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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います  作者: よっしゃあっ!


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154/274

154.宝箱再び


 時間は少し戻る――。


「――これで九か所目、と……」


 俺と一之瀬さんは市役所へ戻る道すがら、石化したアカを所々に設置していた。

 モモの『影渡り』で移動するための目印――『座標ポイント』だ。

 なるべく目立たなく、それでいて『影』から出る際にも問題なさそうな場所をピックアップしながら、石化したアカの分身体を設置してゆく。

 ちなみに場所を選んでくれたのはほぼ一之瀬さんだ。

『人目に付かずに移動できるルートなら私めっちゃ得意です』と自信満々に後ろ向きな事を言っておられた。

 引き籠り現役時代は、僅かな買い物の時間の為に人目に付かないルートを探し回っていたらしい。でもそれ自慢にならないと思います。


「それじゃ、一之瀬さん、確認お願いします」

「了解です――地図マップ


 一之瀬さんの声に応じて、目の前に立体的な地図が出現する。

 地図には、俺たちの現在地を表示する赤いアイコンが点滅しており、離れた場所にも小さく点滅しているアイコンが数か所表示されている。

 これが石化したアカの『座標ポイント』を示したアイコンだ。


「距離は……問題ないですね」


座標ポイント』はほぼ等間隔で表示されており、モモの『影渡り』で移動できる距離だ。

 一之瀬さんの『地図マップ』があれば、正確な距離や方角を確認しながら、『座標ポイント』を設置できるという訳である。


「それにしてもホントに便利ですよね、アカちゃんの『石化』とモモちゃんの『影渡り』のコンボ。殆ど瞬間移動じゃないですか」

「そうですね。俺もそう思います」


 感心する一之瀬さんに俺も頷く。

 テストも兼ねて何度かモモに『影渡り』をお願いしたが、問題なく移動することが出来た。一之瀬さんやキキも含めたパーティメンバー『全員』でだ。

 モモが『暗黒犬』に進化したことで『影渡り』の同乗人数も増えたのである。

 これで飛躍的に活動範囲を広げることが出来るし、モンスターとの戦闘もより安全に臨むことが出来る。良い事尽くめだよホント。


「少し休憩しますか」

「そうですね」

「わんっ」


 まだ時間はあるし、俺たちは適当な民家に入り休息をとることにした。

 レベルアップのステ振りも済ませておきたいしな。

『新人』になってから初のレベルアップだし、進化前と何か変化があったのかも確認しておきたい。

 ステータスプレートを開き、数値の変化を確認する。


(レベルアップして獲得したJPは10ポイント、SPが20ポイントか……進化してもポイントの実入りには変化ないようだな……)


新人アラビト』の説明には『可能性が広がる』って書いてあったし、もしかしたら『早熟』のポイントボーナスにも変化があるかと思ったがそれは変わらないようだ。

 

(万が一の事を考えて最初っから『上級忍術』を最大まで上げたけど、こうなるとちょっともったいなかった気もするな……)


 職業レベルは3、6、9に上がる際に付随スキルのレベルも1上昇する。つまりスキルのレベルを7~9の間で留めておけば、最大で27ポイントもSPを節約する事が出来たという事だ。

 効率で言えば、俺のやったことは下の下。

 でも『進化してすぐに強力なモンスターに遭遇する』可能性もゼロじゃなかった。むしろ今までの経験からいってその方が高いくらいだ。

 そして『上級忍術』を全て取得していれば防げたかもしれない状況に陥る可能性もあった。

 そういった『未知の危険』に備えるという意味合いで言えば、スキルの全上げはポイントの節約以上に価値があったはずだ。


 ともあれ、過ぎた事だ。早速ポイントを割り振るとしよう。

 まずはスキルだ。

 スキルは『HP変換』、『MP消費削減』、『忍具作成』、『影真似』、『影檻』をそれぞれLV4に上げる。これで計20ポイントだ。

 次に職業は『忍頭』、『漆黒奏者』をそれぞれLV3に上げる。これで計10ポイント。

 そして職業がLV3になったことで付随スキルのレベルもそれぞれ1ずつ上がる。

 これで今回のステ振りは終了だ。

 


