ep.48『I Was Made For Loving You』
礼堂:「うーむ……紗和さんは違うって言ってたなぁ。」
冬月はソファに深く腰を下ろし、肘掛けを指でトントンと叩く。
冬月:「まぁ、嘘だとしても、そう言うっしょ?」
礼堂:「疑ってんのかよ。野田さんに裏取ってみる?」
冬月:「いや……まぁ、やっぱ俺の見間違いかもしれないな。逆に考えたらさぁ、紗和さんみたいな美人が他にも存在してるってことだろ? それはそれで、まぁいいってことよ。」
礼堂:「ポジティブだね〜冬月くん。」
冬月は鼻で笑い、背もたれに頭を預けた。
冬月:「まぁな。中々真相に辿り着けないし、何事もポジティブに捉えるしかないよ。……やめだやめだ! 話変えるけど、最近ドラマ観てんだよね。平成ドラマ!」
礼堂:「いいよな〜。平成ドラマ。何観てんの?」
冬月:「『やまとなでしこ』です! やっぱこの時の松嶋菜々子、めっちゃ可愛いよな〜!今もだけど!」
礼堂:「いや、俺はGTOの冬月先生派だから。」
冬月:「あ〜、俺どっちも派。」
礼堂:「なんだよ“どっちも派”って。それずるくない?」
そんな他愛もない話で、2人はしばし事件のことを忘れ、笑いながら雑談に耽った。
やがて、冬月のまぶたがゆっくりと降りていく。
礼堂:「ったく、急に寝るなよ。」
礼堂はため息をつき、USBから取り出したボウの新曲データを再生する。
アコースティックギターの音が部屋に満ち、礼堂は目を閉じた。
これまでの事件を一から頭の中で思い出していくうちに、意識は徐々に遠のいていく。
――夢の中。
そこはジャンク・バスターズのライブ会場だった。
激しい照明、観客のうねり、ボウの熱くも切ない歌声。
その一つひとつが、バンドの本当の姿と、彼らがどれほど人々を熱狂させてきたかを鮮やかに見せてくる。
やがて、会場のどこからか名前を呼ぶ声が響く。
「おい! 礼堂! おーい! 起きろ! 起きろー!」
礼堂:「んっ……う……ん?」
目を開けると、冬月が覗き込んでいた。
冬月:「おーい。何寝てんだよ。」
礼堂:「なんだよ……せっかくいい夢見てたってのに。」
冬月:「どんな夢見てたんだ〜? まあいいけどさ。……ところで、一つ分かったことがある!」
礼堂:「えっ? 分かったこと?」
冬月は身を乗り出し、声を低くした。
冬月:「あぁ。さっき俺も寝ながら夢見ててさ、その中でボウさんの新曲が急に流れてきたんだよ。」
礼堂:(……俺が再生したからかな。)
冬月:「んで、起きたらお前寝てたからさ、秀治さんが撮影したジャンク・バスターズのライブ映像でも観ようと思って。ていうか観たくなったんだよね。」
礼堂:(……お前のせいか、あの夢は。)
冬月:「それ観てたら分かったんだよ!!」
礼堂:「え? 何が?」
冬月は真剣な顔で指を立てた。
冬月:「分かったってかさ……いたんだよ! 『やまとなでしこ』が!」
礼堂:「……は?」




