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我らダンジョン攻略部〜もしも現実世界にダンジョンができたら〜  作者: 一日千秋


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89話 閑話5 ライオネル 中編



オレはレオニードの乗っている馬を飛び越え直接ヤツの身体に拳を振り抜く。


ヤツは咄嗟に剣でその攻撃を防ぐとその勢いで馬から吹っ飛び落ちていく。



が、お互い綺麗に着地し、すぐに戦闘態勢を取った。



「おい!我が隊は残党を制圧せよ!コイツは私がやる!」

レオニードは大声で隊に命令をする。



そして、次はヤツから動き出し恐ろしい速度の斬撃が飛んでくる。文字通り飛んできたのだ。



「うぉっと」

オレは咄嗟に斬撃を避ける。


「ハッハッハ、それで剣鬼か、テメェもあの大穴で力を手にしたってことだろぉ?」



「貴様っ!なぜそれをッ!?」



「そりゃぁよぉ、オレもだからよぉ」

オレは拳に謎の力を溜めると力の限りその場で拳を振り抜く。


すると、拳撃がレオニードに向かって飛び出した。



高速の拳撃はアイツの豪華な鎧にぶち当たり、衝撃波で10メートルほど吹っ飛んだ。



「ぐッ、、、何だ、これは、、、」

レオニードは体を起こしながら驚く。



「テメェ自分しか使えないとでも思ったかぁ?あの穴で戦えば戦うほど強くなれるんだ、まぁ、そんなとこだ。今日はずらかるぜ」




この隙に駆け出しながら大声で命令を出す。


「オイッ!テメェらずらかるぞッ!!!」 




オレたちは被害を出す前に戦利品と共に逃走した。




〜〜〜〜〜



サイラス領、首都トリスの領主城の一室。



諜報官の男が報告に来る。


「サイラス様、あの盗賊団はあの地域で有名なようです。黒曜団と呼ばれており、リーダー格の男は《狂気のブラッド》と呼ばれております。身元を調査したところ、昔このサイラス領で憲兵をしていたとのことで、名をライオネル・ブラッドと言うそうです。」



「なっ!?ライオネルだと?まさか、、、だが、そんなことありえるのか?」



レオニードは自分の記憶の中のライオネルとあの男を照らし合わせて困惑していた。


あの人は奴隷として闘技場に売られ、戦争にも奴隷として参加したと聞く、あの人の強さなら生き残る可能性もあるか、と無理やり納得した。





だが、盗賊団のことなど考える暇がなくなる事件が起こったのである。


この戦争からすぐに、魔神の侵攻が始まったのだ。



〜〜〜〜〜



ピロンッ


《魔神の侵攻が始まります。第一エリアに属する者は参加権利があります。参加しますか?YES NO》



オレの目の前に赤い板が出現した。

「何だぁこれは、、、おい、テメェら何か目の前にでてるか?」



「へい!団長!なんか赤い板があります!参加しますか?とありますがどうしますか?」



「ハッハッハァ!もちろん参加だ!テメェらも参加を選べ!」



オレたちは謎の戦いに参加するらしいが楽しみじゃねぇか!魔神とやらと戦えるなんてなぁ。




それから数分後またあの知らせが届いた。


ピロンッ


《参加を選択した者を戦闘エリアに転送します》



その知らせが来るとオレの視界は一瞬ブレる。と次の瞬間には神殿の様な作りの壁と柱に囲まれた大きな円柱状の部屋へと移動していた。



「なんだぁ!?どこだここはぁ!?」



目の前には黒い丸い半透明のモンスターがいた。

これはあの大穴にいたモンスターの色違いじゃねぇか。


とりあえず、倒すか。


オレはこのモンスターの核を踏みつけると霧になって消えていった。



ピロンッ

《魔神の侵攻を退けました。元の場所に帰還します》



すると元いたアジトの一室に戻っていた。

そして、周りにいた仲間たちも次々と戻ってくる。そりゃ当たり前か、あのモンスターじゃぁなぁ。



ピロンッ

《一回目の侵攻が終了。過半数の勝利を確認しました》



なんだかよくわからん戦いだったな。つまんねぇ。




そんな事件が起きてから1ヶ月後にまた同じことが起こった。次の相手は黒いゴブリンだ。


まぁオレは瞬殺だったから特に問題ねぇ、仲間もそんな感じだった。



その次の月もこの戦闘が繰り返された。


モンスターは徐々に強くなっていき、次の月は武器ゴブリン、その次はデカいゴブリン、鬼、牛の怪物まで出てきやがった。



そして、モンスターが強くなってから仲間たちは一回死んだらしい。だが、こっちに戻ってきた時には生き返ってたとか訳のわからん事をほざいていた。



まぁオレは楽しく戦闘ができるから最高の催しだったんだがなぁ。






数ヶ月後、この国のあちこちに暗黒大陸と言うエリアが出現した。


なんでも過半数の勝利が獲得できないとそのエリアが黒く染まって行き、そのエリアからはモンスターが無限に現れる。



そのエリアにいる人々はモンスターの被害に遭い、暗黒大陸から避難せざるを得なくなったのだ。






そして、また数年が経ち、魔神の侵攻でどんどん領土が消えていくにつれ、オレたちヒューマンが住むことのできる場所は着実に減ってきている。


他国は知らんが今やこの国ではサイラス領の首都とオレらのいる山付近しか安全地帯はなくなっていた。




ピロンッ

《参加を選択した者を戦闘エリアに転送します》



また来やがったか。


オレは目を開けると毎月訪れるあの場所にいる。


だが今回は違うことが一つある。それは参加してるのが一人ではなくなったのだ。



「おい、レオニードじゃねぇか!何でここにいる!」



「なッ!?貴様が何でいる!」



「おいおい、それはオレが聞いてんだろぉがよ」



「まぁそれは今はいい。確認したい事がある、あなたは訓練所の先輩だったライオネル先輩か?」


レオニードは真剣な表情で質問をしてくる。



「あぁ、そうだぜぇ、思い出したのかぁ?」



「はい、なにより謝りたいと思っていたのです。」



「謝罪は受け取ってやるよ、何のことかわからねぇがな。それよりまずはアイツを倒してからにするか」



オレは目の前の敵を指差す。




〜〜〜〜〜




オレたちは共闘し、モンスターを倒した。



「ハッハッハァ、楽しかったぜぇ。」

オレが達成感を感じているとレオニードが話しかけてくる。



「先輩、あちらに帰還したら話したいことがあります。ぜひ会って欲しいです!」



「いや、めんどくせぇ、今言えっ!」



「その性格変わってないですね。えー、、、過去の事、謝罪をしたくて、あの毒殺の件は濡れ衣でした。本当に申し訳ありませんでした。」



「ああ、そんなことか、もう忘れたぜぇ。どっちでもいいぜぇ」



「先輩はそうかもしれませんが私は後悔しかありません。だから、また、、、、」



ピロンッ

《魔神の侵攻を退けました。元の場所に帰還します》






オレはアジトに帰還した。


「アイツぁはホント甘ちゃんだなぁ、まったく」



もうすぐ世界が終わろうとしているのに今になって胸につっかえた何かが取れたような気がした。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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