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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います  作者: よっしゃあっ!


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28.学生と避難民


 うわぁー……。

 また面倒な連中が居たよ。

 俺は心の中で溜息をつく。

 駐車場の隅に身をひそめながら、様子を窺う。


 逃げてきた人が全部で十二人か。

 中高年が殆どだな。

 対する学生は、全部で五人だ。

 いかにも不良ですって感じの外見。

 彼らは鉄パイプやサバイバルナイフを手に持ち、避難してきた人たちを威圧している。


 ……ホームセンターの中にも、人が居るな。

 少なくとも、四人。

 ちょっと距離が離れてるし、今の『索敵』のレベルじゃ、ホームセンター全域はカバーしきれないが、少なくともホームセンターの中にも、彼らの仲間は居るようだ。 

 『聞き耳』スキルを使い、彼らの会話を聞き取る。


「ここは俺たちが先に占拠したんだ。他を当たれ!」


「そ、そんな事を言わずに、どうか入れて下さい。せめて子供たちだけでも……」


「そんな余裕ねーんだよ、自分達で何とかしろ。クソが」


「お願いします、なにとぞお願いします」


 そんな感じの会話がずっと繰り返されてる。

 さて、どうするかなー。

 とりあえず、そっとしておくのが一番だよな。

 俺が関わるメリットないし。

 つーか下手に首突っ込んで、厄介事をしょい込むのは勘弁願いたい。


 あんまり避難民たちがしつこいのか、中から一人の学生が出てきた。

 見た目はチャラいが、下品な感じじゃない。

 そういうファッションだと納得できてしまう雰囲気の学生。

 入口に居た不良たちが驚いてるし、多分彼らのリーダーなのだろう。


「この騒ぎは何だ?」


「に、西野さん。こいつらが―――」


 入口に居た学生たちは、西野と呼ばれた学生に事情を説明する。

 避難民たちも、話の出来そうな若者の登場に安堵の表情を浮かべる。

 一通り聞いた後、彼は避難民たちの前に出た。


「……話は聞かせてもらいました。結論から申し上げますと、我々は貴方達を受け入れる事は出来ません」


「そ、そんな―――」


 避難民たちの顔に絶望が宿る。


「ですが、条件付きでなら我々の仲間に加える事もやぶさかではありません」


 条件……?

 可愛い女の子だけとか?

 そんな下種な考えが頭をよぎるが、彼は全く別の事を口にした。


「この中にモンスターを殺した経験のある者は居ますか?居るのならば、仲間に加えます」


 ……なんだと?

 その条件に、避難民たちは戸惑う。


「……居ない様ですね。では、今からでもいい。一匹でもモンスターを殺してきてください。もちろん全員です。そうすれば、我々は貴方方を受け入れてもいい」 


 避難してきた人たちは何を訳の分からない事を言っているんだと叫んでいるが、俺には分かる。

 モンスターを殺す。それが何を意味するのか。

 

「……あの学生たち、スキル持ちか」


 レベルがどの程度かは分からないが、多少なりともモンスターと戦える力があるのだろう。

 その上で、拠点となる場所に此処ホームセンターを選んだのなら、堅実な選択だ。ここなら武器や食料に困らないしな。


「今の世界では、モンスターを殺せばレベルが上がり、スキルや職業というモンスターと戦う力が手に入ります。これは、この二日間、僕達が命がけで検証して得た事実です。貴方方が『助け合い』を主張するならば、我々も『見返り』が欲しい。『戦力』という名の見返りが」


 へぇ、意外だな。

 ああやって情報や条件をちゃんと提示するなんて。

 見た目の割には、彼らの主張は結構まともじゃないか。

 だが逃げてきた人たちは、彼の話が信じられなかったらしい。

 「何を訳の分からない事を言ってるんだ、この人でなし」だの、「スキルやレベルだなんて、これはゲームじゃないのよ!ふざけた事言ってんじゃないわよ!」、「現実が見えてないんじゃないのか!」とか叫んでいる。


