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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います  作者: よっしゃあっ!


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190/274

190.ペオニー攻略戦 その8


 景色が矢の様に飛んでゆく。

 崩壊した街並みも、周囲に浮かぶ巨大マリモも置き去りにして俺は跳んでいた。

 ビルからビルへと、弾丸のようなスピードで。


「ウォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!」

 

 凄いな、これ。

 たった一回の跳躍で百メートル以上も移動する跳躍力。

 これがあのハイ・オークの身体能力ステータスか。

『影真似』は単に、倒したモンスターの姿だけを真似るものではない。倒したモンスターの『ステータス』も真似る事が出来る。

 俺は自身のステータスを確認する。



クドウ カズト

新人レベル5

HP :2200(712)/2200(712)

MP :130(320)/130(320)

力  :902(379)

耐久 :680(390)

敏捷 :790(803)

器用 :230(775)

魔力 :110(185)

対魔力:80(185)



 これが現在の俺のステータスだ。

 表示されているのが現在のステータスであり、その隣にある括弧内の数値が俺の元のステータスを現している。


(……改めて見てもとんでもない数値だな)


 ソラには一歩及ばないものの、それでも『HP』や『力』、『耐久』なんかは、『新人』に進化した俺よりも遥かに高い。特化強化された『敏捷』ですらほぼ同じ。

 全身に水を浴びるたびにステータスが激減するって弱点が無ければ、間違いなく最強クラスのモンスターだ。

 それだけに、その力を存分に振るえるってのは素晴らしいの一言に尽きる。

 

(とはいえ、長くは持たないけどな……)


『影真似』は強力なスキルだが、当然リスクもある。

 ステータスは爆発的に上昇したが、制限時間が存在する。

『影真似』の効果時間はおよそ十五分。

 効果が消えれば、再び『影真似』を使用するのに五分のクールタイムが必要になる。


「――でもそれで十分」


 それだけの時間があればペオニーとの決着を付けるのには十分。

 むしろ問題なのは、それまでに俺の体が持つかどうかだろう。

『影真似』によって上昇したステータスはあくまで借り物。

 強制的にステータスを上書きしているような状態だ。

 つまり、


「ッ――もう体が悲鳴を上げてるな……」


 ビキビキと肉体が悲鳴を上げている。

 影を使って自身の体を強制的に動かしたときと同じ。

 いくらステータスを上げようとも、俺自身の肉体がその強化に耐えきれていないのだ。


 そもそも、これは『影真似』の本来の使い方ではない。

『影真似』は本来、奇襲、だまし討ちに使ってこそ真価を発揮するスキルだ。

 倒した相手の姿を真似るということは、裏を返せば『自分より弱い相手』にしか化ける事が出来ないということ。

 今回のように自分よりはるかに格上の相手に化ける方が間違った使い方なのだ。


『――過ぎたる力は己の身を蝕む』


 力の代償はとんでもないものになるだろう。

 でも耐えろ。

 今、ここで踏ん張らないと、ソラやみんなの頑張りが無駄になる。


「きゅー!」


 淡い光が俺の体を包み込む。

 キキの『支援魔法バフ』だ。

 少しだけ体が楽になった。


「ありがとう、キキ」

「きゅ、きゅー!」


 どういたしまして、とキキは俺の首にしがみつきながら返事をする。

『影』でしっかり俺の体に固定されているとはいえ、良く耐えている。

 

「ギギッ」

「ギギギギギッ」


 巨大マリモたちが俺たちの前に立ちはだかる。


「――邪魔だ」


 即座にアイテムボックスを展開。

 目の前の二体を消波ブロックで圧殺する。


(さっきからかなりの数を倒してるのに、まったくレベルが上がらないな……)

 

 やっぱコイツら『経験値』は無いのか……?

 蟻の時のように、大量に倒してレベルアップできるかもしれないと思ったが、そう上手い話は無いらしい。


「ギギッ」

「ギィィィ」

「ギチャッ、ギチャッ!」


 ん? なんだ?

