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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います  作者: よっしゃあっ!


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128.西野君との話し合い


 西野君との話もあるが、先ずは市役所への報告を済ませなければならない。


 駆けつけた人に事情を話すと、俺たちはすぐに応接室に通された。

 対応してくれたのは、上杉市長と清水チーフだ。

 どうやら西野君のグループ同様、清水チーフのグループも休憩のため一旦戻って来ていたらしい。


 テーブルを挟んで二人が対面に座り、西野君たちが壁際に立っている構図だ。


 ちなみにキキはリュック(アカの擬態)の中に隠れて貰っている。

 雰囲気がピリピリしてるし、今キキの事を話すのはやめておいた方が良いだろう。

 下手すればパニックになって討伐されかねない。

 アカの中に居れば気配も消えるし、声さえあげなければまず気付かれることはないのだし。


 席へ着くなり、清水チーフが口を開く。


「――それで、どうしてこんな早く戻って来たの? それに……藤田さんは?」


 全員の視線が俺に集中している。……胃が痛い、

 頑張れ、俺。

 全力でイチノセさんを演じるんだ。


「えっと……その、ですね……」


 俺はたどたどしく必死に事情を説明した。

 県境の山中で自衛隊の生き残りに遭遇した事。

 自衛隊駐屯地はすでに壊滅していた事。

 それを伝えるため、俺だけが先行して戻ってきた事。

 藤田さんは自衛隊の生き残りと共にこちらへ向かってきている事などだ。


「―――という訳なんです。すいません」


「別に謝る必要はないでしょう。……そう、じゃあ藤田さんは死んだわけじゃないのね。……良かった」


 全てを聞き終えた後、清水チーフはほっとした表情になった。


(この人がこんな表情するなんて珍しいな……)


 それだけ藤田さんはこの市役所にとって必要な人物という事なのだろう。

 優秀な人材を失わなくてほっとしているわけだ。


「つまり、自衛隊の援助は受けられんという事か……」


 灰皿に煙草を押し付けながら、上杉市長がそう呟く。

 正確には生き残った六人は協力を約束してくれたけどね。

 

「となれば、すぐに次の手段を考えねばなるまい。藤田が戻って来た後の事も考えてな」


「ええ。他の班から商店街で蟻の上位種を見かけたという報告も入っています。もしかしたら、あの辺りに蟻の巣の本丸があるのかもしれません。それにゴーレムの戦闘跡もいくつか新たに見つかっています。もしかしたら、我々以外にも戦っている人たちが居るのかも……」


「時間も限られてる。蟻の方は商店街を中心に攻略を進めるべきだな。それと並行して人員の確保だ。我々以外にもゴーレムと戦っている者たちがいるのなら是非とも戦力に加えたい」


「それでしたら――」


 二人は俺たちが話した情報を元に、話し合いを進めていく。

 もっと動揺するかと思ったが、存外落ち着いてるな。


(多分、こういう事態も想定済みだったんだろうな……)


 藤田さんもそんな事を言っていたし、事前にあらゆる事態を考えて動いていたんだろう。

 もしかしたらここを出る前に、市長や清水チーフに伝えていたのかもしれない。

 あの人、ホントに頭が回るな。


 ともかく、こうして報告を終えた俺たちは、応接室を後にするのだった。






 そして場所は変わり、市役所の屋上。

 フェンス越しにこの辺り一帯を俯瞰する事が出来る。


「さて、ここなら邪魔は入らないだろう」


 そう言って、西野君はフェンスに寄りかかる。

 応接室を出た後、彼は休憩がてら、屋上からの監視役を買って出た。

 ただ休むだけでは他の人達に申し訳ないという体を装っていたが、本音は誰にも邪魔されずに俺と話しをするためだろう。


「そうですね……」


 現在屋上に居るのは、俺、西野君、六花ちゃんの三人だ。

 柴田君と五所川原さんは扉付近に待機して貰っている。

 誰かが入って来ないように監視する為だ。


「まずは変装を解いてくれないか? 本当の姿を見せてくれるんだろ?」

 

