19.上級職と派生職
新たな職業。新たな力。
『上位職』。そして派生職、第二職業。
それが目の前に提示された。
ホント、ゲームみたいなシステムだな。
これってジョブのツリーみたいなのとかあるのかな?
「わん!」
「ッと……分かってるよ、モモ。とりあえず邪魔が入らない所に移動しよう」
モモに促され、モンスターがいなさそうな空き家に入る。
扉は壊されていたので、多分モンスターが入った後だろうか?
『敵意感知』や『危機感知』に反応が無かったので、去った後だろう。
中はグチャグチャに荒らされていた。
死体が無かったのは良かったな。 匂いとか気になるし。
良い感じの物があれば、あとで貰っていくか。
「よいしょっと」
綿のはみ出たソファーに腰かける。ステータス画面を開く。
現在選択している職業『密偵』をクリックする。
≪上位職への転換が可能です。職業を選んでください≫
暗殺者
工作員
盗賊
天の声が流れ、選択肢が表示される。
この三つが『密偵』の上位職か……。
『工作員』は何となく、『密偵』の完全な上位互換って感じがするな。今のまま、より強化されるって感じかな?
『暗殺者』は文字通りの暗殺特化型だろう。
不意打ちするには便利そうだ。
『盗賊』は……なんとなく戦闘職って感じがしないな。RPGとかだと、鍵開けとか罠外しみたいな防犯設備突破能力に特化した職業だったよな。この世界の基準だとどうなんだ?
「うーん、こういう時に『鑑定』があればなぁ……」
ファンタジーの定番『鑑定』様。
アイテムボックスってスキルがあるんだから、あってもおかしくないんだけど。
まあ、無い物ねだりをしても仕方ないか。
「あ、そうだ。第二職業も選択できるようになったんだっけ?」
確か派生職ってのが発生してた。
確認すると、選択可能職業の中に新たな職業が増えていた。
『密告者』、『狩人』、『火事場泥棒』、『獣使い』の四つだ。
これに加えて、初期段階であった他の職業も含めた中から、二つ目の職業を選ぶことが出来るらしい。
初期の職業の残りは以下の通りだ。
市民、冒険者、事務員、交渉人、引き籠り、ニート、修行僧、料理人、騎手
必要なJPは上位職への転換が3ポイント。第二職業選択が2ポイントのようだ。
俺の今の残高が5ポイントだから、丁度使い切る計算だな。
「……悩むなぁ……」
上位職と、第二職業の組み合わせ次第では、より強力なスキルのコンボや効果を得ることが可能だろう。
第二の候補としては『狩人』か『獣使い』かな。
『狩人』の方は今よりも索敵に特化したスキルを得られそうだし、『獣使い』はモモとの連携がより強固なものになるだろう。
「うーん……」
どうするか?
生き延びるため……そして何よりモンスターという脅威に対抗する為に一番いい組み合わせはどれか……?
逃げ切る事にも限界がある。
戦うべき時は戦わなきゃいけない。
それはこの間痛感した。
散々悩んだ挙句、俺は上位職『暗殺者』、第二職業を『狩人』にすることにした。
モンスターと戦う事を考えれば、『工作員』や『盗賊』よりも戦闘向きの『暗殺者』の方が良い筈だ。
それに俺のスタイルにもあってるしね。
奇襲、不意打ち、だまし討ちがデフォだし。
第二職業には『狩人』。
暗殺者と合せればより効率よくモンスターを狩れると思ったから。
『獣使い』も考えたが、これは今回は見送った。
なぜかって?
俺とモモは既に最高のコンビだからさ!
ジョブの補正なんて必要ない位になっ!
