表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/63

ep.48『I Was Made For Loving You』

礼堂:「うーむ……紗和さんは違うって言ってたなぁ。」


冬月はソファに深く腰を下ろし、肘掛けを指でトントンと叩く。

冬月:「まぁ、嘘だとしても、そう言うっしょ?」


礼堂:「疑ってんのかよ。野田さんに裏取ってみる?」


冬月:「いや……まぁ、やっぱ俺の見間違いかもしれないな。逆に考えたらさぁ、紗和さんみたいな美人が他にも存在してるってことだろ? それはそれで、まぁいいってことよ。」


礼堂:「ポジティブだね〜冬月くん。」


冬月は鼻で笑い、背もたれに頭を預けた。

冬月:「まぁな。中々真相に辿り着けないし、何事もポジティブに捉えるしかないよ。……やめだやめだ! 話変えるけど、最近ドラマ観てんだよね。平成ドラマ!」


礼堂:「いいよな〜。平成ドラマ。何観てんの?」


冬月:「『やまとなでしこ』です! やっぱこの時の松嶋菜々子、めっちゃ可愛いよな〜!今もだけど!」


礼堂:「いや、俺はGTOの冬月先生派だから。」


冬月:「あ〜、俺どっちも派。」


礼堂:「なんだよ“どっちも派”って。それずるくない?」


そんな他愛もない話で、2人はしばし事件のことを忘れ、笑いながら雑談に耽った。

やがて、冬月のまぶたがゆっくりと降りていく。


礼堂:「ったく、急に寝るなよ。」


礼堂はため息をつき、USBから取り出したボウの新曲データを再生する。

アコースティックギターの音が部屋に満ち、礼堂は目を閉じた。

これまでの事件を一から頭の中で思い出していくうちに、意識は徐々に遠のいていく。


――夢の中。

そこはジャンク・バスターズのライブ会場だった。

激しい照明、観客のうねり、ボウの熱くも切ない歌声。

その一つひとつが、バンドの本当の姿と、彼らがどれほど人々を熱狂させてきたかを鮮やかに見せてくる。


やがて、会場のどこからか名前を呼ぶ声が響く。

「おい! 礼堂! おーい! 起きろ! 起きろー!」


礼堂:「んっ……う……ん?」


目を開けると、冬月が覗き込んでいた。

冬月:「おーい。何寝てんだよ。」


礼堂:「なんだよ……せっかくいい夢見てたってのに。」


冬月:「どんな夢見てたんだ〜? まあいいけどさ。……ところで、一つ分かったことがある!」


礼堂:「えっ? 分かったこと?」


冬月は身を乗り出し、声を低くした。

冬月:「あぁ。さっき俺も寝ながら夢見ててさ、その中でボウさんの新曲が急に流れてきたんだよ。」


礼堂:(……俺が再生したからかな。)


冬月:「んで、起きたらお前寝てたからさ、秀治さんが撮影したジャンク・バスターズのライブ映像でも観ようと思って。ていうか観たくなったんだよね。」


礼堂:(……お前のせいか、あの夢は。)


冬月:「それ観てたら分かったんだよ!!」


礼堂:「え? 何が?」


冬月は真剣な顔で指を立てた。

冬月:「分かったってかさ……いたんだよ! 『やまとなでしこ』が!」


礼堂:「……は?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