97話 てっちゃんねる武闘大会 2
おはようございます!ついに武闘大会第一試合開始です!
キャライメージの挿絵があるのでぜひ見てください!
俺たちは準備を終えて8人が待っている控え室へ入るとすでにワイワイ話しているではないか。
近藤さんは同じ企業所属の探索者の小川さんとビジネストークをしており、アスカーの長谷川さんは本田さんとあきらさんと話している。
俺らと同年代っぽい3人は集まって一番ワイワイして話し込んでいた。特に虎。
「お待たせしました!みなさんよろしくお願いします!運営をしていますサトウ商会の佐藤俊です!よろしくお願いします!わからないことがありましたら僕かこっちのカメラマンをしてる千夏将人に聞いてください!ではてっちゃんから一言どうぞ!」
俺がぺこりと会釈したあとてっちゃんが続けて話し始める。
「こんにちは!こんな急な開催だったのに今日は集まってくれてありがとうございます!俺らは探索者として切磋琢磨して強くなる必要があると感じたからこの大会を開催しようと思ったんだが、ここにいるみなさんは自衛隊をのぞいた実質日本でのトップと言っても過言じゃないと思うんだ!
この大会を通じて良い交流や学びがあればいいなと思ってます!今日は楽しんでください!よろしくお願いします!
あと、俺も戦うのけっこう好きなんだ!トーナメント戦が終わった後に戦いたい人がいたらぜひやりてぇ!」
てっちゃんが興奮のあまりいきなり変な提案をし出した。
「おうおう、オレがやってやろうじゃねぇか!前からてっちゃんねるとか言って気に食わなかったんだよ!お前!」
虎がしゃしゃり出てきた。
「君!元気いいね!若者はそうでなくっちゃね!でも、僕もやりたいな!それ!いいかな?」
近藤さんがまさかの参戦してきたのである。しかも興奮気味に。この人もしやてっちゃんと同じタイプか?
「お!近藤さん!ぜひやりましょう!虎さんももちろん後でやろう!」
「おい!お前!虎って呼ぶなよ!キングって呼べ!」
「お、おう、そうか、もちろんキングもやろう!」
てっちゃんは少し馬鹿にしたような雰囲気で返答した。
「後で覚えておけよ!!お前ぇ!」
こうして大会後の特別エキシビションマッチも確定したのであった。
その後、トシくんが大会進行の説明をし、ルールや契約の確認、注意点など説明していく。
疑問があればその場で質問という形式で進められていった。
説明はスムーズに進み、これから会場に選手たちが入場していく。
地鳴りのような歓声が闘技場いっぱいに響き渡った。
主催者である、てっちゃんが腕を組み、堂々と中央に立っている。てっちゃんは闘技場のランカーなので観客の中には知ってる人も多いようだ。
観客席には人、人、人。満員の闘技場に熱気がこもり、砂の匂いと血の匂いが混じり合う。
そこへ。
『さあああ!!今回はああ、てっちゃんねる武闘大会!!いよいよ開幕だああああ!!』
MCの絶叫が響く。魔力拡声器の音がビリビリと空気を震わせた。
『今回の主催は! 我らがランカーテツヤヤマダこと、てっちゃあああん!!そしてエントリーした精鋭8人がここに集結だぁーーーっ!!』
選手たちはてっちゃんの立っている後ろに転送されてくる。全員揃ったところでMCが続ける。
『そして最後にみなさん!!耳をかっぽじって聞いてくれ!!最後にはテツヤヤマダと精鋭参加者によるスペシャルエキシビションマッチを開催するぞぉーーっ!!』
観客席が揺れた。
会場の照明が激しく瞬き、期待と興奮がうねりとなって押し寄せる。
そして、MCが大会開始の合図をする。
『それではぁぁ!最高に熱い戦いを始めていこぉぉう!!』
1試合目に試合をするサラちゃんと長谷川さん以外はまた転送される。