 目の前の巨大マリモたちが一箇所に集まってゆく。

 何をするつもりかと思えば、なんと奴らは互いの体を喰い始めた。

 

「……共食い?」


 いや、違うな。これは――

 巨大マリモたちは食べる過程で混ざり合い、一つになってゆく。

 そして最後には、直径十メートル程の巨大な球体へと変化した。


「ギギャァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!」


 超巨大マリモは産声と共に、無数に開いた口から舌を伸ばす。

 成程、数では敵わないと判断し、質を上げた訳か。

 でも、


「――そりゃ悪手だよ」


 俺は自分の周囲に無数の消波ブロックを出現させる。

 今の強化されたステータスなら、こんなこともできるんだよ。


「――『投擲』!」


 出現する消波ブロックを掴んでは投げ、掴んでは投げる。

 ハイ・オークの膂力を使った力技。大質量の連続投擲だ。

 速度が加わってる分、その破壊力は通常のアイテムボックスよりも遥かに高い。


「ギギャッ!?」

「ギッ――」

「食ワ――アギャッ!?」


 回避することも、逃げることもかなわず合体した巨大マリモたちはあっという間に体を四散させた。


「的をデカくさせただけだったな」


 無駄に合体なんかしないで、数で押し切ればよかったのに。

 俺がハイ・オークを倒した時のように、回避できない程に『面』を広げて毒の雨を降らせれば、逆にこっちがヤバかった。

 相手の知能が低い事が幸いしたな。

 巨大マリモたちを一掃し、俺は再び跳ぶ。

 すぐ目の前まで、ペオニーの本体が迫っていた。


(……妙だな)


 静かすぎる。

 先程から根や蔦による攻撃が一切ない。

 あっさりと距離を詰められた事が、逆に俺の不安を加速させる。

 そしてたどり着く。

 敵の本丸――ペオニーの根元に。


「改めて見ると、とんでもないデカさだな……」


 近くで見上げれば、その巨大さがよりはっきり分かる。

 しかしここまで近づいても何の反応も無いってのはどういう事だ……?

 全神経を集中させながら、俺はペオニーの根元――その抉れた部分へと近づく。


「……アレか」


 抉れた箇所から見えるペオニーの内側――その最奥にペオニーの核らしきモノが見えた。

 ティタンの『核』は硬い石の様な形をしていたが、ペオニーのそれは胚珠のような形をしていた。大きさは直径一メートル程だろうか。

 その巨体に比べれば余りに小さく感じられる。


「……ん?」


 だが、それ以上に気になるのは、その核の上に『何か』が腰かけていた事だろう。

 それを一言で例えるなら、木偶人形だ。

 のっぺりとした顔のない頭部、球体関節のマネキンのような体。

 それがペオニーの核に鎮座していたのだ。


「――」


 木偶人形は俺に気付いたのか、すぅっと立ち上がる。

 そこから感じる威圧感は、巨大マリモたちとは比べ物にならない。

 のっぺりとした頭部の下半分が裂け、口のように開いた。


「――お腹、減った……」


 木偶人形が動く。

 次の瞬間、木偶人形は俺のすぐ目の前に居た。


「ッ――!?」


「お前、とっても美味しそう」


 直後、右腕が大きく抉れていた。

 もぐもぐと何かを咀嚼するような仕草。

 喰われたのだと気付くのに数瞬掛かった。


「コイツ――ツ!?」


 咄嗟に後ろに飛ぶ。

 ヤバい。

 目の前のコイツは、巨大マリモたちよりも遥かにヤバい相手だ。


「美味しい……美味しい! 凄く、凄く、凄く、凄く美味しいッ!」


 寒気がした。

 木偶人形はまるで極上のお菓子でも見つけたかのように狂喜乱舞する。

 その不気味さ、感じる威圧感は小さなペオニーそのものだ。


「一体どういうスキルだよ……?」


 巨大マリモといい、この木偶人形といい、ペオニーは一体いくつスキルを持ってるんだ?

 だが、スキルと本能が告げている。

 間違いなくコイツがペオニーを守る最後の砦だ。


「……まあ、いいさ」


 それでもやる事は変わらない。

 コイツを倒して、ペオニーの核を砕く。

 それだけだ。


「きゃはっ」


 再び木偶人形が動く。

 速い。速すぎる。

 目で追いきれない。

 だが、それがどうした。

 集中しろ。相手の動きが見きれないのなら、その動きを『予測』しろ。

 一瞬たりとも気を緩めるな!