「ええ、勿論です」


 俺は『変化の術』を解く。

 一之瀬さんの外見が陽炎のように揺らめき、元の俺の姿があらわになる。


「ッ……成程、それが本当の姿か……。六花から話は聞いていたが、こうして見ても信じられないな。姿を自由に変えるスキルだなんて……」

「色々と制約はありますけどね。ともかく、これが俺の本来の姿です」


 じーっと俺を見つめていた西野君だが、やがて「あっ」と声を上げた。


「もしかして、あの時の……」

「え?」

「あの時――学校の食堂で、葛木と対峙していたのはアンタだったのか……」


 葛木……? ああ、魔物使いのあの子か。

 学校でモンスターパニックを引き起こし壊滅させた最悪の少女。

 結果として服従させていたダーク・ウルフに離反され、その闇に飲み込まれて死ぬという凄惨な最期を遂げたが、もし彼女が今でも生きていたら間違いなくモンスター以上の脅威になっていただろう。


「そうですね。というか、あの時はフード被ってたのによくわかりましたね」


 俺が頷くと、西野君は頭を下げた。

 

「ではまず礼を言わせてください。六花を助けてくれてありがとうございます」


 敬語になってる。

 前から思っていたが、仲間が絡む時って素直だよな、西野君って。

 

「あー、別に構いませんよ。困った時はお互い様です。あと、そのお礼は俺じゃなくて一之瀬さんにしてもらえませんか? 彼女がいなければ、相坂さんを助ける事は出来ませんでしたから」


「そう、なんですか……?」


「そうなんです」


 これは事実だ。

 イチノセさんの回復薬ポーションが無ければ、六花ちゃんは助けられなかった。


「……成程、分かりました。ちなみに、“本物”の彼女は今どこに?」

「あそこのビルの屋上に居ますよ」


 俺は離れたところに在るビルの屋上を指差す。

 ちょっと距離は遠いが、俺には『望遠』や『身体能力向上』がある。

 屋上に居る彼女の姿がはっきり見えた。

 あ、目が合った。イチノセさんが驚いてる。「マジかよ……」みたいな顔された。


「……見えるんですか? この距離で?」

「ええ。……見えませんか?」


 あえてそう答えると、西野君は声を詰まらせた。

 あ、『メール』きたわ。多分、イチノセさんだ。


「……嘘ではなさそうですね」


 信じられない、と西野君は呟く。


「それもスキルですか?」

「ええ。『望遠』ってスキルです。遠くのモノがよく見えるようになります」


 別にこれは隠さなくても良いだろう。

 俺は素直に話す。


「……変装のスキルに遠くを見るスキル、それと乗り物を使いこなすスキルも持ってましたよね? ……一体いくつスキルを持ってるんですか?」


 さて、どう答えるべきか?

 少し考える素振りを見せてから、俺は答える。


「そうですね、二十くらいでしょうか」

「二十……ッ!」


 西野君は絶句する。

 本当は三十以上(統合したスキルも含めれば四十以上)だけど、それは言わなくても良いだろう。

 驚いていた彼だったが、やがて意を決したように口を開いた。


「……クドウさん、“右手を上げて貰えますか”?」

「え? ……えっと、こうですか?」

「ッ……!」


 素直に右手を上げると、西野君は殊更驚いたような表情になった。

 なんだよ、いったい?


「……今何か違和感がありましたか?」

「え? ……いえ、特に何も」

「そう、ですか……信じられないな……」


 ホントに何なんだろうか?

 西野君は溜息を一つ。そして表情を改める。


「クドウさん、まず最初に聞かせて下さい。どうして俺たちと手を組みたいと思ったんですか? ……正直、俺にはアナタが他人の助けを必要としている様には見えない」


「そうですかね?」


 ぶっちゃけ、俺はいつも必死なんだけど。

 この六日間で俺が何度死に掛けたと思ってるんだ。


「学校での事を考えれば、戦闘系、それに隠密系のスキルも持っているんでしょう? 一体どうやってそれだけ多彩なスキルを手に入れたのかは知りませんが、それだけの力があれば、無理に他人と組む必要なんてない筈だ。少なくとも、俺ならそうします」


 ……やっぱりこの子、鋭いなー。

 俺の本質をめっちゃ的確に見抜いてる。

 

 ――他人と関わるのが面倒臭い。


 ああ、今でも俺はそう思っているさ。

 思ってるけど、そう上手くいかないんだよなぁ、この世界は。


「まあ、そうですね。その通りだと思います」

「なら――」

「だからこそ、君と手を組みたいと思ったんです」


 切り捨てる者はばっさり切り捨てる。近しい者は、絶対に見捨てない。

 西野君はそういった線引きがきちんと出来ている。

 この状況で、そういうのが出来る奴は意外と少ない。

 まあ、あの生徒会長や魔物使いの子ならバッサリ切り捨てるだろうけど。

 

