99話 てっちゃんねる武闘大会 4
一回戦最後の2人が転送されてくる。
BHBさんはブォンブォン言いながら登場し、完全に戦闘態勢だ。
一方、小川さんはクールな雰囲気を一切崩さない。
『第四試合ぃぃ!!吉木興業からの刺客!!バイク本田バイク!!通称BHBィィィ!!』
BHBさんは芸人でキノコヘアにサングラスをかけていて見た目は派手な格好をしている。
赤と黄色の戦闘服を着ていて、シルバーの薄い金属製プロテクターを付けている。左手には大きな長方形の盾を持っており、その盾にはのぞき穴が付いている。右手には振り回しやすい斧を持っていて、腰には予備のナイフが数本ぶら下がっている。
『日本マテリアルの最終兵器!!小川ぁぁああ!!』
小川さんは、ショートの軽めボブヘア。服装はグレーと黒を基調にしたバトルスーツを着ていて、黒の光沢のあるプロテクターを付けている。武器は手にショートボウを持っていて、背中の矢筒には矢がたくさん詰まっている。腰には予備であろう短剣が3本装備してある。
歓声が、闘技場を揺らした。
『それではぁぁ、第四試合ぃスタァァートォォ!!』
MCの声が会場に響く。
最初に動いたのはBHBさん、大げさなポーズで斧を掲げる。
小川さんは冷静に弦を指で弾き、十分に距離を取りながら様子をうかがっていた。
『まずは静かな立ち上がりかぁぁ!?小川ぁ!!慎重な構えでぇぇす!!!』
小川さんは一切動じず、ただBHBさんの足運びを見続ける。その姿はむしろ誘っているようにさえ見えた。
完全に距離管理してるな、近距離に入る気ゼロなのだろう。
BHBさんは舌を出し、サングラスの奥にギラつく目を光らせる。
「行くぜぇぇヒィーーーヤァ!!!」
BHBさんが唐突に斧を投げた。
甲高い風切り音とともに、斧が一直線に小川さんの額を狙う。
『おっとぉ!!いきなりメイン装備を投げたァァ!!』
小川さんはその一撃を最小限の動きで回避する。
が、次の瞬間。
ヒュンッ!!
投げたはずの斧が、まるでゴム紐に繋がれていたかのように軌道を反転し、BHBさんの手元に戻った。
『なんとぉぉー!!投げた斧が戻ったぞぉぉーー!!何かのスキルかぁぁー!?』
戻ってきた斧をそのままテンポよく投げ直すBHBさん。まるでマシンガンのように投擲が続く。
そのすべてを、小川さんは回避し続ける。
足元の砂を綺麗に弾いたステップで、無駄も焦りも一切見せない。
俺は思わずその綺麗なステップをカメラで撮り続ける。
そしてついに、小川さんが弓を構えた。
『小川ぁぁ!ようやく動くかぁー!?』
シュッ
一本目の矢が鋭く放たれる。
だがBHBさんは左手の長方形の盾で簡単に弾く。
「そんな攻撃効くかぁぁ!」
小川さんは淡々と二本目を矢を準備しながら、ぼそりと呟いた。
「風魔法」
その瞬間、空気がざわりと揺れた。
そして、小川さんはすぐに矢を放つ。
『矢が凄い勢いで回っているーーッ!?何だこの勢いはァァァァ!!』
キュルルルルッッ!!
回転力を増した矢が盾に直撃。
金属が悲鳴を上げ、BHBさんごと大きく押し返した。
「ぐっ、、お、おいおい威力上がりすぎだろぉ!」
盾は割れなかったが、BHBさんの腕が大きく痺れたのが遠目でもわかった。
そして三本目。
小川さんは無言で弦を引く。
放たれた矢はなぜかBHBさんの横を素通りした。
『外したァァ!?いや違うッ!!風がぁ!、、風が矢を曲げているぞぉぉ!!』
矢は弧を描き、背後へと回り込む。
「はあ?後ろからぁ!?」
BHBさんが振り返った瞬間、、、
ズブッ。
風魔法の矢が囮となり、BHBさんの振り返ったその後頭部に四本目の矢が深々と刺さった。
そのすぐ後に風魔法の矢も体に到達し、突き刺さったのだった。
BHBさんは矢が突き刺さった瞬間に光に包まれ転送されていった。
『決まったぁぁぁあ!! 勝者ぁぁ!日本マテリアルの最終兵器ぃぃ!!小川ぁぁぁ!!』
観客席が爆発したような歓声に包まれる。
小川さんの攻撃回数はたった4回。でもその4本の矢で戦場の空気を全部支配した。
BHBさんの荒々しい斧の狂気を、読み切り、いなし、射抜く。まさに最終兵器の名にふさわしい勝ち方だったな。すげぇ。
そして、次は準決勝の試合が始まる。
サラちゃんと近藤さんが転送されてくる。
『準決勝ぉぉ!!!第一試合はぁぁ!この二人ぃぃ!!!鮮血の乙女!サラちゃぁぁぁん!!!対するは四菱ケミカルが誇る戦闘狂ぉぉ!近藤ぉぉ!!!』
2人は武器を構えるとピンと空気が張り詰める。
『試合スタァァァトォォォオォオ!!』
MCの声が響いた瞬間、空気が爆ぜた。
『おっと!いきなりサラちゃぁぁん一気に間合いを詰めたぁぁ!』
視界からサラちゃんの姿が一瞬消え、次の瞬間には近藤さんの懐へ滑り込んでいた。
「来いっ!」
