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我らダンジョン攻略部〜もしも現実世界にダンジョンができたら〜  作者: 一日千秋


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78話 ドワーフ製の装備



次の日、俺たちは20階層の街ガルシアを一通り散策してみたのだが、なんだか冒険者のような人々が多い気がする。人混みから聞こえるのは笑い声でも住人の歓声でもなく、武具の金属音と、素材の売買価格を叫ぶ商人の声ばかりな気がする。




「なんかすげぇ街だよな。ここ」


てっちゃんが金属の匂いに顔をしかめながら呟く。



「うん、そうだね。今日はやることがある。トシくんの防具、上限なしで最優先で探そう」


俺が言うと、トシくんは困ったように笑った。



「ぼ、僕のために上限なしって、、、なんか悪いよ」



「まぁ弱点のフォローはチームの基本だ。遠距離攻撃担当が落ちたら終わりなんだしさ、遠慮はいらない!」


「そうそう! 遠距離は命!! だからせっかくだし最強の防具ゲットすんぞ!」



そして目立った店を発見した。

その名も《匠のアークス》の前に立った瞬間、三人とも息をのんだ。



巨大な建物。表の壁すら鉄板で覆われでいて、入り口にはドワーフ製専門店と刻まれた看板が出ていた。

扉を開けると漂うのは、炭と熱と油の匂い。そして金属同士がぶつかりあう耳心地のいい音。



店の中には、冒険者の装備とは思えないほど分厚い防具が並んでいる。



「黒鉄、青鋼、赤鋼、魔鉱金、魔布複合装甲、、、」


トシくんが鑑定しながらつぶやいていた。



どれも重量感があり、ただそこにあるだけで周囲の空気を震わせているようだ。



「これ全部防具なのか、、、」


トシくんが息を詰まらせる。



さらに奥に進むと、カウンター横で腕を組んでいる店主であろうドワーフの男性が目に入った。

太い腕、白混じりの髭、顔の半分を覆う片眼鏡。近づくだけでどっしりとした威圧感がある。



「いらっしゃい。防具を見にきたのか?」



「はい。仲間の防御強化が目的です。Dコインに上限はありません。防御力が最強なものを探しています」


俺は淡々と告げる。


店内の空気が、一瞬だけ変わった。

ドワーフの店主は驚いた顔も見せず、ただ静かにこちらを値踏みするように見た。



「上限なし、か。軽い言葉じゃあねぇだろうな?」



「本気です。仲間を守りたい。勝つためじゃなく、死なせないために必要なんです」


俺は店主の目だけはまっすぐ見た。



それを見た瞬間、ドワーフの表情がわずかに崩れ、僅かな笑みを浮かべた。



「よし。なら見せてやろう。うちの最高傑作をな」



奥の厚い扉をドワーフが押し開けた瞬間、店の照明が反射して眩い光が広がった。



そこにあったのは、、、

黒鋼と魔鉱を層状に重ね、胸部には青い紋章が刻まれた複合装甲ジャケットという防具。


重さは見た目ほどなく、動きやすさと防御性能を極限まで両立させた逸品だそうだ。



「こいつの名前は《ミスリルシールド・アクトゥス》。物理も魔法も両方で格上の攻撃を一回だけ無効化できる魔法術式が組み込まれている。発動すれば光で全身を包む防護魔法を展開する。魔法使用後も防御性能はトップクラスだ。ちなみにミスリルに特殊な魔法陣を加工してあるからこれが壊れさえしなければ、魔法の補充可能だ。」



「やば!絶対高いやつじゃん!」


てっちゃんが顔を引きつらせる。



「販売実績はなし。依頼品だったが依頼主が死んじまってな。値段は、、、そうだな、最低でも1,500万Dコインってとこだ」


静寂。

額を聞いて驚きながらも、トシくんは一歩前に出た。



「買います。僕が!、、、じゃなくて、僕たちが」


ドワーフ店主は口元をさらに持ち上げた。



「言葉じゃなく、覚悟で選ぶ。冒険者の目をしてるな。気に入った。後悔する買い物にはならんぞ」



その瞬間、胸の奥が熱くなる。

たぶん、全員思っていた。



これで、仲間が死なないなら安い。


金額じゃない。

生きて、また一緒に笑うために選んだ装備だ。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ドワーフの店で上限なしで最高級品だしてもらって1500万なの? 正直億は軽く超えると思ってました
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