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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います  作者: よっしゃあっ!


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150/274

150.スライムの進化系(海ver)現る




 移動中は大した障害もなく、俺たちは海にたどり着いた。

 四日前にも訪れた市役所近くにある浜辺だ。

 相変わらず人の気配もモンスターの気配も無く閑散としている。

 静かだ……なんか心が落ち着く。


「周囲に人影もなし……それじゃあさっそくスライムを探すか」

「わんっ」


 モモと一緒に浜辺を歩くと、早速スライムを見つけた。

 採り尽くしたと思ったが、あれからまた現れたらしい。

 かなりの数のスライムが浜辺に打ち上げられていた。

 何度見てもシュールな光景だ。


「相変わらず近づいても全く逃げないなぁ……」


 警戒心皆無だ。

 ホント、コイツラどうやって生き延びてるんだろう?

 まあいいか。とっとと捕まえよう。

 

「――『絶影』」


 新たに獲得したスキル『絶影』を発動させる。

『絶影』は『操影』の強化版スキルなので、効果そのものは以前と一緒だ。

 投網の要領で『影』を変化させ、モモと一緒に引っ張る。

 一気に十匹近くのスライムが獲れた。


「さあ、アカ。食べていいぞ」

「……♪(ふるふる~)」


 アカは上機嫌で捕獲したスライムを吸収してゆく。

 スライムは逃げ出さないからこうしてアカの近くに置いておけばいい。

 アカがスライムを吸収している間に、俺とモモはどんどんスライムを捕獲する。

 一体どれだけの数が居るのか、獲っても獲ってもキリが無い。


「……ついでに消波ブロックも補充しておくか」


 岸壁に見える消波ブロックもアイテムボックスへ収納してゆく。

 消波ブロックが消えると、そこに張り付いていたのか何匹かのスライムが海にぼちゃぼちゃと落ちてゆく。

 こんなところにも隠れていたらしい。


「……ん、待てよ? 浜辺でこんだけの数のスライムが居るなら、沖の方にはもっと数が居るんじゃないか?」


 沖から漂ってきたからこれだけ打ち上げられてるわけだし。

 試しに『望遠』を使って沖の方を見てみた。


「うわっ……凄いな……」


 案の定というべきか、予想通りというべきか、沖には無数のスライムが浮いていた。

 数えるのも馬鹿らしい程の数だ。

 あれだ、昔ニュースで見た越前クラゲの大発生。

 あの光景に似てる。

 正直ここまで数が多いと不気味だ。


 さて、どうするか……?

 今のところは索敵に反応はない。


(何かあれば一之瀬さんが知らせてくれるだろうし行ってみるか……)


 一之瀬さんはこの場に居ない。

 少し離れたビルの屋上で周囲を監視して貰っている。

 浜辺じゃ一之瀬さんのスキルを生かせないし、いざとなったらモモの『影渡り』ですぐに合流できるからね。

 ちなみにキキもそっちに居る。


「モモはここで待っててくれ。それと何かあれば直ぐに『影渡り』が使えるようにしておいてくれ」

「わんっ」


 モモはアカの傍にお座りする。

 一之瀬さんに『メール』を送り、準備はオッケー。


「んじゃ、行ってみますか」


 俺は新しい忍術を発動させる。


「――『水面歩行の術』」


 発動と同時に体が一瞬淡く光った。

 体の具合を確かめる。


「よし、問題なさそうだな……」


 効果は分かっていてもドキドキするな。

 水面に『足』を乗せる。

 チャプン、と。

 その瞬間、足は沈むことなく水面を『踏みしめた』。

 

「おぉ……」


 思わず声が漏れる。

 やっぱ実際に使ってみると驚くな……。

『水面歩行の術』はその名の通り水の上を歩くことができる忍術だ。

 消費MPは5、持続時間は1分弱。

 その間は自由に水の上を歩くことができる。


「あはは」

 

