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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います  作者: よっしゃあっ!


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180/274

180.名前とステータス


「そう言えば、お前名前ってあるのか?」

『ヌ……?』


 今後についての話し合いもほどほどに進み、お互いにある程度警戒心もほぐれてきた所で、俺はドラゴンにそう訊ねた。


「いや、ずっと竜って呼ぶのもアレかなって思って……。ほら、アカやキキみたいに名前があれば、そっちで呼んだ方が良いかなと思ってさ」

『……我ニ名ハ無イ』


 パーティーメンバーの欄に名前が載って無かったから予想はしてたけど、やっぱりか。


「じゃあ、もしよければ名前を付けても良いか? 勿論、そっちがよければだけど」

『……名ヲ付ケルダト? 貴様ガ?』

「ああ。アカやキキも俺が名前を付けたんだ」

『……』


 竜は一瞬何か考え込むように眼をしばたたかせる。


『……本当ニ貴様ガ名ヲ付ケタノカ? アノ者達ニ?』

「ああ、そうだけど?」


 もしかして何か気に障ったか?


「あ、いや、勿論嫌なら――」

『……良イダロウ、我ニモ名ヲ寄越セ』

「へ?」

『何ヲ呆ケテイル? 貴様ノ提案ダロウ?』


 よ、良かった。てっきり名前を付けるのを嫌がるのかと思った。

 さて、なんて付けよう。やっぱ鱗が青いし、安直だけどアオ――


『但シ、安直ナ名ヲ付ケル事ハ許サヌゾ?』


 なんか心を読まれた気がした。

 うーん、でもそっかー。『アオ』は駄目か。

 でも何となくこれまでずっと色で名前を付けてきたしなー。それっぽいのがいい。

 あ、そうだ。


「じゃあ――『ソラ』はどうだ?」


 空色。藍色のこの竜は空を飛んでいると鱗が保護色となり、一瞬見えなくなるほどに空と同化して見える事がある。

 これも安直かとも思ったが、縦横無尽に天空を駆け廻るコイツにぴったりだと思ったんだ。


『ソラ……空カ……』


 竜は噛みしめるようにその名を呟き、そして空を見上げる。

 それはどこか昔を懐かしむような感じがした。

 

『――良イダロウ。今日ヨリ我ハ『ソラ』ダ。コレカラハソウ呼ベ』

「あ、ああ、気に入って貰えてうれしいよ」


 さっそくパーティーメンバーの項目を確認する。



パーティーメンバー

モモ 暗黒犬 Lv3

アカ クリエイト・スライムLV5

イチノセ ナツ 新人LV2

キキ カーバンクルLV2

ソラ ブルードラゴンLV38



 パーティーメンバーの竜の項目に名前が追加されていた。

 きちんと承認されたみたいだ。

 ……ていうか、改めて見るとレベル高いなー。ステータスも殆ど四桁だったし、改めてその化け物具合に驚いてしまう。


「それじゃあソラ、早速だけど一之瀬さんたちとも顔合わせを――」

『ッ……』

「ん? どうした?」

『……イヤ、何デモナイ』


 一瞬、何か苦しそうな表情をしてたけど、気のせいか?

 んじゃ、メールで一之瀬さんたちに連絡するか。万が一、竜が暴れた時の為に一之瀬さんたちは離れた場所で待機して貰っている。モモの『影渡り』を使えば、一瞬でここに移動できるしね。

 ……一之瀬さんが吐かないか心配である。





 

 それから数分後――ガチガチに固まった一之瀬さんが隣に立っていた。


「あわ……あわわわわわ……」


 もう傍から見てても可哀そうなほどに震えている。

 生まれたての小鹿の方がまだマシに見える程だ。


「だ、大丈夫です、一之瀬さん落ち着いて下さい。メールでも話したように、ソラとの話し合いは上手くいきましたから」

「わ、わわわわ分かってますよ。べ、別に、全然、ホント、全く怖がってなんていませんからららら……うっぷ」


 一之瀬さんは口元を押さえ、吐くのを必死に我慢している。

 うん、まあ吐かないだけ進歩したのかなぁ。

 その隣に立つ六花ちゃんも流石に笑みをひきつらせている。


「すっごいおっきいねー……。はは、流石に、ちょっと怖いかも」


 それでも一之瀬さんを後ろに下がらせ、自分が前に出る辺り、男前な六花ちゃんである。加えてもう片方の手は油断なく腰に携えた鉈に添えられている。六花ちゃん、マジ歴戦の戦士である。

