200.最上級職
会議室での話し合いを終え、俺たちは拠点へ戻ってきた。
リビングのソファに腰かけ、アイテムボックスから取り出したお茶で喉を潤す。
最初に口を開いたのは、やはりというか西野君だった。
「とんでもない事になりましたね……」
「ええ。リベルさん――異世界人が現れたと言うだけでも驚きなのに、それ以上にここまで事態が深刻だったとは思いませんでした」
彼女の言葉が真実なら、モンスターと戦うだけだった今の状況すら生ぬるいと思えてしまう。
相手は自分達と同じ人間で、自分達よりも高いスキルを保持した上位の存在。
化け物と戦っていたら、一番怖いのは人間だったなんて、物語じゃお約束だけど、いざ自分の身に降りかかると、最悪だなホント。
「でもよぉ、西野さん。そのリベルっつー女の事、素直に信じていいんっすか?」
「どうしてだ、柴田?」
「だって……なんか変じゃありませんか? その女も異世界人なんっすよね? なのに俺たちに味方して、それに敵の情報や出現位置とか色々、なんと言うか……その、俺たちに都合がよすぎるっつーか……。いや、本当だとしてもスゲーヤバい状況なのには変わりねーんっすけど……」
柴田君も言葉を選びながら、自分の考えを話す。
西野君は手に持ったペットボトルを見つめながら、
「彼女には何か裏がある。そう言いたいのか?」
「っす……」
柴田君は頷く。
「……そうだな。確かに、彼女の言葉を鵜呑みにするのは危険だ。だが彼女の情報は無視できないし、ましてや敵対するなんて絶対に出来ない」
「どういう事っすか?」
「これを見ろ」
西野君は懐から一枚の紙を取り出す。
俺が渡したリベルさんのステータスが記された用紙だ。
それを見た柴田君が絶句する。
リベル・レーベンヘルツ
超越者LV44
HP :3800/3800
MP :52500/52500
力 :520
耐久 :890
敏捷 :900
器用 :4550
魔力 :9900
対魔力:8200
SP :0
JP :0
固有スキル
死王
神聖領域
神威
スキル
高速演算LV10、集中LV10、並列思考LV10、高速詠唱LV10、詠唱強化LV10、魔術威力上昇LV10、魔力強化LV10、魔力大強化LV10、魔力超絶強化LV10、対魔力強化LV10、対魔力大強化LV10、対魔力超絶強化LV10、火炎魔術LV10、氷結魔術LV10、大地魔術LV10、豪風魔術LV10、暗黒魔術LV10、聖光魔術LV10、結界LV10、召喚LV10、妨害LV10、空間魔術LV10、HP自動回復LV7、MP自動回復LV10、MP消費軽減LV10、肉体活性LV5、打撃耐性LV8、衝撃耐性LV9、斬撃耐性LV7、肉体異常耐性LV8、精神苦痛耐性LV8、確率補正LV7、抵抗LV6、索敵LV6、鑑定妨害LV10
全てのステータスが高い数値を誇っているが、その中でもMPと魔力、対魔力が突出して高い。五万越えなんて初めて見た。
スキルも魔術関連のものが多く、その殆どがLV10。
三つの固有スキルも、質問権で調べてみた結果、とんでもない効果だった。
『死王』
六王スキルの一角。
この世で最も優れた魔術を行使する者に与えられる。
魔術系のスキルを発動する際、莫大な補正が掛かる。
敷かれた理に背き、やがて運命を打ち砕く存在となるだろう。
『神聖領域』
神聖領域を作り出す。
領域内では自身のステータス及び、スキルの効果が倍増する。
また領域内に居る敵に複数の『弱化』を与える。弱化状態は神域内では解除できない。
『神威』
神の威光を模した剣を作り出す。
その剣で斬られた対象の『スキル』をランダムで一つ使用不可能にする。重複ストック可能。
使用不可能になったスキルは使用者が解除するまで使用できない。
複数の対象には使用できない。
正直、でたらめにも程があると思う。
どのスキルも超高性能な上、俺の『影真似』や『破城鎚』と違って、リスクが殆ど無い。
加えて『賢者の杖』という破格の武器まで持っている。
異世界人ってのはどいつもこいつもこんな化け物ばかりなのだろうか?