「ここだ!」

「あきゃっ」


 とびかかる木偶人形の攻撃を躱し、カウンターで拳をたたき込む。


「ぐっ……」


 なんて硬さだ。

 ハイ・オークの膂力で殴ってるのに、この硬さ。

 まるで巨大な岩に拳を叩きつけたかのようだ。

 木偶人形は何度も地面をバウンドし、ようやく静止すると、すぐに起き上った。

 攻撃が効いてないのか? いや、それどころか――、


「むぐむぐ……」

「ぁ……?」


 木偶人形が再び口を動かし咀嚼している。

 まさかと思い、手を見れば、端が食いちぎられていた。

 おいおい、嘘だろ。完璧にカウンターを決めたと思ったのに。

 バックステップで距離を取り、喰われた部分を『再生』させる。

 喰われたのはどちらも『影』で覆われた部分だ。

 痛みはないし、出血もない。

 ただ『影』を喰われるという異常事態が俺の不安を煽る。

 

「あはっ!」


 木偶人形は再び跳びかかってくる。

 

「ッ――『絶影』!」


 咄嗟に足元の『影』を伸ばし、木偶人形の動きを拘束する。

 だがそれも一瞬、あっさりとヤツは『影』の縄を引き千切った。


「あぐっ……むぐむぐ」


 それどころか、その『影』すらヤツは食べてしまった。


「……もっと……」


 にたり、と。

 木偶人形の口が三日月のように裂ける。


「もっと食べさせて!」


「ッ……! 近寄るな、化け物め!」

「きゅー!」


 俺が距離を取るのと同時に、キキの淡い光が体を包み込む。

 木偶人形が再び俺に食いつこうとした瞬間、『反射』が発動。

 バチンッ! とヤツは体をのけ反らせる。


「――ぁえ?」


 またとない好機だ。

 瞬時に、右手に『破城鎚』を装着、『影』で固定し、発射させる。

 同時に凄まじい反動が俺を襲ったが、ハイ・オークの肉体はそれに耐えうるだけの強靭さを持っていた。


「まだだ!」


 吹き飛ぶ木偶人形へ向けて俺は追撃を仕掛ける。 

 奴の後方へアイテムボックスによる壁を展開。

 飛ばされそうになるヤツを強制的に停止させ、一気に接近する。


破城鎚パイルバンカー!」

「あがっ……!」


 衝撃が、再び木偶人形を襲う。

 それでも、ヤツの体は砕けない。


「なら――砕けるまで叩き込むだけだ」


 まだだ。

 まだ耐えられる。


破城鎚パイルバンカー!」


 もう一度、俺は木偶人形の腹に破城鎚をたたき込む。

 鈍い音と共に、木偶人形の体にひびが入る。


破城鎚パイルバンカー!」


 今度はヒビが全身に広がる。


破城鎚パイルバンカー!」


 そして攻撃を加える事五回目。

 遂に木偶人形の体がバラバラに砕け散った。


「ハァ……ハァ……」

 

 なんだったんだ、コイツは……?

 いや、考えるのは後だ。

 すぐにペオニーの核を砕かないと。

 そう思い、核に目を向ければ――


「あはっ」


 再び、あの木偶人形が腰かけていた。


「……冗談だろ?」


 一体だけじゃなかったのか?

 まさかペオニーはあの木偶人形を何度も生み出せるのか?

 

(いや、違う……)


 さっきの木偶人形を倒した瞬間、膨大なエネルギーがペオニーの核へ戻るのを感じた。

 つまり、コイツは核を破壊しない限り何度も蘇るのだろう。

 なんて厄介な。

 

「あはっ」


 新たな木偶人形は再び笑い、飛び掛かってくる。


「ちっ――!」


 マズい。これ以上の消耗は流石にマズい。

 作戦変更。俺は即座に忍術を発動させる。


「――『分身の術』!」


『影真似』は『変化の術』と違い、他の忍術と併用できるのも強みだ。

 その分MPの消費量は増えるが、そんなの気にしてられない。


「来いよ、木偶人形!」

「きゃはっ」


 木偶人形は周囲に現れた分身には目もくれずに、一直線に俺に向かって来る。

 そうだ。それでいい。

 俺がコイツの相手をしている隙に、分身たちがペオニーの核を砕く。

 それで終いだ。


「喰らえ――!」


 俺は一旦、アイテムボックスに破城鎚を収納し、再び分身たちの元へ、破城鎚を解放する。

 

「あむ!」

「ぐっ……!」


 木偶人形が俺の腕に噛みつくのとほぼ同時に、


「――破城鎚パイルバンカー!」

 

 分身たちが捨て身の破城鎚をペオニーの核へ叩き込む。

 ビキッ! とペオニーの核にひびが入る。


(駄目だ……一発じゃ足りない!)


 あの核もこの木偶人形同様相当な硬さだ。

 破城鎚の反動で分身たちが消し飛ぶ。

 少なくともあと一発叩き込まないと、あの核は砕けない。

 でももう一度分身の術を作り出す余裕なんて――


「わんっ!」


 すると、『影』からモモが飛び出してきた。


「モモ!?」

「わんっ!」


 モモはこくりと頷くと、ペオニーの『核』へ向けて駆け出した。

 分身の術に代わり、自分がペオニーの核を砕くつもりなのだろう。

 はは、本当にここ一番で頼りになる相棒だよ、お前は。


「よし、モモ! 同時に行くぞ!」

「わんっ」


 まかせて! とばかりにモモは力強く吠える。

 ありがとな、モモ!