 そして、


「ひぃぃぃぃ……」


 その遥か後ろ、瓦礫の隙間から顔半分だけを覗かせてこちらを見ているのが五十嵐会長だ。ある意味、一之瀬さんよりもビビってるな。というかこの人、昨日と今日で完全に威厳とかキャラとかブレまくってんな。まあ、仕方ないっちゃ仕方ないか。


「いい加減、こっちに来てくださいよ」

「だ、大丈夫なんですよね? ホント、出た瞬間食べられるとかないですよね?」

「ないですよ。……ですよね?」


 ちらりとソラの方を見る。


『……人ナド喰ワヌ。不味イカラナ』


 ソラは基本的に草食らしい。

 干し草とか果物とかが好きなんだそうだ。

 試しに一之瀬さんたちを待ってる間、農協の倉庫で手に入れた干し草ロールをあげたら美味しそうに頬張ってたよ。収穫した麦畑とかに転がってるデッカイあれだ。正式名称はロールベールとかいうんだっけ?

 腹が減ってたのか、あっという間に四つも平らげてしまった。……それ一個300㎏近くあるんだけど、流石竜の胃袋である。


「ほら、ソラもこう言ってますし、早く来てください」

「あ、ちょっ、そんな無理やり引っ張らないで下さい……! くっ強引なっ!」


 無理やり腕を掴んで、ようやくソラの前に引きずり出す。

 抵抗しているけど、俺とのステータス差は歴然だ。


「い、いい加減離して下さいっ。……そもそも、私がここに呼ばれた理由って何なんですか? 何も聞いてないですし、いきなり足元の『影』が広がったと思ったら急にここに連れてこられたんですけど……」

「ん? ……モモ、お前無理やり連れてきたの?」

「くぅーん?」


 足元のモモに訊ねると、『え? だめだった?』と首を傾げられた。

 うん、可愛い。何も問題ないな。


「まあ、モモのした事ですし、大目に見て下さい」

「……私の扱い、どんどん雑になってませんか? というか、明らかに私よりもその子の方が扱いいいですよね?」

「当たり前でしょう、モモは俺の大切な相棒パートナーですから」

「わんっ」ドヤァ

「ぐぬぬ……!」


 モモと五十嵐会長、どっちが大切かと言われれば迷わずモモを取るに決まってるじゃんか。

 それを聞いて、ぷるぷる震える五十嵐会長。


「ほ、ホントにやりにくいですね、この人は……」

「それはどうも。というか顔色が優れませんね。もしかしてお疲れですか?」

「誰のせいだと思ってるんですか! ええ、そうですよ! 疲れてますよ! 昨日からずっと住民たちの説得と『魅了』の重ね掛けで碌に寝ていませんよ!おかげで『疲労耐性』のレベルが上がりましたけどね! あーもうっ、あのクソ親父――あ、いや、藤田さんやけん爺には色々聞かれるし。ホント、アナタに関わってから碌な事がないわ……」

「自業自得ですよ。それに先に手を出したのはそっちでしょう」

「……」


 そう言われては、何も言い返せないのか、五十嵐会長は悔しそうに口をつぐむ。

 とはいえ、俺たちがこうしてここでソラとじっくり対談できてるのも、ある意味彼女のおかげである。彼女が住民を先導してくれていなければ、パニックはまだ収まっておらず、何をするにも住民たちの邪魔が入っただろう。これからも彼女にはキリキリ働いてもらわなければ。

 

「はぁー、分かりました。それで、私は何の為にここに呼ばれたんですか? さっき言った通りこれでも忙しい身なんですよ。主にアナタの所為で」

「すいません、ですがこれは五十嵐さんじゃないと出来ない事なんです」

「私じゃなきゃ……?」


「ええ、ソラの『鑑定』をお願いしたいんです」


「? ……『鑑定』なら昨日したでしょう?」

「あの時とは状況が違います。ソラがパーティーメンバーになったことでより詳細にステータスが分かるようになったかもしれないですし、なによりソラは『ステータス』の存在を知らないみたいなんです」

