100話 てっちゃんねる武闘大会 5
ついに決勝戦が始まる。
覇気を纏った2人、サラちゃんと聖夜くんが転送されてくる。
『ついにぃぃ!ついにやってきましたぁぁ!決勝戦だぁぁぁ!!!!鮮血の乙女!サラちゃぁぁん!!!!対するはぁぁ!暗黒騎士団!聖夜ぁぁ!!!』
サラちゃんは綺麗な一礼をした。
それに反応した聖夜くんは首だけでぺこりとお辞儀を返す。
『ではぁ、試合スタァァトォーーー!!!』
サラちゃんは動かない。
剣を下げ、重心を低く保ったまま聖夜くんの足元、正確には影から一瞬も視線を外さない。
『サラちゃぁぁん、様子見だぁ!一切動かない!』
その沈黙を破ったのは、聖夜くんだった。
無言のまま一気に距離を詰める。
大剣を横薙ぎに振り回しながら、踏み込む足はやけに大きく、そして、不自然だ。
影を踏みに行ってるのか?
剣の軌道よりも、足の運びが主張しすぎている。
サラちゃんは何かに気づいたのかふっと口を開いた。
「あなたの影魔法とやらは、、、影を踏まなきゃいけないのですか?」
一瞬、空気が凍る。
「チッ、、」
聖夜くんの舌打ち。
図星だ。
『おっと!?サラちゃんが能力を見抜いたかぁ!?』
その瞬間、サラちゃんが動いた。
速い。
地面を蹴ったというより、消えて現れたと錯覚する踏み込み。そして、連撃。斬って、斬って、斬る。
『これは止まらない!連撃だぁぁ!』
だがあえて、深追いしてない感じがする。
サラちゃんの刃は、確実に当たる軌道を描きながら、聖夜くんに迫る。
が。その一瞬。
聖夜くんの足が、刀身の影を踏んだ。
「ふっ、影魔法」
次の瞬間、、、
聖夜くんは、自分の影へと大剣を振り下ろす。
『影魔法、発動ぉぉ!!』
影の中へと大剣が飲み込まれるとサラちゃんの足元、彼女の影からその大剣が飛び出す。
だが、、、
キンッ!
澄んだ金属音。
サラちゃんはその攻撃に動じず、受け流した。
『信じられない反応速度ぉ!足元からの斬撃をいなしたぁ!』
そこからはお互いに連撃の嵐、影から、正面から、また影へ。
だがサラちゃんの刀は常に一瞬早い。
聖夜くんの身体には少しずつ傷が増えていく、肩、脇腹、太腿。
力みのない自然な踏み込み、そして、抜刀。
完璧な間合いと角度だった。
「ぐっ、、、」
聖夜くんの腕が宙を舞った。
『き、決まったぁぁ!!』
光が溢れ、聖夜くんは転送されていく。
割れんばかりの歓声の中、サラちゃんは剣を収め、ゆっくりと振り返る。そして綺麗な一礼をしたのだった。
『勝者ぁぁサラちゃぁぁぁん!!』
サラちゃんの剣術は一朝一夕で身につけられる物じゃない。あれは達人の域に達しているはずだ。
俺はそう結論づけながら、彼女の背中を見つめていた。
完勝だった。
〜〜〜〜〜
全試合が終わり、一旦全員また控え室に集まっていた。
そして、てっちゃんがみんなの前で話し始める。
「みなさん!試合お疲れ様でした!みなさんめっちゃいい戦いぶりだったぜ!そして、鮮血の乙女!サラちゃん!優勝おめでとう!!優勝賞金の100万Dコインだ!受け取ってくれ!あぁ、俺もみんなの試合見てたら興奮して早く試合やりてぇよ!近藤さんとキングはもちろんやるってことでいいよな?」
「もちろんだよ!楽しみだな!」
近藤さんは相変わらず爽やかな笑顔で答える。
「オレはお前とはやらねぇ、やっぱりそのカメラマンとでもやるぜ!近藤に譲ってやるよ!」
キングは何故か俺を指名した。
「え、俺?」
「あぁ、お前だよ!弱そうなツラしてるから指導してやるよ!いいなっ!」
「ちょっとお話しの途中ですが、私もいいでしょうか?キングさん、あなた負けたのだから私に譲りなさい!」
サラちゃんが割って入ってくる。
「ああ!?んだとコラっ!」
「納得してないようでしたら私とまずやって、勝てたら譲ってあげますわ。」
ということでエキシビションの1試合目はサラちゃん対キングになったのだが瞬殺という言葉がこんなにも似合う戦いは他になかったので割愛する。
「では私と戦うという事でよろしいですね?」
「まぁやってもいいぞ」
俺は即答する。
「サラちゃん!あのさ、多分なんだけど俺よりマサトの方が強いけどいいのか?」
てっちゃんは苦笑いしながら言う。
「そうですの、、、むしろ楽しみですわ!」
「そうか、じゃぁ10分後にマサト対サラちゃんの戦いからやろう!」
〜〜〜〜〜
俺とサラちゃんは控え室から転送され、お互いに向き合っている。
『やってきましたぁぁ!エキシビションマッチィィィ第二試合ぃ!!まずはてっちゃんのカメラマァァン!!マサトチナツだぁぁ!!そしてぇ!我らが鮮血の乙女!サラちゃぁぁん!!!』
サラちゃんは俺に対して綺麗な一礼をし、俺もそれに対応してぺこりと頭を下げた。
『それではぁぁ!試合スタァァァトッ!!』