 俺は即座に破城鎚をアイテムボックスに回収し、再び右手に装着。

 左腕に喰らいつく木偶人形へ向けて、破城鎚を放つ!


破城鎚パイルバンカー!」

「あがっ……!」

 

 ぶちぶちと、木偶人形と共に、『影』と肉が剥がれる。

 食いちぎられた左腕は肉が抉れ、骨が露出していた。

 凄まじい激痛が襲う。でも、それがどうした!

 耐えろ! 倒れるな! 目を逸らすな! 戦え!


破城鎚パイルバンカー!」

「あぎゃっ――!」


 破城鎚をまともに喰らいながらも、なお喰らいつこうとする木偶人形。

 本当に怖気が走るほどの食欲だ。

 まさしくペオニーの分身体。

 何故、俺はペオニーがこのスキルを使ったのかようやく分かった気がした。

 この状況でも、ペオニーは『喰いたい』のだ。

 肉体がボロボロになり、再生できず、核が露出し、巨大マリモたちもほぼ倒されたこの状況下でも、少しでも自らの食欲を満たす為に、ヤツはこの小さな分身体を生み出したのだ。

 死にたくないと叫びながらも、それでも満たされぬ食欲を少しでも満たすことをヤツは選んだ。

 もはや呆れを通り越して哀れにすら思えてしまう。

 なんでだ? なんで、お前はそこまで――……


『食ベタイヨ――……』


 その瞬間、頭に声が響いた。


『食ベタイ……嫌ダ……殺シタクナイ……食ベタイ……嫌ダ……死ニタクナイ……殺シテ』


 これは……まさかペオニーの思考?

『追跡』の経路パスを通じてペオニーの思考がまた流れ込んできたのか?

 でも、以前とは違う。

『食欲』だけだった思考に、僅かに別の意思を感じる。


『殺シタクナイ……食ベタクナイ……実リヲ与エル……皆死ンジャウ……嫌ダ……守ル』

『食ベル、食ベタイ、喰イ尽クス……全部餌……食欲、最優先……食エ……喰ラエ!』


 同じ声で二つの矛盾する思考が頭の中に響く。

 片方は今まで何度も聞いたあの悍ましい思考。

 もう片方は……もしかして『食欲』に支配される前の本来のペオニーの思考なのか?


(――……)


 バチッと、何かが繋がる。

 何かが頭の中に流れ込んでくる。


「これは……記憶?」


 それはこことは違うどこか別の世界にある森の光景だった。

 そこには一本の大樹があった。

 大樹にはたわわに実がなり、森にすむ生き物たちへいつも恵みを与えていた。


(――ケテ……)


 大樹は満たされていた。

 森に更なる恵みを与え、森がより豊かになる事に何よりも喜びを感じていた。

 大樹はさらに成長し、気付けば神樹と呼ばれ、森の生物たちに崇められた。


「これは……まさか、ペオニーの記憶……なのか?」


 だがある日、森に異変が起きた。

 資源を求めた人間達が大軍で押し寄せてきたのだ。

 森の為に力をつけ、成長を続けた結果、大樹は人々に目を付けられたのだ。

 神樹の実、そして枝や葉、樹液、その全てが人にとって最高の素材であった。

 森は焼かれ、生物は死に絶え、自らの命も奪われる寸前まで陥った。

 神樹は怒り狂った。

 そして侵略者どもを皆殺しにした。

 だが、戦いが終わると、そこには何も残っていなかった。

 悲しみにくれたソレはその場に残された全てを喰らいつくし、世界を呪い、強大な力を手に入れた。『暴食』と呼ばれる禁断のスキルを。

 

「そうか、お前は……」


 全てを蹂躙し、喰らい尽くす力。

 神樹はその力を受け入れ――飲み込まれた。

 もうどうでもよかったのだ。

 大切だった場所は焼き払われ、守りたい存在も居ない。

 ならば喰らおう。

 与えるのではなく奪おう。全てを飲み込み、喰らい尽くしてしまおう。

 いずれこの身が朽ち果てるまで、果てなき食欲に身を委ねて――……。


(――助ケテ……)


「お前は……誰かに止めて欲しかったのか?」


(――助ケテ……止メテ……)

(食ベル……食イ尽クス……全テ……駄目……違ウ、違ウ、違ウ!)