『さぁ、第一試合はぁぁ、その刀で何を切ってきたんだぁぁ!!鮮血の乙女!!サラちゃああああん!!』
サラちゃんは先ほどは髪を下ろしていたが、黒の長い髪を高めの位置でポニーテールにしていて、装備は動きやすそうな赤と黒のバトルスーツを纏い、そのスーツは急所や関節には薄い金属製のプロテクターで覆われている。そして、武器は日本刀を所持していた。
『対するは、落ち着いた雰囲気の超絶イケメぇぇン!!アスカープロモーション所属!!長谷川あああ海ぃ!!』
長谷川さんの見た目はイケメンのお兄さんって感じで芸能プロダクションの若手俳優なのだとか。装備はサバゲーでいそうなグレーと黒の軍服みたいな装備にプロテクターや防具を付けている感じだ。武器は黒い長槍を持っている。
そして、会場は早くも熱狂の渦に包まれた。
2人が向かい合った瞬間、闘技場の空気がピンと張りつめる。
そして。
『試合、スターーートォ!!』
MCの声と同時に、サラちゃんが一歩で間合いを詰める。
その踏み込みの鋭さに観客が息をのむ。
「すごっ」
俺も思わず声が漏れた。
俺の持つカメラに動画映りを意識しつつ、横顔を見せるように斜めに切り込むあたり、配信慣れしてる気がする。
しかし、長谷川さんも負けていない。
槍の石突きを地面に軽くぶつけ、その反動で身体を横に跳ねさせ、サラちゃんの攻撃を紙一重で避ける。
あれは前に動画で観たことある薙刀での体捌きだ。派手じゃないけど無駄がない。
『おっとぉー!!長谷川ぁ海っ!!華麗なスウェイからのカウンタースラァァスト!!』
MCの叫びと同時に、黒槍の突きが一直線にサラちゃんの喉元を狙う。
サラちゃんはギリギリで刃を返し、槍の軸を弾く。その瞬間、火花が散ったように見えた。
「おお、反応速え。」
また自然と声が漏れてしまった。
何度も交差する斬撃と突き。
金属の打撃音が連続して響き、観客席は大歓声。
一瞬攻防が止む。
するとサラちゃんが話し出す。
「あなたなかなかやりますのねっ!私のことをサラちゃんって呼ぶことを許します!」
苦笑いをしながら長谷川さんが返答する。
「それはありがとうと言っておこう。でも、まだこれからだよサラちゃん。」
また、目にも止まらぬ攻防が始まった。
2人とも動画映えを完全に理解しているのか、わざと角度をつけて攻撃したり、避けながらもカメラ方向に顔が向くようにしている。プロかよ。
いやプロだよな。
互いに切り傷が増えていく。
バトルスーツが裂け、赤い線が肌を走る。
けど2人は止まらない。むしろ熱を帯びていく。
『これはぁぁ!!技巧の応酬!!一歩も譲らなぁぁぁい!!』
ほんの一瞬の空白。
そこで先に動いたのはサラちゃんだった。
足を滑らせるように踏み込み、低い姿勢から刀を振り上げる。
長谷川さんは槍を横に構えて受けるが、その斬撃の重さに耐えきれずバランスが崩れたところを追撃されることとなり、、、
『決まったああ!!』
サラちゃんの刃が長谷川さんの胸部プロテクターに突き刺さり、そのまま押し倒すように地面に吸い込まれていく間に敗北の光が長谷川さんを包み、彼は先に控え室へと転送されていった。
『勝者ぁぁ!!鮮血の乙女ぇぇ!!サ
ラぁぁちゃぁぁん!!』
サラちゃんは肩で息をしながら、疲れを見せずに観客席に笑顔で手を振っていて、こう言うところもインフルエンサーという感じがした。
場内からは揺れるほどの拍手と歓声が鳴り響く。
そのすぐ後にサラちゃんは光に包まれ転送されていったのだった。
サラちゃんのスキル
剣術A 縮地B 気配察知C 回避B 抜刀D
長谷川さんのスキル
槍術B 見切りC 回避C
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