「えっ?」


 その言葉に、俺の後ろに居た一之瀬さんや六花ちゃんも驚く。

 これは俺もさっきソラと話していて知った事だ。

 

「そうだよな、ソラ?」

『アア、『スキル』ダケデナク『職業ジョブ』ヤ『SPスキルポイント』ト言ウ単語モ初メテ知ッタ』

「……? あのクドウさん、先程から誰と会話をしてるんですか?」

「え? あ、そっか、一之瀬さんたちにはソラの念話は届いてないんですよね」


 ちらりとソラの方を見る。


「ソラ、『念話』を一之瀬さんたちにも――」

『我ガ人デ認メタノハ貴様ダケダ』

「……いや、それは光栄だけど、これからパーティー組むんだし会話が無いと不便だろう?」

『貴様ガ間ニ入レバ問題アルマイ。ソレニ――ヌ?』


 ふと、ソラの視線が一之瀬さんの方を向く。

 正確には、彼女の持つライフルに。


『ソノ銃……モシヤ我ノ眼ヲ撃チ抜イタノハ、ソノ娘カ?』

「……だったらどうする?」


 俺はスキルをオンにして警戒モードに入る。

 やっぱり眼を撃ち抜かれた事恨んでるよな。

 どうにか話し合いで済ませられればいいけど……。

 だがソラはふっと笑い――、


『――良イダロウ。ソッチノ娘ニモ我ト話ス事ヲ許ス』

「え?」

「あ、あれ? い、今なんか頭の中に声が……?」


 混乱する俺と一之瀬さん。

 今の反応からすると、一之瀬さんにもソラの『念話』が届いたのか?


「……恨んでないのか?」

『恨ム? 何故ダ?』

「いや、だって、その眼……」


 一之瀬さんによって撃ち抜かれた右目はまだ完治していない。

 ソラの眼にはまだ生々しい傷跡が残っている。


『別ニ気ニシテナドイナイ。コレハ我ガ油断シタカラダ。実力アル者ハ認メネバナルマイ。……彼モソウ言ッテイタシナ』

「そ、そうか……」


 実力主義ってことか? 竜の価値観ってよく分からん。

 ともかく一之瀬さんもソラに認められたらしい。

 その事を一之瀬さんに話すと、


「わー嬉シイナー」


 ほぼ俺と同じようなリアクションを取るのだった。

 六花ちゃんや五十嵐会長は駄目みたいだけど、とりあえず一之瀬さんにも『念話』が届くのであれば、パーティーメンバー内でのやり取りは問題なくなる。これはこれでオッケーだ。

 

 閑話休題。


「話が脱線してしまいましたね。改めて言いますが、ソラはスキルやステータスの存在を知らなかったようなんです」

「知らなかったって……でも明らかにスキルを使ってましたよね?」


 一之瀬さんの問いに俺は頷く。


「ええ、自分が使える『力』については理解してたみたいです」


『力』については知ってる。だがそれをステータスとして『可視化』出来る事は知らなかったようなのだ。これはアカやキキも同じだった。


「おそらくソラたちが居た元の世界では『ステータス』という概念は無かったのでしょう。スキルや職業、それにSPスキルポイントJPジョブポイントなんかも」

「それって……もしかしてこの世界がこうなってから、ステータスやスキルが生まれたって事?」


 六花ちゃんの言葉に俺は頷く。


「ソラたちに限って言えば、元々持っていた力を『可視化』させただけなんでしょうけどね」


 俺はてっきりモンスターたちが居た元の世界に元々『そういう法則』があったのかと思ったが、どうやら違ったようだ。

 思い返してみれば、モモは何度かステータスをいじる仕草をしていたが、アカやキキがそういう仕草をすることはなかった。

 その違いにもっと早く気付くべきだった。


「あれ? でも今は自分のステータスが見えるんだよね? なら『鑑定』する必要なくない?」

「いえ、相坂さん、それは違いますよ。確かに今ならソラは自分で自分のステータスを見る事が出来ますが、それを『念話』で上手く俺たちに伝えることが出来ないんです」

「あ、そういうことか」


『念話』だとスキルの名称や効果がいまいち伝わりにくい。というか、ぶっちゃけ、ソラが言葉足らずで説明不足で良く分からないのだ。なによりソラ自身がスキルの効果を『誤認』している可能性もある。