俺は様子を見ようとファイティングポーズを取ったままじっとする。ちなみに今回ナックルは装備していない。
「来ないのなら私からいきますわ!」
『おっとぉ!最初に動いたのはぁぁ!サラちゃんだぁぁ!』
するとサラちゃんの立っていた位置からいきなり俺の目の前に現れる。実際にこの移動方法を間近でみるとマジで消えて見えるんだな。
俺は感心しながらも身体強化された体で反応する。
左上からくる斬撃を左に潜って避けると身体強化をフルに使いサラちゃんの左脇腹に左フックを繰り出す。
するとサラちゃんは俺の身体強化の動きを見てすぐに目を見開きながら瞬時に後退する。
『サラちゃんん!!思わず後退したぞぉぉ!一体どうしたんだぁぁ!』
俺の左フックはサラちゃんの左脇腹に掠っただけで大きなダメージは与えられていないが装備の一部が剥がれている。
「あなた、強いのね。素手でこのスピードと火力を出せるなんて、、、」
「まぁ、スキルのおかげだよ」
俺は全力で一歩踏み込み、サラちゃんの元へ一直線に突き進んだ。全神経を目に集中させてサラちゃんの刀の刃先を追いながら攻撃モーションに入るとサラちゃんもそれに呼応して刀を振り上げる。
そして、突きが目の前から飛んでくる。
さらに追撃。
『サラちゃんの連撃だぁぁぁ!!!』
突きを避け、斬撃を避け、また突きを避け、横薙ぎの斬撃も避ける。
だんだんこのスピードやリズムに慣れてくる。
俺はふと思い出す、あの19階層の騎士よりは遅い。
そして、慣れてきた斬撃がまた左上から来た。
俺はその斬撃の刃の軌道を良く観察し、右手で刀身を鷲掴みにした。
キィィィィン
俺の鉄壁とサラちゃんの刀が触れ合った瞬間に甲高い金属音が会場に響き渡る。
そして、歓声が鳴り止み静寂。
『マサトチナツぅぅぅ!なんとなんとぉぉ!刀を素手で止めてしまったぁぁぁ!!』
サラちゃんが刀を引き抜こうとするが俺はそれを許さない。俺の手の中から刀を抜けないとわかるとサラちゃんの目の奥の闘志がスッと消えていった。
「ッ、、、参りましたわ」
その言葉を発した瞬間、サラちゃんは光に包まれ転送される。
『サラちゃん棄権だぁぁ!勝者ぁぁ!マサトチナツゥゥゥ!!!』
俺はほぼ攻撃せずして勝利したのだった。
そして、大トリ。
てっちゃんと近藤さんが転送されてくる。
『エキシビションマァァァチ!ファイナルマッチはぁあ!!この大会の主催!てっちゃぁぁぁんん!!!対するはぁぁぁ!四菱ケミカルの戦闘狂!!近藤ぉぉぉ!!!』
「近藤さん!楽しもうぜっ!」
「ああ!そのつもりさ!よろしくね!」
2人は漫画にでてくる高校球児のようなセリフを交わし合っていた。
『それではぁぁ!試合スタァァァトッ!!!』
MCの合図と同時にてっちゃんが近藤さんを起点に円を描くように高速で走り出し、投げナイフを投擲していく。
『おっとぉぉ!!てっちゃん十八番の高速投げナイフが炸裂したぞぉ!!!』
そのナイフを近藤さんは盾でガードしながら様子を伺う。
近藤さんがナイフを3本、4本、5本とガードしていくうちにてっちゃんがスピードをどんどん上げる。
すでに一般人は目で追えない速度に到達していた。
そして、近藤さんも負けじと攻撃を仕掛けようとするが全く追いつくことができない状態だ。
『これはぁ!速いぞぉぉ!!!近藤おいつけなぁぁあい!!!』
てっちゃんが速すぎるのだ。
そして、投げナイフが2本同時になりガードが少し不安定になった瞬間、近藤さんがてっちゃんから目を一瞬離してしまった。
フッと気配が消える。まるで煙のように。
『てっちゃんが消えたぞぉぉ!?どこぉぉいったんだァァァ!?』
「どこだっ、、、」
近藤さんが狼狽えキョロキョロあたりを見渡す。
だがもう遅い。背後から紫掛かったバトルナイフが近藤さんの首元へ一閃。
ピッと切り傷が入ってしまった。
『ここでてっちゃんがぁぁ!いきなりぃぃ!!現れたぞぉぉ!!!』
「ぐっ、、な、何だ、これは、、」
近藤さんがいきなり地面に膝を付く。
「ガッ、ハッ、、、」
近藤さんの大きな体が地に吸い込まれると同時に光に包まれ転送されていったのである。
『近藤やられてしまったぁぁぁ!!勝者ァァァ!てっちゃぁぁぁぁぁぁぁんんん!!!!』
『ではぁぁ!参加者の皆様に惜しみない拍手をどうぞぉぉぉぉ!!!!!』
こうして無事、てっちゃんねる武闘大会は大盛況のもと幕を閉じることができたのであった。
武闘大会のてっちゃんとマサトの戦いは相手と力の差があるためエキシビションマッチとして描いているが文章的には盛り上がりにかけるかなと思います。ご了承下さい!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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