クドウ カズト

新人アラビトレベル2

HP :662/662

MP :285/285

力  :349

耐久 :379

敏捷 :743

器用 :725

魔力 :180

対魔力:180

SP :0

JP :0


職業 

忍頭LV3

追跡者LV2 

漆黒奏者LV3 

修行僧LV3


固有スキル

早熟 

職業強化


スキル

上級忍術LV10、HP変換LV5、MP消費削減LV5、忍具作成LV5、投擲LV6、無臭LV7、無音動作LV7、隠蔽LV6、暗視LV5、急所突きLV6、気配遮断LV7、鑑定妨害LV4、追跡LV3、地形把握LV4、広範囲索敵LV6、望遠LV4、敏捷強化LV8、器用強化LV5、観察LV10、聞き耳LV4、絶影LV6、影真似LV5、影檻LV5、忍耐LV5、渾身LV5、HP自動回復LV5、MP自動回復LV6、身体能力向上LV7、剣術LV6、毒耐性LV1、麻痺耐性LV2、ウイルス耐性LV1、熱耐性LV1、危険回避LV5、騎乗LV3、交渉術LV1、逃走LV4、防衛本能LV1、アイテムボックスLV10、メールLV2、集中LV7、予測LV6、怒りLV5、精神苦痛耐性LV5、演技LV4、演算加速LV3、


パーティーメンバー

モモ 暗黒犬 Lv2

アカ クリエイト・スライムLV4

イチノセ ナツ 新人LV2

キキ カーバンクルLV1


 何気に一之瀬さんとモモのレベルも上がっていた。

 モモは一緒に戦闘に参加していたから分かるが、一之瀬さんはなぜ?

 

(そう言えば、監視中にモンスターを何体か狩ってたって言ってたな……)


 抜け目なく経験値を稼いでるあたり流石と言うべきか。

 見れば一之瀬さんはモモやキキと戯れていた。

 手におやつを持って、モモの視線の先で右へ左へ動かしている。


「ほーら、モモちゃん。おやつだよー」

「わんっ、わふー」


 じゅるりと涎を垂らしながら、視線をせわしなく動かすモモ。尻尾もぶんぶん揺れている。

 その仕草が可愛いのか、一之瀬さんは中々モモにおやつを上げないでいる。

 もう、あんまし焦らすとモモが可哀そうだろうが。

 仕方なく俺はアイテムボックスからおやつを取り出し、パチンと手を叩いた。


「!」


 即座に反応するモモ。

 とてとてやって来たので、おやつを上げるとモモは嬉しそうにがつがつ食べた。

 らぶりー、癒されるわー。


「むぅー……」


 対して、モモを取られた一之瀬さんはふくれっ面である。

 すまないね、一之瀬さん。このモモは一人用なんだ。

 この後、めちゃめちゃモフモフした。




「さて、十分休んだし、そろそろ出発しますか」

「ですね」


 ステ振りも、モモのおやつも終わったし十分体も休めた。というかモフモフし過ぎた。モモやキキをあやしてると本当に時間があっという間に過ぎてゆく。そろそろ行動を再開しよう。

 俺はアイテムボックスからバイクを取り出しエンジンをかける。これで一気に移動するとしよう。

 すると一之瀬さんは家の中に戻ろうとした。


「なにしてるんですか?」

「……私はここで待ってます。私に構わず先に行ってください」

「いや、一之瀬さんも一緒に行くんですよ?」


 ほら、アカはヘルメットに擬態してるし、モモも『影』のシートベルトを出して準備万端だ。キキも無駄にバフをかけてる。


「嫌です! どうせまた吐くんですから、ここで待って後でモモちゃんに迎えに来てもらった方が何倍もマシじゃないですか!」

「だから少しずつ慣らして克服していきましょう? 俺も協力しますから」

「嫌ですー! やだー!」

 

 ええい、駄々っ子め!