 飽くなき食欲を、満たされぬ飢えを、止めてくれる誰かをずっと待ってたのか?


((モウ……終ワリニシタイ……))


 バチンッ! と、そこで接続は切れた。

 

「――アハッ! あははははははははっ!」

「……」


 目の前の木偶人形が笑う。

 だらだらと涎を垂らし、俺に喰らい付こうとする。

 その姿が、俺には泣いているように見えた。

 思えば最初からペオニーの行動はどこかちぐはぐだった。

 食べたい、食べたくない。死にたい、死にたくない。

 そんな二律背反する思考。

 傷付き、追い込まれた結果、ペオニーの深層にある本来の思考と記憶が戻り、全てがぐちゃぐちゃに混ざっているのだろう。


「ああ、分かったよ……」


 終わらせてやる。

 お前の飢えも、悲しみも、怒りも、苦しみも全部ここで終わりにしてやる。

 息を吸い、狙いを定め、渾身の力を込める。


破城鎚パイルバンカーッッ!」


 三度目の破城鎚が木偶人形の腹部を貫く。

 そしてほぼ同時に、


「わおおおおおおおおおおおおおおおんっ!」

 

 モモの『咆哮』と『影』による同時攻撃が、ペオニーの核を直撃する!

 ビキビキと、ひび割れ砕け散る核と木偶人形。

 そして次の瞬間、


『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!』


 ペオニーの断末魔が木霊する。

 その命の停止を告げるように、ペオニーの幹が折れ――倒れた。

 それは凄まじい地鳴りと共に、下にあった建物や大地を押し潰す。


「ハァ……ハァ……」


 終わったのか?

 本当に?

 肉体が限界を迎えたのか、『影真似』が強制解除される。

 駄目だ、まだ倒れるな。気を失うな。


「わんっ! わんわん!」


 すぐにモモが駆けつけ、『影』で俺の体を支えてくれる。


「ありがとな、モモ」


 ふらふらになりながらも、ペオニーの核があった場所を見る。

 そこには一メートル程の巨大な魔石が転がっていた。

 凄いな、今まで見た中で一番の大きさだ。

 それにその隣には、小さな種のようなモノも転がっている。

 これは何だろうか?

 とりあえず、その二つをアイテムボックスに収納する。

 すると、頭の中に声が響いた。



≪経験値を獲得しました≫

≪経験値が一定に達しました≫

≪クドウ カズトのLVが5から6に上がりました≫


≪経験値が一定に達しました≫

≪クドウ カズトのLVが6から7に上がりました≫


≪経験値が一定に達しました≫

≪クドウ カズトのLVが7から8に上がりました≫


≪経験値が一定に達しました≫

≪クドウ カズトのLVが8から9に上がりました≫


≪経験値が一定に達しました≫

≪クドウ カズトのLVが9から10に上がりました≫


≪レベルが一定に達しました≫

≪『新人』の可能性の扉が開かれます≫

≪スキルを作成します≫

≪接続――接続――成功≫

≪保留にしていたスキルと共に新たなスキルを作成します≫

≪■■■■を変更、スキルを統合≫

≪接続――接続――成功≫

≪スキル『英雄賛歌』を作成しました≫


≪経験値が一定に達しました≫

≪クドウ カズトのLVが10から11に上がりました≫


≪経験値が一定に達しました≫

≪クドウ カズトのLVが11から12に上がりました≫


≪経験値が一定に達しました≫

≪クドウ カズトのLVが12から13に上がりました≫


≪経験値が一定に達しました≫

≪クドウ カズトのLVが13から14に上がりました≫


≪経験値が一定に達しました≫

≪クドウ カズトのLVが14から15に上がりました≫


≪経験値が一定に達しました≫

≪クドウ カズトのLVが15から16に上がりました≫


≪ネームドモンスター『ペオニー』の討伐を確認≫

≪討伐参加者を解析――MVPを選定≫

≪MVPをクドウ カズトに認定します≫


≪討伐ボーナスが与えられます≫

≪『質問権』のロックが解除されました≫



 それは長く続いたこの戦いが、ようやく終わった事を告げていた。


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【モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 外伝】
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― 新着の感想 ―
[一言] なんか...ペオニーを卑猥だと言った昔の俺を殴りたいです...
[良い点] お、質問権さんがやっと仕事するのかな??
[一言] 漫画全部読んで面白くてなろうの話を全部読みましたw とっても面白くて目が離せませんw 続きが楽しみです 漫画もなろうの最新の話も新しく読める日を日々待ち遠しく過ごしてますw 日々の楽しみをあ…
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