(しかも彼女は『鑑定妨害』を持っていながらも、あえてステータスを俺たちに見せた)
武装も未だに俺のアイテムボックスに入っている。
それでも、彼女に勝てるとは思えない。
というか、絶対敵対したくない相手だ。
「……モモたちはどう思う?」
「くぅーん?」
ひょこっと影から出てきたモモは、そのまま俺の膝の上に乗っかる。
うん、可愛い。体を撫でながら問いかけると、
「……わふん」
「きゅー」
「……(ふるふる)」
あのひとにがてだけど、多分だいじょうぶーと言っているようだ。
ちなみにシロは『よくわかんなーい』と言って、再びフードの中で寝息を立てている。
呑気だなぁ。というか、そろそろソラの元に帰してやんないと、後が怖いんだよな。
アイツ、シロが自分より俺に懐いてるの見るとめっちゃ不機嫌になるし。
「まあ、どの道、やるべき事は今までとそう変わりませんよ。自分達と『安全地帯』のレベルを上げる。活動範囲を広げ、他の戦力になりそうな人たちを集める。非戦闘員には生産系の職業を選んでもらい、食料や物資の確保をする。どれも今までやってきた事と一緒です」
ただしのんびりはしていられない。
本当に半年後に異世界人の先遣隊が来るのであれば、行動は迅速に行うべきだ。
「そう言う事だ、柴田。それにどの道、彼女が何を企んでいようが、俺たちがそれを防げるだけの強さを身に付ければいい。そうだろ?」
「そうっすね……。うん、その通りっす」
柴田君は頷きながら拳を握りしめる。
六花ちゃんや大野君も頷く。
「とりあえず当面の目標は、西野君たち全員の進化ですかね」
「ですね。とはいえ、この周辺のモンスターはペオニーが食い尽くしたようですし、少々遠征する必要がありますが……」
「俺とソラが先行して、アカの『座標』を設置しておきますよ」
「すいません、助かります」
ソラの飛行能力があれば、活動範囲を一気に広げられる。
加えてアカの座標を設置しておけば、一度行った場所への移動時間もぐんと短くなる。
「でもまあ、今日はもう遅いですし、一晩休んで明日から行動を始めましょう」
「ええ、そうしましょう」
さて、話もまとまったようだし、俺も自分のすべきことをしよう。
そう、リベルさんの登場ですっかり中断されたステ振りだ。
西野君たちと別れた俺は自分の部屋に戻り、ステータスを開く。
あの時は、リベルさんの登場で邪魔されてしまったが、今度は大丈夫だろう。
さて、どう振り分けるか……。
「ステ振りですか?」
「ぬぉっ!?」
ひょこっと後ろから顔を出した一之瀬さんに俺は面食らう。
「びっくりした。『認識阻害』をしながら、付いてくるのはやめて下さいよ……」
心臓に悪いわ。背後霊かと思ったよ。
一之瀬さんはにやりと笑い、
「ふふふ、癖になってるんですよ。気配を殺しながら歩くのが」
「どこぞの殺し屋家族の天才児みたいなセリフは止めて下さい。というか、何故ここに?」
一之瀬さんはちょこんと俺のベットに腰かける。
そしておもむろに前髪をいじりながら、
「いや、その、えーっとですね、私もレベルアップのステ振りがまだだったので、一緒にしようかなと思いまして、はい……」
「ああ、成程。それじゃあ、一緒にやりましょうか」
「ですです」
凄く嬉しそうな一之瀬さん。
俺も床に座ると、何故か一之瀬さんもベッドから降りて、俺の隣に移動した。
「……?」
あの、なんか妙に距離が近くないですか?