 なんかここ最近、一之瀬さんは随分表情豊かになってきたなぁ。……主に駄目な方向に。

 その後、無理やり後部座席に一之瀬さんを載せてバイクを走らせた。

 ちなみに耐性スキルは獲得できなかった。



「うぅ……酷いです、クドウさん……。私、汚されちゃいました」

「自分で汚しただけでしょう」


 一之瀬さんの名誉のために詳細は伏せておくが、とりあえずアカが頑張ったとだけ伝えておこう。アカは普通に食事をしただけなのだ。

 やっぱりバイクは早いな。

 あっという間に市役所が見える場所――『安全地帯』の境界付近までやってきた。

 まだ距離はあるが、この辺でいいだろう。


「この辺は結構瓦礫が少ないですね……うっぷ」

「そうですね……」


 ティタンが投げた大量の瓦礫は未だ市役所周辺に大量に放置されたままだが、この辺は比較的被害が少ない様だ。

 アイテムボックスに瓦礫を収納しながら、周囲を探索していると一之瀬さんが突然声を上げた。


「ッ――ク、クドウさん、あ、あれを見て下さい!」

「どうしたんですか、そんなに慌てて――――ッ!? あれは……まさかっ」


 驚いた声を上げる一之瀬さんに促され、彼女の指さす方を見て俺も驚きの声を上げた。

 それは瓦礫と巨大な木の根に守られるようにひっそりと鎮座していた。

 木で出来た箱に豪華な装飾が施され、箱の中央部分には鍵穴らしき部分もある。


 そう、『宝箱』だ。


 以前は道路の真ん中で鎮座していたが、今回はひっそりと隠れるように配置されている。

 正直、怪しさ満点だ。というか、どこからどう見ても、どうせ『アレ』だろ。


「ミミックですね」

「ミミックでしょうね」

「わんっ」←頷くモモ

「きゅー」←頷くキキ

「……ふるふる」←うにょんとアカ


 満場一致だった。

 だって見た目も以前遭遇したミミック箱と同じだしね。

 ま、見つけたからには放置しておくわけにもいかないだろう。

 

「モモ」

「わんっ」


 モモが『影』を伸ばし宝箱に触れる。

 さあ、出て来いミミック。さっさと潰して経験値にしてやるよ。

 モモの影が宝箱に触れ―――ガチャリと宝箱は開いた。

 ミミックは……出てこなかった。


「…………え?」

「へっ?」

「わふん?」

「きゅー?」

「……ふるふる?」


 え? なんで? いや、もしかして……え?

 俺と一之瀬さんは顔を見合わせ「マジ?」みたいな顔をする。

 もう一度宝箱を見る。

 ミミックの気配はない。……箱の中に隠れている様子も無い。

 まさか……まさか、まさか、まさか。


「「ほ、本物……?」」


 俺と一之瀬さんの声が綺麗にハモった。

 好奇心に突き動かされるように、宝箱へと近づく。

 中に入っていたのは小さな翡翠色の宝玉オーブ、そして銀色に輝く指輪だった。


「マジかよ……これ、本物の宝箱だ……」

「う、うわー、うわー……こういうのもあるんですね、この世界……」

「と、ともかくアイテムの名称を確認してみましょうか……」

「あ、ですです。お願いします」


 俺はさっそく二つのアイテムをアイテムボックスへ収納する。

 リストを確認すると、それぞれの名称が判明した。


『癒しの宝玉オーブ』×1

『敏捷の指輪』×1


「……玉の方は『癒しの宝玉オーブ』、指輪の方は『敏捷の指輪』と言う名称みたいですね」

「へぇ……」


 再びアイテムボックスから取り出したそれを二人でしげしげと眺める。


「玉の方はともかく、指輪の方は……つけてみますか?」

「で、ですよね……えっと、私が付けますか?」

「いえ、万が一があっては駄目なので俺が付けますよ」

「そ、それなら私の方が――」

「いえ、俺が――」


 なんだこの譲り合い?

 すったもんだの末、ジャンケンで勝った俺が試しに付けることとなった。

『癒しの宝玉』はともかく、『敏捷の指輪』は何となくその名称から効果が予想出来るが念の為だ。

 意外と小さい指輪だ。ちゃんと入るだろうか?

 右手の人差し指に通してみると、指にぴったりと収まった。

 明らかに入るサイズじゃなかったが、装着する人に応じてサイズが変わるのか?


「どうですか?」

「……少なくとも体に異常はみられませんね」


 となればやっぱりアレか。

 ステータス画面を見てみると、『敏捷』の項目に数字が加算されていた。

『敏捷』743+30


「どうやらこの指輪、『敏捷』のステータスを上げる効果があるみたいですね」

「へぇ、凄いですね。あの……私もハメてみていいですか?」

「ええ、どうぞ」


 指輪を装着しても特に苦痛も異変も起こらなかったし問題ないだろう。

 一之瀬さんが期待に満ちた眼差しで左手をこちらに向けてきたので、指輪を手渡す。

 するとなぜか一之瀬さんはがっかりした表情になった。え、なんで?


