17.再出発
さて、外へ出る前にステータスを確認しておくか。
昨日は確認してる余裕なんてなかったからな。
ステータス画面を開く。
クドウ カズト
レベル5
HP :27/27
MP :5/5
力 :46
耐久 :43
敏捷 :68
器用 :67
魔力 :0
対魔力:0
SP :2
JP :5
職業
密偵LV9
固有スキル
早熟
スキル
忍び足LV4、観察LV4、聞き耳LV4、隠密行動LV6
肉体強化LV7、剣術LV3、ストレス耐性LV5、恐怖耐性LV5、敵意感知LV4、危機感知LV5、潜伏LV2、アイテムボックスLV7
パーティーメンバー
モモ
柴犬 Lv2
ストレス耐性、恐怖耐性、敵意感知、危機感知のレベルが上がっている。
昨日はそれどころじゃなかったけど、こうしてみると結構スキルのレベルが上がったんだな。
死に直面したけど、ある程度のリターンはあった。
全然釣り合ってないけどね。
そう言えば、新たなスキルが獲得可能とも言っていたな。
スキルの欄をクリックしてみる。
すると、『初期獲得可能スキル一覧』という項目の下に、新たに『追加獲得可能スキル一覧』という項目が増えていた。
クリックすると、新たなスキルが表示される。
『追加獲得スキル一覧』
逃走、防衛本能
『逃走』と『防衛本能』か……。
天の声は、『一定条件を満たしました』とか言っていた。
「一定条件……」
察するに、現実における俺の行動や状況、もしくは願望なんかが、新たなスキルを生み出すって事だろうか?
獲得した状況と、スキルの名前が一致しすぎてるしな。
つまり様々な状況に直面すれば、それだけ多くのスキルを得られる可能性があるって事だ。
あんまし危険は冒したくないが、やってみる価値はあるかもしれない。
だがまあ、その前に今は新たに獲得したこの二つのスキルだ。
『逃走』スキルをクリックしてみる。
≪SPを2消費して、スキル『逃走』を習得しますか?≫
あれ?2ポイント?
1ポイントじゃないのか?
確認の為に初期獲得可能スキルの方をクリックしてみたが、どうやら初期スキルは1ポイント、追加スキルの方はどちらも2ポイント必要になるらしい。
2ポイントか……。
どちらのスキルも魅力的だし、獲得しておいて損はない筈。
もう片方の方は、次にレベルが上がった時に習得すれば良い。
とりあえずは『逃走』を取っておこう。
≪SPを2消費して、スキル『逃走』を習得しますか?≫
イエス。
≪スキル『逃走』を獲得しました≫
よし、これでモンスターから逃げる時に補正が掛かる筈だ。
このスキルも、実際にその状況にならないと検証できないのが痛いけど、たぶんそう言う効果のスキルだとは思う。
というか、獲得したスキルって、SPを消費しなくても、ジョブのレベルや、熟練度が上がれば、それに応じて上がる仕様なんだし、最初にスキルをガンガン獲得して、後で熟練度を上げていく方が良いかもしれないな。
その分、SPの消費も抑えられるだろうし。
先行投資って大事だよね。株以外は。あれ、絶対損するし。
次にレベルが上がったら、初期の方も含めて一通り獲得してみるのも良いかもしれない。
「ん?」
ふと、モモの方を見ると、モモがお座りの姿勢のままどこか一点を見つめていた。
視線の先には特に何もない。壁があるだけだ。
そしておもむろにポンポンと床を叩く。
何をしてるんだ?
「……モモ?どうしたんだ?」
俺が話しかけると、モモはハッとなって俺の方を見た。
「わん!」
モモは元気よく返事をする。
「何か気になる事でもあったのか?」
「わん!わん!」
凄く嬉しそうに、俺に体を擦り付けてくる。
んー? どうしたんだろうか?
褒めてもらいたそうな仕草。
そしてさっきの謎行動。もしかして……。
「……なあ、モモ。もしかして、お前も何か『スキル』を獲得したのか?」
「わん!」
モモは正解だと言わんばかりに、激しく尻尾を振った。
マジか。冗談で言ったけど、マジで何かスキルを獲得したのか?
やっぱりモモにもあの『天の声』みたいなのが聞こえてるのだろうか?
「ほ、本当か?どんなスキルなんだ?」
「わん!」
モモは俺の周りでクルクルと回り、少し離れてぴょんっと飛び跳ねた。
そして最後にどやぁと言った感じの顔で俺の方を見た。
「……えっと、どういう意味?」
「わふっ!」
もう一度同じ動作をする。
え?何?どういうスキルな訳?
回って跳ねるスキルなのか?
回転して飛ぶ……まさか、あの超有名なワンちゃんの必殺技―――。
「わん!わふぅ!」
激しく否定された。
違うらしい。
じゃあ、どういうスキルなんだ?
モモは何度も同じ動作をするが、結局いまいちよく分からなかった。
俺に分かって貰えなくて、モモはひどく落ち込んだ。
「…………くぅーん…」
ごめんよ、モモ。
その後しばらくモフり続け、何とかモモの機嫌を回復させた。
「それじゃあ、出発するか」
「わん」
バリケード用に出していた家具を全て収納し、俺とモモは外に出る。
雨は上がっていた。
朝日が眩しい。
「所々で上がってた煙が消えてるな……」
昨日の雨のおかげで、かなり鎮火したのだろう。
街が良く見通せる。
そして、視線の先には昨日のショッピングモールも見えた。
「あのハイ・オークはまだあそこに居るのかな?」
もしくは、人間を狩って既に移動してる可能性もある。
早いとこレベルを上げないとな。
「……ん?」
さっそく『敵意感知』に反応があった。
でもそんなに大した感じじゃない。
昨日感じた『嫌な感じ』というよりかは、『少し気を付けた方が良い』程度の感じだ。
「この階じゃないな……一階か」
レベルが上がった影響か、『敵意』を感じ取れる範囲が広くなったようだ。
『隠密行動』、『忍び足』を使い、素早く階段を下りる。
ちなみに、モモは抱き抱えている状態だ。
この方が階段を下りる時とかは早いしね。
「わふーん」
俺に抱きかかえられてモモはご機嫌のご様子だ。
止めろよ、そんな目で俺を見るなよ。
離すのが辛くなるだろうが!
一階へ到着する。
心を鬼にして、モモを手放す。ぐぅぅ……。
敵意感知に反応があったのはすこし先。
見ると、駐車場付近にモンスターが居た。
「ゾンビか……」
一体のゾンビが駐車場付近をうろついていた。
他にモンスターの姿は見えない。
狙い目だな。
アイテムボックスからダンベルを取り出し、一気に接近。
頭を砕く。
≪経験値を獲得しました≫
ゾンビが消え、魔石が転がる。
よし、幸先は良いな。
とりあえずは、ゾンビかゴブリンをメインターゲットにして狩っていくとしよう。
勿論、あのショッピングモールとは逆方向ね。安全第一で行こう。