流石にちょっとドキドキしちゃうんですけど。
ちらりと目を向ければ、
「……ぁう」
真っ赤である。
いや、自分でやっておいて照れないでよ。
こっちまで恥ずかしくなってくるじゃんか。
「……わふん」
するとモモが何故か呆れた様なため息をつきながら、膝の上に乗っかった。
尻尾を振りながら、早く撫でろといってるようだ。
モフモフしながら、精神を落ち着かせる。
よし、大丈夫。
「……ステータスオープン」
クドウ カズト
新人レベル16
HP :912/912
MP :422/422
力 :489
耐久 :506
敏捷 :1023
器用 :1002
魔力 :185
対魔力:185
SP :262
JP :133
職業
忍頭LV3
追跡者LV3
漆黒奏者LV3
修行僧LV4
固有スキル
早熟
職業強化
英雄賛歌
スキル
上級忍術LV10、HP変換LV5、MP消費削減LV5、忍具作成LV5、投擲LV6、無臭LV7、無音動作LV7、隠蔽LV6、暗視LV5、急所突きLV6、気配遮断LV7、鑑定妨害LV7、追跡LV4、地形把握LV9、広範囲索敵LV7、望遠LV4、敏捷強化LV8、器用強化LV5、観察LV10、聞き耳LV4、絶影LV6、影真似LV5、影檻LV5、忍耐LV6、渾身LV6、HP自動回復LV5、MP自動回復LV6、身体能力向上LV7、剣術LV6、毒耐性LV1、麻痺耐性LV2、ウイルス耐性LV1、熱耐性LV3、危険回避LV5、騎乗LV4、交渉術LV1、逃走LV4、防衛本能LV1、アイテムボックスLV10、メールLV2、集中LV8、予測LV7、怒りLV5、精神苦痛耐性LV8、演技LV4、演算加速LV5、威圧LV3
パーティーメンバー
モモ 暗黒犬 Lv10
アカ クリエイト・スライムLV11
イチノセ ナツ 新人LV9
キキ カーバンクルLV9
ソラ エンシェントドラゴンLV2
シロ リトル・ホワイトドラゴンLV1
さて、ペオニー戦で獲得した大量のSPとJP。
改めて見ると凄い量だよなぁ。
これをどう割り振るべきか……。
まずは『HP変換』、『MP消費削減』、『忍具作成』をそれぞれLV8まで上げる。
職業の『忍頭』をLV10まで上げる。
これで職業がカンストするし、LV6、9に上がる段階で付随スキルのレベルも一つ上がるので、SP消費を抑えて、一気にLV10まで上げる事が出来る。
≪忍頭のLVが上限に達しました≫
≪上位職及び派生職が選択可能です≫
≪最上級職『忍神』が解放されました≫
≪職業における一定条件を満たしました≫
≪派生職『黙劇者』が解放されました≫
≪派生職『竜騎士』が解放されました≫
≪派生職『伐採者』が解放されました≫
≪派生職『農家』が解放されました≫
≪派生職『守護者』が解放されました≫
おお、遂に最上級職の登場か。
『忍神』ね。
忍ぶ気配は一切なさそうだけど、間違いなく強力な職業なんだろう。
それに新たな派生職も多い。
『黙劇者』ってのは、パントマイマーの事かな?
それに『竜騎士』に『伐採者』……この辺は間違いなくソラやペオニーの影響だろうな。
……でも『農家』? 今更農家って……。いや、生産系としては確かに良さ気な職業だけどさ。
『守護者』ってのはちょっと気になるな。
後で質問権で調べてみるか。
すると、再び頭の中に声が響いた。
≪一定条件を満たしました≫
≪カオス・フロンティアにおける最初の最上級職の発現を確認≫
≪特典ボーナスが与えられます≫
≪スキル『勤勉』を獲得しました≫
≪効果の重複を確認≫
≪スキル『職業強化』は『勤勉』に統合されます≫
……何だと? 特典ボーナス?
急いでステータスを確認すれば、固有スキルの欄に『勤勉』というスキルが追加されていた。
「どうしたんですか、クドウさん?」
「いえ、どうやら新しい固有スキルを獲得したみたいです」
「マジですか?」
「マジです」
早速『質問権』で調べてみる。
『勤勉』
最初に最上級職を解放した者に与えられるスキル。
職業スキルの効果に莫大な補正が掛かる。
複数の職業スキルを同時に発動させればするほど、お互いの効果は相乗される。
「おぉぅ……」
こりゃまたかなり強力なスキルだ。『職業強化』の完全上位互換だな。
ぶっちゃけ相手が強すぎて、いまいち存在感の無かった『職業強化』だったが、これからはもっと活躍してくれるだろう。……統合されちゃったけど。
試すのが楽しみだな。
「凄いです。チート野郎に磨きがかかりましたよ、クドウさんっ」
「あっはっは、もう少し良い褒め方があるでしょうと言いたいですが、素直に受け取っておきます。ありがとうございます、一之瀬さん」
「ですです、おめでとうございます」
「わんっ」
やったぜ、と二人でハイタッチ。
モモもおめでとうと、ほっぺを舐めてくる。モフモフ。
さて、残りのSPは199ポイント、JPは84ポイント。
(『忍神』への変更に必要なポイントは1ポイントか……)
ポイントが節約できる新人の恩恵は大きいね。
質問権で『忍神』について調べてみる。
『忍神』
隠密系の最上級職。
最上級職は各系統ごとに一人しか就く事が出来ない。
暗殺と忍術を極め、強力なスキルを数多く行使できる。
環境が夕方、夜、暗闇であれば全てのステータスが大幅アップ。
MP、敏捷、器用、魔力に大補正。
へぇ、夜だと戦闘力がアップするのか。その辺も今までの職業とは違うな。
てか、最上級職って一人しか成れないのか。
忍神が隠密系の最上級職って事は、戦士系とか魔術系とかも最上級職があるって事だよな。
でも『勤勉』の取得条件からすると、俺以外の最上級職を持ってる人は居ないって事か。
他の最上級職がどんなのかも気になるなぁ。
(あれ……? そう言えば、リベルさんは固有スキルは持ってたけど、『職業』欄は無かったよな? どうしてだ? 異世界人だからか?)