 こりゃ凄い。

 ちゃぷちゃぷと水の感触はあるのに沈まない。

 走っても問題ないし、踏ん張ってジャンプすることもできる。

 片栗粉で実験してたアレみたいだ。ダイラタンシーなんとかってヤツ。

 なにこれ、超楽しい。


 走る、走る。

 あっという間に沖合まで到着する。

 浜辺の方を見れば、既にモモとアカの姿が小さくなっている。

 よし、ここまで来れば充分だろ。


「んじゃ、さっそく捕まえるか」


 既に周辺には無数のスライムが漂っていた。

 お互いにぶつかったり離れたりしながら、ぷかぷかと波に揺られている。


「――『絶影』」


『影』を操作して、スライムを捕獲する。

 以前は地面に足をついてないと『影』のスキルは使えなかったけど、スキルの効果が向上し、今はこうして水面であっても『影』を操る事が出来る。

 

「うっし、大漁大漁」


 地引網ならぬ地引影を引っ張り、浜へと戻る。

 本当に漁師になった気分だ。


「ほら、アカ。たーんと食べな」

「…………(ふるふる~~~)♪♪」


 大漁のスライムを前に、アカの喜びがマックスである。

 体をねじったり、飛び跳ねたり、めっちゃ喜んでいる。

 アカがスライムを吸収している内に、俺は再び沖に出てスライムを捕獲。

 その作業を繰り返す事数回。

 アカの吸収したスライムは優に二百匹を超えるだろう。


「ふぅ……こんなもんかな」

「わんっ」

「モモもお疲れ様、ありがとな手伝ってくれて」

「くぅーん」


 モモをモフモフしながら、すっかり元気になったアカを見る。

 

アカ クリエイト・スライムLV4


 ステータスを見れば、レベルも上がっていた。

 前より力も増しただろうし、これで考えていた計画を実行に移せるな。


「よし、んじゃ戻るか。モモ、『影渡り』を頼む」

「わんっ」


 一之瀬さんと合流する為、モモが『影』を広げようとした。

 その瞬間、頭の中に声が響いた。

 

≪メールを受信しました≫


「……ん?」


 一之瀬さんからメールだ。

 直ぐに開く。

 

『――海の方から何か変なのが近づいてきます』


「海……?」


 なんだろうか?

 すると俺の『索敵』にも反応があった。

 沖の方を見れば、何かがこちらに近づいてくる。

 海面の一部だけが盛り上がり、周囲に白波を立てている。


「なんだ?」


 謎の何かはどんどん近づいてくる。

 ザザザザザザと水しぶきを上げて『ソイツ』は姿を現した。

 その姿はまるで――


「……クラゲ?」


 現れたのは巨大なクラゲだった。

 傘の部分はゆうに五メートルは越えるだろう。

 半透明の傘から延びる無数の触手は一本一本が人の腕程に太い。

 どうみてもモンスターである。


「~~~~(ふるふる)!!!」


 それを見て、アカがものすごい興奮していた。

 俺の裾を掴みながら、ばいんばいんと飛び跳ねている。


(……もしかして、あれもスライムなのか?)


 クラゲみたいなスライムだから、クラゲ・スライム? いや、ゼリーフィッシュ・スライムか?

 面倒だしスライムクラゲでいいか。

 これもスライムの進化種なのか……。

 今までのスライムと違い、コイツは『索敵』にちゃんと反応している。


(……もしかしてこの辺のスライムの主だろうか?)


 俺たちがスライムを取りすぎたから怒って出てきたとか?

 そんなどうでもいい疑問が湧く。

 アカは俺に体を摺り寄せて「あれほしい!あれほしい!」と訴えてくる。


「アレを吸収したいのか?」

「……(ふるふる)ッ!」


 イエスとアカは震える。

 どうやらアカはアレを吸収したいらしい。

 確かにあのサイズのスライムを吸収出来れば相当な力になるだろう。


(吸収させるから殺しちゃダメか……)


 ちょっと面倒だが、アカの頼みだし何とかしてみるか。

 それに新しいスキルを試すチャンスだ。

 一之瀬さんに『メール』を送る。

 直ぐに『了解です』と返事が来た。

 よし、準備オッケー。


「…………(ぶるぶるぶるぶる)!!!」


 スライムクラゲはこちらの敵意に気付いたのか、体を震わせ威嚇してくる。

 うねうねと動く無数の触手がこちらへ向けられる。

 向こうもやる気満々の様だ。

 

「んじゃ、行くかモモ」

「わんっ!」


 俺はモモと共にスライムクラゲへ戦いを挑むことにした。


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