 おいおい……。

 アンタらの方が、よっぽど現実が見えてないぞ。


 というか、ただ『逃げてただけ』のアンタらに、彼らを非難する権利なんてないよ。曲がりなりにも、『モンスターと戦い、この世界の情報を得た』彼らの方がよっぽど立派だ。

 救援が来るかどうかわからないこの状況じゃ、食料だって限りある資源。

 誰だってこんな状況じゃ自分や自分の親しい人を優先するだろう。

 ましてや足手まといを抱えながら生き延びるなど、まず不可能。

 だから、条件を提示し、その上でなら仲間にすると言っている。

 彼らの主張は、至極まともだ。


 だが、避難してきた人たちにとっては理解出来なかったらしい。

 叫んでも効果が無いと分かったのか、おっさんの一人が土下座を始めた。

「お願いします!お願いします!どうか助けて下さい」

 地面に頭を擦り付けて、学生たちの足に縋り始めている。

 その行動に、流石の学生たちもたじろぎ始めた。


「は、離れて下さい!そんな事をしても我々は―――」

「お願いします!お願いします!お願いします!」


 ……本当に『面倒』だよな、ああいう連中って。

 自分からは動こうとしない、他人が何とかしてくれると思ってる。

 泣いてすがれば、それで済むと思ってる。

 ぜってー関わりたくないわ。


「……とりあえず、ホームセンターは後回しだな」


 先にドラッグストアやほかの店に行ってみるか。

 踵を返し、俺とモモはその場を後にした。

 果たして、あの学生たちは、きちんと『切り捨てる事』が出来るのかね?

 まだ聴こえてくる叫び声を聞きながら、俺はちょっとそんな事を思った。

 

 


 ドラッグストアはホームセンターの直ぐ近くにある。

 近づくと『索敵』に反応があった。

 

「こっちにも人が居るか……」


 ドラッグストアの中には数名の男達が居て、中の物を物色していた。

 学生服を着ているところを見ると、ホームセンターに居た奴らの仲間か。

 『潜伏』を使い、しばらく様子を窺っていると、彼らは抱えられるだけの荷物を持って去っていった。

 アイテムボックスは持ってないんだな。


「よし、行くか」


「わん」


 彼らが居なくなったのを見計らって、俺とモモはドラッグストアに入る。

 結構まだ残ってるな。

 医薬品の棚も、手前の方だけが乱雑に抜き取られて、奥に残っている物も多かった。

 風邪薬に痛み止め、包帯やガーゼなんかもある。


 さて、ちゃっちゃと収納しちゃいますかね。

 LV9まで上がったアイテムボックスの効果を発揮する時が来たぜ。

 

 俺が頭の中で『収納』と念じると、目の前にあった医薬品が収納された。


 これが新たに追加された性能。

 直接手で触れなくとも、視覚で捉えた物を、アイテムボックスに収納できるようになったのだ。

 同時に最大十個まで収納可能。可能範囲は最大で五メートル程。

 凄まじい性能である。

 このおかげで、火事場泥棒をする時間が大幅に短縮出来るようになった。

 片っ端からアイテムボックスに収納し、ほんの数分で店内の商品は全て空になった。


 レベルが上がり、アイテムボックス自体の収納量も上ってる。

 リストを開いてみると、凄まじい量になっていた。

 でも、これだけ収納してもまだ限界が来ないんだよな。

 せっかくだし、他の場所にも行くか。


 その後も、ホームセンターの周辺にあるスーパーや飯屋などを回り、片っ端からアイテムボックスに収納していった。

 無論。アイテムボックス様は、全てきちんと収納してくれた。

 ホント便利。神かよ。


 次のレベルアップでも確実にアイテムボックスのレベルをあげよう。

 そうすれば大台のLV10だ。

 恐らく、待ちに待った「保存機能」も追加されると予想している。

 そうなれば、この世界での食糧問題については、ほぼ解決する。

 ああ、楽しみだ。

 俺とモモは夢中で店を巡り、ホームセンターに戻るころにはすっかり日が傾きかけていた。

 



「……さて、連中はどうなったかな?」


 戻ってみると、ホームセンターの入口の人だかりは無くなっていた。

 一応、見張り役の男子生徒が三名ほど残っている。


 どれどれ……。

 もう少しばかり接近し、ホームセンター全体を『索敵』の範囲内にする。

 これは―――ああ、そうか。


「結局、受け入れちゃったのか……」


 ホームセンターの内部には、かなり多くの人の気配が感じられた。

 それも、先程感じたのと同じ気配。

 つまり、彼らはあの避難民を受け入れたのだ。

 別に俺がとやかく言う権利はないけど、大丈夫なのかね?

 もしくは、これから無理やりにでもレベルをあげさせるつもりなのか。

 ま、どっちでもいいけど。


「さて……どっからか侵入出来ないかな」


 別に俺はホームセンターの物資を諦めた訳じゃない。

 それに彼らのレベルや持ってる情報がどの程度なのかも気になる。


「裏側からならいけそうだな」


 さて、いってみるとしますか。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 子どもがいくつくらいか判らんけど、例えば園児にもレベルアップしろって言ってんのかな? 流石にそれは…って思うけど。
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