まあ、いいか。
とりあえず『忍神』へ職業を変更しよう。
イエスを選択すると、アナウンスが流れる。
≪忍頭が最上級職『忍神』へと変更されました≫
≪職業が『忍神』となりました。スキル『超級忍術』を獲得しました。スキル『超級忍具作成』を獲得しました。スキル『落日領域』を獲得しました。スキル『疾風走破』を獲得しました≫
≪スキル上級忍術は超級忍術に統合されます≫
≪スキル超級忍術がLV1から3に上がりました≫
≪スキル忍具作成は超級忍具作成に統合されます≫
≪スキル超級忍具作成がLV1から3に上がりました≫
『超級忍術』と『超級忍具作成』は、それぞれのスキルの上位版だな。
……統合されるなら、忍具作成を上げる必要は無かったか?
いや、LVがカンストしてないと、上位スキルが出ない可能性もあったし、無駄ではなかったか。
それに他の二つのスキルも強力なスキルだ。
『落日領域』
落日領域を作り出す。
自身を中心に半径十キロを『夜』に変化させる。
領域内では、パーティーメンバーに『暗視』スキルが付与され、『影』、『闇』のスキルが大幅に強化される。
『疾風走破』
どのような地形、環境であっても、平地と変わらず移動することが出来る。
移動状態で忍術スキルを発動する際、威力、命中率が上昇する。
移動状態で忍具を使用する際、威力、命中率が上昇する。
『落日領域』の効果は凄まじいな……。
強制的に夜に出来るってだけでも凄いのに、ちゃんとパーティーメンバーへのフォローまでしてくれる。モモとのコンボもより強大なものになるだろう。
しかし名前の響きが、リベルさんの『神聖領域』に似てるな。
もしかして同系統のスキルなのか?
『疾風走破』もかなり強力なスキルだ。
壁や水面をMP消費無しで移動できる上、移動中のスキルの効果増幅までついてくる。
一見地味だけど相当使えるスキルなのは間違いない。
スキルの検証が楽しみだ。
(さて、他の職業も上げたいけど、今回はこっちも取得するとしようかな)
ずっと保留にしていた第五職業。
今回は、それも取得したいと思う。
今までのステ振りから考えるに、今回の派生職は先ほど表示されたモノで全て。
『追跡者』や『漆黒奏者』をカンストさせても、別の派生職は出てこないだろう。
というわけで、候補は以下の通り。
市民、冒険者、事務員、交渉人、引き籠り、ニート、料理人、騎手、密告者、火事場泥棒、魔物使い(LV3)、暗器使い、逃亡者、運び屋、役者、詐欺師、駆除人、祈祷師、指導者、清掃員、武道家、抹殺者、黙劇者、竜騎士、伐採者、農家、守護者
ちなみに新しく取得可能になった職業の説明はこんな感じだ。
『黙劇者』
他人のスキルを模倣する事を得意とする職業。
器用、対魔力に成長補正。
『竜騎士』
竜と共に行動する者に与えられる職業。
騎乗する竜のステータスに大補正、及び攻撃スキルの威力向上。
『伐採者』
植物系モンスターを相手にするスペシャリスト。
植物系モンスターを相手にする場合、ステータス強化。スキルの効果上昇。
『農家』
大地を耕し、緑を育む。
土壌及び作物への成長促進。収穫量増大。
『守護者』
守る事に特化したスペシャリスト。
守る対象が多ければ多い程、防御系スキルの効果増大。
HP、耐久、対魔力に高成長補正。
さて、どれを選ぶべきか……。




