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我らダンジョン攻略部〜もしも現実世界にダンジョンができたら〜  作者: 一日千秋
ダンジョン創世編

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93話 大事な作業



数日後。

今日はトシくん家で作業をする。



トシくんの部屋に入ると、すでに机の上には自分のデスクトップ型のパソコンとノートパソコン、資料の山が広げられていた。



「じゃあ、作業進めよっか。溜まってるからマサトくん一緒にやってくれてほんと助かるよ」



「当たり前だろ。さすがにトシくんだけでやれなんて言わないよ。俺たちの事業だしさ」


俺は椅子を引いて腰を下ろす。



このDEC.ラボのオンラインサロンは表に出せない情報を扱う以上、作業を誰かに丸投げできるわけじゃない。トシくんと俺、二人で回す。



後々は簡単な作業をてっちゃんに教えてやってもらうつもりだ。



「まずライト層向けのブロンズプランの資料だね。初心者向けの弱いモンスター対策、動画の未公開カット、それから質問箱の回答。えっと、、このQ&A、回答お願いしていい?」



「了解。とりあえず30件くらいやっとくな」



俺はノートパソコンのモニターをスクロールしながら淡々とタイピングを始める。


Q、ゴブリンが出た時、最初にするべき行動は?

→ 単体の場合は武器の確認、複数の場合はリーダー格を視認、遠距離攻撃の有無を確認。



こんな具合だ。


「さすが!説得力あるし、読みやすいね。」



「余計な情報を入れない方が伝わるだろ」


トシくんがふっと笑う。


こうやって褒めてくるのは意外に嬉しいもんだ。

作業中、不思議と集中力につながる。



「次はシルバープラン。最新階層の危険情報と戦闘ログ。これは僕がベース作るから、マサトくんは戦術解説入れてくれる?」



「わかった。送ってくれ」



「はい、共有っと、、、できた。あと、新武器試作の写真だけ先にアップしたいから、その前にぼかし加工だけお願いしていい?」



「処理しておく」



またキーボードを叩く。


火属性付与ハンドアクス試作03という名称を打ち込んでから、写真を加工していく。

ちなみにこの武器はダンジョン産の金属を20階層のガルシアで仕入れて試作していたものらしい。



「完了した」



「ありがとう!じゃあ次、ゴールドプランいこっか。これは登録者からの身分証確認が終わったから、今日中に未公開階層のデータを上げたい。僕が地形図まとめるから、マサトくんは危険区域の記載お願い」



「了解」



淡々と返しながら作業を続ける。


画面上には、自分たちが踏破した階層の写真が並んでおり、特殊モンスターと遭遇した位置までの順路と危険区域の記載をしていく。



俺たちが潜った階層、通過するだけでも本来は命懸けなはずだ。



「あのさ、、、」



「なんだ?」



「こうやって情報を公開してると、本当に生き延びられる人が増えるんだろうなって思うんだ」



優しく微笑んでいるのに、その奥には俺と同じ重さが見えた。



「助かる命は多い方がいい、だからやってる」



「うん、、、そうだね」





沈黙。




そして、キーボードを叩く作業の音。






「ふぅ、ここまで一気に進んだね。マサトくん、まだいける?」



「もちろん。あと2つだろ」



「うん。じゃあ、プラチナプランを片付けよっか」




トシくんは資料フォルダを開きながら説明する。



「今回のプラチナ会員さん、投資家と素材収集家が一人ずつ。だから高額素材の買取優先権のアイテムをまとめてて、、、これ、候補のアイテムリストを作ってほしいんだ。危険度レベルもつけて」



「わかった。今までドロップしてきたものを一通り作成する」



「あと、限定武器のレンタルは僕が条件書くから、マサトくんは実戦上でのリスク注意点を加えてくれると助かる」



「了解。死なれたら困るからな」



「そうだね」



優しく微笑んでいるのに目は真剣だった。



俺も無言でキーボードを叩き続ける。



プラチナ層は命より金が先のタイプが多い。

だからこそ、情報の方を徹底的に固めなきゃならない。




「よし、完成だ」



「ありがとう。じゃあこれアップロードしちゃうね。次で最後、コーポレートプラン」



聞くだけで胃が重くなる単語だ。

企業相手なんて始めたはいいものの初めてだからしっかり準備しなければいけない。



「今回依頼してきた会社、ダンジョン素材の工業利用を広げたいらしい。だから産業利用レポートのラフを作りたいんだけど、マサトくん、実際の素材の使用例コメント入れてくれる?専門用語少なめで」



「ああ。一般人でも理解しやすい文にしてみる」



「助かるよ。あと、危険地帯のリスク分析報告書の部分は僕が図表を作るから、マサトくんは死亡しそうなケースの典型例だけまとめてほしいんだ。」



「了解」



再び作業に没頭する。



・単独行動による索敵不足

・撤退判断の遅れ

・モンスターの大量発生

    :

    :



書きながら胸が少しだけ重くなる。

それでもこれは現実だ。最悪のケースを予想しなければいけない。



「、、、完成かな」



「ありがとう。ほんとにすごいね、マサトくん」



「俺より手早くて正確なやつに言われてもな。俺はやれることをやってるだけだ」



そう言うと、トシくんは少しだけ目を伏せて笑った。



「うん。そうだね。でも命を守りたいって気持ちは、やれることの中で一番大事だと思うよ、僕はマサトくんやてっちゃんみたいに戦闘するのは苦手だからこういう事は積極的にやっていきたいんだ」



「ほんとトシくんには助けられてるよ、ありがとう」



「それを言ったら僕だってダンジョンの中では2人に助けられっぱなしだよ」




柔らかく、それでいて真剣な声。


作業の終わりと同時に、部屋の空気がゆるんだ。





「じゃあ、これで全部更新完了。次の階層探索まではしばらく息抜きしていい、、、はず」



「そうだな。生きて戻ってこれたら、また更新だ」



「うん。そのためにもちゃんと準備しよう」



トシくんはモニターを閉じ、肩を回すように伸びをした。


「マサトくん。休憩しよ。さすがに疲れたでしょ」



「ああ。そうだな」



「僕、お茶に飲むけどなんかいる?」



「お、何がある?」



二人で立ち上がり、台所へ向かうのであった。




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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