 例えば『爪撃』一つ見ても、ソラは『爪で切り裂く技だ』としか言わなかった。具体的にどの程度の破壊力なのか、効果範囲や副次効果があるのか、本人も良く分かっていなかった。本人は野生の本能で分かってたのかもしれないけど。

 なので『鑑定』できちんとスキルを見て、俺の『質問権』で詳細を調べれば、情報の齟齬が生じる事はない。なによりソラ自身が自分のスキルの詳細を正確に把握できる。

 手間はかかるが、これが一番確実な方法なのだ。


「という訳で、五十嵐さんお願いします」

「……分かりました」


 五十嵐会長はソラをじっと見つめ、ポケットから出した手帳にさらさらと文字を走らせてゆく。


「……確かに昨日よりもスキルの詳細を見る事が出来ますね」

「やはりですか」


 予想は当たっていたようだ。

 あ、そうだ。この際だから、モモたちのスキルやステータスの詳細も見ておきたいな。

 今更彼女が虚偽の申告をするとも思えないし、


(いいか、モモ、アカ、キキ?)

(わんっ)

(……)ふるふる

(きゅー)


 三匹ともオッケーのようだ。

 考えてみれば、モモたちのステータスを見るのもこれが初めてになるな。

 どんな感じだろう、ワクワクするな。


 という訳で、五十嵐会長に頼み、モモたちのステータスも鑑定してもらう。

 そして紙に書かれたステータスを見て、俺は大いに驚く羽目になる。

 みんなのステータスはこんな感じだった。



ソラ

ブルードラゴン LV38

HP :4300/5200

MP :2000/2300

力  :1200

耐久 :800

敏捷 :2500

器用 :1200

魔力 :2200

対魔力:1100

SP :176


固有スキル

■■■■

■■■■


スキル

爪撃LV10、息吹LV10、竜鱗LV10、高速飛行LV10、索敵LV3、威圧LV5、咆哮LV5、狂化LV4、息吹強化LV8、息吹超強化LV7、爪撃強化LV7、竜鱗強化LV7、飛行速度強化LV8、危険感知LV3、射程強化LV5、意思疎通LV4、念話LV3、MP消費削減LV3、気配遮断LV2




アカ 

クリエイト・スライムLV5

HP :220/220

MP :120/120

力  :1

耐久 :98

敏捷 :1

器用 :1

魔力 :1

対魔力:300

SP :30


固有スキル

■■■■


スキル

衝撃吸収LV7、衝撃吸収強化LV2、斬撃無効LV7、軟化LV7、悪食LV7、索敵無効LV10、消臭LV10、精神苦痛耐性LV10、同族吸収LV4、分裂LV4、認識同期LV4、擬態LV7、意思疎通LV1、石化LV1、巨大化LV1、



キキ 

カーバンクルLV2

HP :40/40

MP :80/80

力  :10

耐久 :11

敏捷 :18

器用 :21

魔力 :11

対魔力:12

SP :24


固有スキル

■■■■


スキル

戦闘支援LV3、応援LV4、支援魔法LV3、反射LV7、意思疎通LV1、呪い付与LV2、看破LV1、




モモ

暗黒犬 LV3

HP :422/422

MP :85/85

力  :130

耐久 :112

敏捷 :480

器用 :210

魔力 :110

対魔力:120

SP :36


固有スキル

共鳴

■■■■


スキル

噛みつきLV4、体当たりLV2、引っ掻きLV2、悪路走破LV4、嗅覚強化LV2、索敵LV4、危機感知LV4、恐怖耐性LV4、ストレス耐性LV4、空腹耐性LV4、孤独耐性LV4、群狼強化LV4、敏捷強化LV1、意思疎通LV2、操影LV7、潜影LV5、影武器LV4、咆哮LV4、影渡りLV2、暗黒弾LV1




 なんとモモが固有スキルを持っていたことが判明したのだ。


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【モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 外伝】
▲外伝もよろしくお願い致します▲
ツギクルバナー
書籍7巻3月15日発売です
書籍7巻3月15日発売です

― 新着の感想 ―
[気になる点] 42話でモモが暗殺犬に進化した際に『気配遮断』、『無音移動』の様なスキルに、相手の急所を見極めるスキルを得たとありましたが、180話のステータスではそれらしいスキルがないように思います…
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