「俺たちが手を組めば、お互いに足りない部分を補える関係になれると思います」


 俺に足りていないもの。

 それは人手とコミュニケーション。これ重要。

 いくらスキルを手に入れようと、いくらステータスが上昇しようと、俺一人ではどうにもならない問題なんていくらでもある。

 コミュニケーションが苦手な俺やイチノセさんにとって、西野君はまさしくベストパートナー。

 逆に西野君にとっても、俺たちという戦力に加わるメリットはデカいはず。


「それは……確かにそうかもしれませんね……」


 悩む西野君。

 こちらの意図を測りかねているのだろう。


「じゃあ、こうしましょう。とりあえずこの三日間だけ手を組むというのはどうでしょう?」

「三日間……ですか?」

「ええ、少なくとも蟻とゴーレムを打破できれば状況も変わって来るでしょう。それまでの仮パーティーということでどうでしょう? 無論、組むからにはお互い全力で事に当たります」


 少し考え、西野君は頷く。


「……そうですね。どの道この状況を打破できなければ詰みですし。それに……」


 ちらりと、その視線が六花ちゃんに向けられる。


「せっかくアイツも親友と再会したんです。こんな状況ですが……出来ればアイツには笑っていてほしい。アイツの為にも、アナタとは良い関係を築きたいと思ってます」


「……そうですね」


 成程、それが本音か。

 あっさりと了承したのは、どうやら六花ちゃんの存在が大きかったようだ。

 パーティーを組まなければ、彼女とイチノセさんが離れ離れになると思ったらしい。

 というか、さらりとそういうことを言える辺り西野君、ホントイケメンだね。

 学校ではさぞかしモテモテだったのだろう。


「クドウさん」


 西野君は右手を俺に差し出す。


「どうかよろしくお願いします」

「ええ、こちらこそよろしくお願いします」


 俺はその手をしっかりと握る。

 そして、手を放しお互いの拳をぶつけ合う。

 そしてふっと笑った。


(うーん、こんなにうまく行くなら最初から素直に話した方が良かったのか……?)


 そうすればメールとかで拗れる事も無かったんだし……いや、でもイチノセさんのコミュ症はどうにもならないしなぁ……。


(なんだかんだ遠回りをしたけど、結果としていい方向に転がったと考えるべきだろう)


 ああ、そうだ。アカやキキの事も説明しないとな。

 この感じならば、話しても問題ないだろう。


「それと西野君、もう一つ話しておかなきゃいけない事があるんですが」

「……? なんですか?」

「俺の仲間を紹介します――キキ」


「きゅー♪」


 リュックからキキが顔を出す。


「……は?」


 西野君はポカンとした表情になった。


「レッサー・カーバンクルのキキです。それと、こっちがスライムのアカです」

「……♪(ふるふる~)」


 リュックの擬態を解いて、アカが本来の姿に戻る。

 そのまま俺の頭の上に乗って、ぷるぷるとお辞儀?をした。


「……は? えっ? はぁっ!? ええええええええええっ!?」


 めっちゃ驚いてる。

 すげー、西野君こんな表情もするのね。

 

 その後、きちんと二匹の事を説明し、なんとか西野君は納得した。


「……あり得ない。あり得ないだろこんなの……。なんなんだよこの人……」

「きゅー♪」


 頭を抱えながら、何やらブツブツ呟く西野君をキキが慰めてる。

「だいじょうぶー?」と前脚でポンポン。

 どうやらキキは西野君の事をいたく気に入ったらしい。


 さて、それじゃあ次は今後の方針と情報のすり合わせだな。


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▲外伝もよろしくお願い致します▲
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書籍7巻3月15日発売です
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 最初のプロローグで就職して3年とありましたよね 高卒で企業に就職したんですか? てっきり大卒(短大)で今 23〜25最だと思ってました
[一言] 右手を上げてくれますか は命令スキルか……。 操れないことに驚いたのはそんだけ自分との差がある事になのか それともいざと言うときに命令が使えない事に対してか。 何にしても同族殺しの件がいつ…
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