棒だ。

 名前は玉子焼。


 だけどガタイのいい男が、パンツ一丁で狭い部屋に一緒に居るというのは、楽しくない。

 そのままの意味で目に毒だ。


「何故脱いでるんですか?」

「これを見せたかったからっす」


 これと言われても困る。

 出汁巻玉子は腰に手を当てて胸を張っている。


 何も持っていないし、黄色いトランクス以外に何か装備している様子もない。

 このパンツなら前に見たくもないのに見せられたぞ。


「だしー!」

「出汁巻さん、今何か喋りました?」

「オレは何も喋ってないっすよ」


 何か聞こえた気がする。

 出汁巻は真顔だ。

 嘘を言っている感じはない。


 だけど、甲高い声が聞こえたような気が確かにした。


「だしー!」


 再び変な声が聞こえた。

 見回してみても俺達の他に誰もいない。

 出汁巻の顔をもう一度見てみると、笑いをこらえるような顔をしていた。

 この野郎……。


「また! ……出汁巻さん、何か知ってますね?」

「喋ったのはこいつっすよ」


 問い詰めてみると、出汁巻は自分の股間を指差した。

 なんてところを指差すんだこいつは。

 こいつの股間は喋るのか?


「だしー! ナガマサさんのパンツ!」

「うわっ!?」


 突然黄色いトランクスが迫り出してきた。

 あぶなっ!?

 咄嗟に顔を引いて良かった。

 顔面に当たるところだったぞ今。


 どうやら、喋っていたのは黄色いトランクスそのものだったようだ。

 命拾いしたな。

 顔についてたら正気を失って暴れてた自信があるぞ。


「これは一体なんですか?」


 素朴な疑問が口から零れる。

 何をとち狂ったら、喋って動くパンツなんてものが誕生するのか。

 

 答えは単純なものだった。

 タマが自由に動いていたのを見た出汁巻が、憧れた結果らしい。

 それで相棒の特徴スキルで≪自我≫と≪会話≫というスキルを取得したらああなったと。


 相棒の特徴スキルは色々ある。

 色々ある上に、ほとんどのスキルは共通で、どの相棒でも取得できるようになっている。

 特性はパーソナルスキルの方で差別化されてる訳だからな。


 自分好みにカスタマイズする為には、この特徴スキルの比重が大きい。

 例えば≪サイズ拡大≫のスキルを取れば大きくなるし、≪人化≫のスキルを取れタマのように人型になる。


 しかし、相棒によって同じスキルでも効果の大小は違うらしい。

 難しいな。


 だけど出汁巻、普通に考えたら分かるだろ。

 ≪人化≫で人型になるならともかく、喋るようにしたところで喋るパンツでしかないんだぞ。


「パンツ! ナガマサさんのパンツくれだし!」


 玉子焼は出汁巻に履かれたまま蠢いている。

 しかも、不気味なことを言い続けている。


 声も語尾も全く可愛くない。

 おじさんが無理して出してる裏声みたいな声だ。

 これがお前が憧れた相棒なのか?


 もっとこう、何かあるだろう?

 タマに憧れた結果がこれって、俺は認めないぞ!


「で、このパンツパンツ言ってるのは何なんですか?」

「えーっと、ナガマサさんが装備してるそれって名前なんすか?」

「装備? これ?」


 質問が突然過ぎて理解が追いつかなかった。

 確認すると、俺が履いているズボンのことのようだ。


「≪古代異界革パンツ≫ですけどそれがどうかしたんですか?」

「ああ、それっすね」

「つまりどういうことですか?」

「玉子焼は相棒だけど、見ての通りパンツじゃないっすか」

「はい」

「ナガマサさんが履いてるのもパンツっすよね?」

「そうですね」

「そういうことです」

「なるほど」

「パンツ寄越せだしー!」


 玉子焼は相棒だから、強化する主な方法は同種のものを破壊するか吸収すること。

 玉子焼の種別は≪防具/服/パンツ/相棒≫だそうだ。


 この黄色いトランクスは普段から更なる強さを求めて、パンツを要求してるらしい。

 強力であればあるほど、経験値も増える。


 だから、俺の装備している≪古代異界革パンツ≫に反応して騒いでるんだとか。

 なにそれこわい。

 確かに名前にパンツって入ってるけど、意味違うんじゃないか?

 種別もパンツじゃないし。


「これはパンツだけどお前とは違うんだぞ」

「パンツ寄越せだしー!」


 伝えてみたが、玉子焼は納得しなかった。

 もはやパンツって付いてる時点で区別がつかないようだ。


「出汁巻さんはこれを見せてどうしたかったんですか?」

「喋る相棒仲間なので挨拶させておこうかと思ったんすよ」

「パンツ! ナガマサさんのパンツ!」

「宣戦布告として受け取っておきますね」


  

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