……という、冗談はさておき。
真面目な話、この『獣使い』は普通の動物を基準にしていると考えたからだ。
モモは明らかに『普通の動物』の枠には当てはまらない。
自分から積極的にモンスターを狩り、レベルも上げ、他の犬よりも遥かに賢い。
予め打ち合わせておけば、コンビネーションも高いレベルでこなせる。
それに『獣使い』は『密偵』と同じレベルの職業だ。
選んだとしても、今とあまり変わらないだろう。
それに今のところ、俺はモモ以外の動物を仲間にする気はないしね。
ちなみに『火事場泥棒』や『密告者』は、最初から除外。
なんとなくネタ職業や地雷職の匂いがプンプンした。
さて、では職業を変更しよう。
JPを3消費し、上位職へチェンジ。
≪密偵が上位職『暗殺者』へと変更されました≫
≪職業が暗殺者となりました。スキル『無音移動』を獲得しました。スキル『暗視』を獲得しました。スキル『急所突き』を獲得しました。スキル『気配遮断』を獲得しました。スキル『鑑定妨害』を獲得しました≫
≪スキル忍び足は無音移動に統合されます≫
≪スキル無音移動がLV1から3へ上がりました≫
≪スキル隠密行動は気配遮断へ統合されます≫
≪スキル気配遮断がLV1から4へ上がりました≫
おお、いい感じのスキルを獲得できたようだ。
それも今まで獲得したスキルの上位互換。
上位のスキルを獲得した場合、下位のスキルは統合されるのか。
しかも統合した分、レベルも上がる、と。
かなりいいな。
どれも暗殺に特化した感じのスキルだ。
組み合わせて使えば、今まで以上に戦闘が楽になるだろう。
そして気になるのが最後に獲得した『鑑定妨害』。
『鑑定妨害』ってことは、やっぱあるのか『鑑定』スキル。
しかも、この妨害って字面から察するに、『鑑定』を使えば見えるんだろうな、他人のステータスが。
つまり『鑑定』自体は、きっとユニークスキルじゃない。
誰でも習得が出来るスキルって事だ。
条件は今のところ不明だが、もしかしたら何らかのスキルの上位互換かもしれないな。
今の内にこれを習得できたのは、ある意味ラッキーだったと考えるべきだろうな。
よし、それじゃあ次は第二職業だな。
≪第二職業『狩人』を選択します。必要JPは2ポイントです。宜しいですか?≫
イエスを選択。
≪第二職業が『狩人』となりました。スキル『索敵』を獲得しました。スキル『望遠』を獲得しました。スキル『敏捷強化』を獲得しました。スキル『器用強化』を獲得しました≫
おっ、こっちも良い感じのスキルが獲得できたな。
どのスキルも、どんな効果か検証する必要がありそうだ。
クドウ カズト
レベル6
HP :27/27→30/30
MP :5/5→6/6
力 :46→50
耐久 :43→47
敏捷 :68→92
器用 :67→90
魔力 :0
対魔力:0
SP :22
JP :5→0
職業
暗殺者LV1
狩人LV1
固有スキル
早熟
スキル
無音移動LV3、暗視LV1、急所突きLV1、気配遮断LV4、鑑定妨害LV1
索敵LV1、望遠LV1、敏捷強化LV1、器用強化LV1
観察LV4、聞き耳LV4、
肉体強化LV7、剣術LV3、ストレス耐性LV5、恐怖耐性LV5、敵意感知LV4、危機感知LV5、潜伏LV2、逃走LV1、アイテムボックスLV7
パーティーメンバー
モモ
柴犬 Lv3
敏捷と器用が滅茶苦茶上がったな。『敏捷強化』、『器用強化』の影響か。
まんべんなくステータスが上がる『肉体強化』と違って、こっちは一つだけが大幅に強化されるって所か。
上がり具合から見て、LV1毎に+10って所か?
身体強化がLV1毎にそれぞれに+5だから、部分強化はその倍か……。
妥当っちゃ妥当か。
さて、SPの残高は22か。
新たなスキルの効果を確認した後で、既存に上げる分と、新たに獲得する分で割り振った方が良さそうだな。
あと、さりげなくモモのレベルが3に上がっていた。
いつの間に……。