近藤さんの低い唸り声と同時に、鋼がぶつかる乾いた衝撃音。
サラちゃんの剣術による高速攻撃を近藤さんは盾で正確に受け止めていた。
この人たち、やっぱりどっちも戦闘狂な気がする。
『サラちゃぁぁん!連撃っ!近藤ぉぉ!わずかに体勢がぁっ!!』
MCが言い切る前に、近藤さんが盾で押し返し、できた距離を生かしてハンマーをブンッと大きく振り回す。
その一撃は空気を裂き、地面すら揺らすほどの重量感があった。
『おっとぉ!近藤の重い一撃がぁぁ全て回避されているぅぅ!これはサラちゃぁぁん!ヒット&アウェー戦法かぁぁ!!』
サラちゃんは斬っては離れ、離れては斬り込み、残像を残しながら戦場を縦横無尽に駆ける。
近藤さんはたまらずバトルナイフも使い応戦していく。
鋭く突き出したバトルナイフは、サラちゃんの力によって軽くいなされ、軌道を弾かれる。
近藤さんの強化された筋力で暴風のように連撃を放ち始めた。盾で押し、ハンマーで叩き、短剣で刺す、文字通りの三段攻めだ。
だが、サラちゃんは全てを読んでいるように見える。
『サラちゃぁぁん!動きを正確に捉えている模様!これは近藤おぉ!追いつけないっ!!』
そして、、、
近藤さんの連撃が一瞬だけ途切れた。
息がわずかに乱れ、足が少しだけ遅れた。
もちろん、サラちゃんが見逃すわけがない。
サラちゃんは刀を高速で鞘にしまい、また引き抜く。
『サラちゃぁぁん!抜刀ッ!!』
鞘から閃光のような一太刀。
次の瞬間、ハンマーを握っていた近藤さんの腕が宙を舞った。
「っ!!」
近藤さんの体が淡く包まれる。
『勝者ぁぁーっ!!サラちゃぁぁん!!』
戦場に立っているのは興奮で頬が少し紅潮しており、戦い足りないと言わんばかりの気迫を放っている鮮血の乙女だった。
いや、怖ぇよこの子。強すぎる。
そして、準決勝最後は聖夜くんと小川さんだ。
2人が転送されてくると、聖夜くんは口笛を吹いていて、小川さんは無言。
『さぁ!準決勝ぉ!第二試合はぁぁ!暗黒騎士団のぉぉ聖夜ぁぁ!!!対するはぁぁ!日本マテリアルの最終兵器ぃ小川ぁぁ!!!』
2人は武器を構える。
『試合ぃぃスタァァトォーーーッ!!』
聖夜くんと小川さんはまずは両者、慎重に距離を測っている。
2人とも円の外側をなぞるようにゆっくり動き、互いに不用意な踏み込みを避けていた。
俺の視点から見ても、これは当然だ。
小川さんは弓、近づかれた瞬間に短剣では分が悪い。
逆に聖夜くんは、一撃の破壊力はあるが距離を縮める必要がある。
小川さんもそこはさすがで、常に後方に下がりつつ間合いを維持している。
『おっとぉぉ!小川ぁ!矢の回転を強化した高速の矢が放たれたぁぁー!!』
小川さんから放たれた矢は、高速回転し、風を纏いながら加速した。
普通なら避けるか、受け流すのが精一杯の一射だが、、、
『聖夜ぁぁ!大剣で一刀両断だぁぁ!』
MCが声を張る。
実際、聖夜くんは重そうな大剣を片手の勢いで振り抜き、迫る矢を斬り落としている。
しかし状況は膠着していた。
小川さんは距離維持、聖夜くんは距離を詰めたい。
矢も影も決め手に欠け、戦局は動かない、、、そう見えた、その時。
「、、、影魔法」
聖夜くんが、ほんの小さく呟いた。
それが、合図だった。
『んん?聖夜ぁぁ!!何か仕掛ける気配を感じますが、、、』
MCの声が終わるより先に、聖夜くんが一歩踏み込み大剣を投げた。
「なっ、大剣を投げたッ!?」
俺は思わずまで声がでてしまった。
聖夜くんが持つ唯一の武器。
その質量を、全身の筋力で振り抜くようにして投げつけたのだ。
放たれた大剣は空気を裂き、唸り音を上げながら一直線に小川さんへ向かう。
「なにっ!?」
小川さんは驚きながらも即座に回避動作に入った。
その判断は正しい。
だが、、、ほんの一瞬、視界から聖夜くんの姿が消えた。
俺の脳裏で予想が形になる。
大剣が作った影の下から、黒い煙のように聖夜くんが飛び出した。
そして、
そのまま空中で大剣を掴み直し、勢いを乗せたまま横薙ぎに振り抜く。
「しまッ、、、!」
小川さんの口がわずかに動く。
だが、もう遅い。
鋭い衝撃音が場内に響いた。
次の瞬間、小川さんの腕が宙を舞い、遅れて光に包まれていく。
『腕を切断っ!勝者ぁぁ!聖夜ぁぁぁ!!』
MCの声が響く中、戦場にはまだほんのわずかに影の揺らぎが残っていた。
俺は、自分たち以外の戦闘を実際に見て、興奮と期待を覚えていたのだった。
BHBのスキル
盾術C 斧術C 投擲C リターンC
小川のスキル
弓術B 短剣術D 命中率向上D 風魔法C 回避C
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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