「……わふん」

「……きゅー」

「……(ふる)」


 なぜかモモたちも呆れた様な声を上げる。

 え、なんで?


「……いや、分かってましたけどね。クドウさんってそういう人ですし」


 一之瀬さんも何かブツブツ言っている。

 何故か暗い表情のまま左手の薬指に指輪を装着した。


「あ、本当だ。えとえと『敏捷』に+30の補正が付いてます」


 一之瀬さんの補正値も同じって事は『敏捷の指輪』は装備した者の敏捷の数値を30上げると考えて間違いないだろう。

 となれば、使い方は決まりだな。


「それは一之瀬さんが使って下さい」

「いいんですか?」

「構いません。俺は元々『敏捷』が高いですし、一之瀬さんのステータスを少しでも補った方が効率的です」


 一之瀬さんの敏捷『14』だからな。

 +30の補正はデカい。


「……分かりました。ありがたく使わせてもらいます」


 一之瀬さんは胸の前で指輪をぎゅっと握りしめた。

 そ、そんなに感謝されると、なんかこそばゆいな……。


「えーっと、その、こっちの『癒しの宝玉オーブ』の方は……とりあえず保留にしておきますかっ」

「あ、ですです。そ、それがいいとおもいます! はい!」


 なんか妙な空気になったので、誤魔化すように声を張り上げる、うん。

『癒しの宝玉オーブ』は『敏捷の指輪』みたいに明確な効果が分からないからな。

 とりあえずはアイテムボックスに入れたままにしておこう。

 と、その時俺はひらめいた。


(あ、そうか。『質問権』を使えばいいか)


 そうだよ、使い方が分からなければ質問すればいいのだ。

 俺は早速『質問権』に『癒しの宝玉オーブ 使い方』と入力する。

 どれどれ……。

 

『癒しの宝玉オーブ』 

 対象を癒す。


 え? これだけ?

 対象を癒すって……どう癒すわけ? 使い方は? 効果範囲は? 使用回数は?

 もっと詳しい内容は出てこないのか?

 何度か質問内容を変えて入力しても答えは同じだった。

 うん、やっぱり保留にしとくしかないか。


「あ、そういえば、時間的にそろそろリッちゃんのグループも帰ってくる頃ですね?」


 あ、確かに。

 時計を見れば、もう午前中の探索を終えていてもおかしくない頃だ。

 方角的にもたしかこっちのほうだった筈――ん?

 六花ちゃん達が居るであろう方角を見ると、『嫌な気配』を感じた。

 いや、『嫌な気配』とはちょっと違う。強いて言うなら『妙な気配』だろうか?


「クドウさん、どうしました?」

「いえ、すいません、一之瀬さん。ちょっと静かにしてもらえますか?」


 目を閉じて、『索敵』に集中する。

 ここから少し離れた場所から感じる『奇妙な気配』……それとその近くには『見知った気配』もいくつか確認できる。

 これは……おそらく六花ちゃん達の気配だ。動揺? 混乱? 伝わってくる気配は酷く不安定だ。戦っている? いや、そんな感じでもない。どういう事だ?


「一之瀬さん、向こうから相坂さんたちの気配を感じました。なにか異常事態があったのかもしれません」

「ッ――本当ですか?」


 俺は頷くと、アイテムボックスからバイクを取り出した。

 跨り、エンジンをかけると、すぐさま一之瀬さんも後ろに乗りこんだ。

 さっきはあんなに嫌がったくせに、全然表情が違うじゃないか。


「飛ばします。しっかり掴まって下さい」

「はいっ!」


 バイクを走らせ、俺たちは六花ちゃんたちの下へと急いだ。


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【モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 外伝】
▲外伝もよろしくお願い致します▲
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書籍7巻3月15日発売です
書籍7巻3月15日発売です

― 新着の感想 ―
[気になる点] 「ちなみに耐性スキルは獲得できなかった」と書いてあるけど一之瀬さん、読み返したら第68部分で乗り物酔い耐性獲得したと書いてありますよ…
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