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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います  作者: よっしゃあっ!


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126.反射と新たな職業


 本来、スキルの効果は十分に検証を行わなければならない。

 なぜならそれが自分や仲間の生存に直結するからだ。

 キキの『反射』も本来であれば、まずその効果範囲や持続時間、使用回数などを検証すべきなのだろう。

 間違っても、ぶっつけ本番でモンスター相手に使う代物じゃない。

 ましてやそれがネームドクラスのモンスター相手ならば尚更だ。


(でも今回は状況が違う……)


 ただ逃げればいいという状況じゃない。

 コイツにキキの『反射』が有効かどうかで、今後の戦況が大きく変化する。

 この絶望的な状況を打開できるかもしれないのだ。


「……キキ、さっきのスキル、もう一度いけるか?」

「きゅー」


 キキは頷く。


「じゃあ、俺が合図をしたら頼む」

「きゅっ」


 ゴクリ、と俺は唾を飲む。

 もしキキの反射が通じなかったら、アカの防御が間に合わなかったら、俺が躱す事が出来なかったら――。

 きっと俺は死ぬだろう。

 そう思うと怖い。

 ああ、メチャクチャ怖いさ。


 でも、生き延びるためにはやるしかないのだ。


 生き延びる為に、死に近づく。

 ああ、なんと矛盾した行為だろうか。

 本当にくそったれだこの世界は。


 「……(ふるふる)」


 擬態したアカが震える。


 ――だいじょうぶ、いっしょ。


 どうやらアカなりに励ましてくれている様だ。

 ありがとな。おかげで少しだけ気持ちが楽になったよ。


「ボルルルルルルルルルルルルルルルルルルルッッ!」


 ティタンが動いた。

 その巨腕を振り上げる。

 消波ブロックとは比べものにならない程の質量の塊が迫りくる。

 それはもはや巨大な壁だ。

 空気が押しつぶされるような強大なプレッシャー。

 それを肌で感じながら俺は叫んだ。


「ッッ!!! キキ! 今だッッ!」

「きゅーっ!」


 キキの額の宝石が輝く。

 目の前に淡い光を放つ扇状の薄膜が現れる。


 そして――激突する。


 キキの反射膜が、ティタンの一撃を正面から受け止めた。

 轟ッ! と周辺の大気が震え、周囲の建物が音を立てて崩れる。

 激突の余波だけでアスファルトが断裂し、建物をなぎ倒し、景色を一変させた。

 廃墟と化した商店街の一角。

 その中心で俺は――





「生き……てる?」




 二本足で立っていた。

 体に異常は――ない。

 ぐっぐっと手を握り、自分が生きている事を確かめる。


「キキ、アカ、無事か?」

「きゅー……」

「……(ふる、ふる)」


 二匹とも無事なようだ。

 怪我一つない。

 では、アイツは?

 すぐさま俺はティタンの方を見た。

 土煙が収まり、ヤツの姿が映し出される。


「ボルォォ……」


 奴の拳がひび割れていた。

 いや、拳だけじゃない。腕も、足も、卵のような体にもひびが入っていた。


「――ォォ………ルォォォォ………」


 ボキン、と指が砕けて地面に突き刺さる。

 バランスを崩して奴は尻餅をついた。

 それだけでグラグラと激しい揺れが巻き起こった。


「……やった」


 無意識に拳を握りしめる。

 感情が体の奥底から湧き上がってくる。


「やった!やったぞ、キキ!アカ!反射は!キキの反射はアイツにも有効だ!」


 俺は笑った。

 心の底から歓喜の感情が湧き上がってくる。

 勝った。俺は賭けに勝ったのだ。


「きゅー♪きゅー♪」

「……♪(ふるふる)」


 キキとアカからも喜びの感情が伝わってくる。

 ああ、そうだろうよ。

 絶望的だと思った状況。

 そこに僅かでも希望が見えたのだ。

 これが嬉しくない筈がない。


「ボルルルゥゥ……?」


 ティタンは何が起こったのか分からないというように低い呻り声を上げる。

 その赤く濁った瞳が俺たちに向けられる。


「ッ……!」


 即座に理解した。

 アレは相手を『敵』と認識した者の眼だ。

 ぞわっ、と背筋が凍る。


「ッ!アカ!」


 俺はとっさに『キキ』ではなく『アカ』の名を叫んだ。

 スキルか生存本能か、あるいはその両方だったのかもしれない。

 果たしてそれは正しかった。


「ルルルルルゥゥゥゥウウウオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

「~~~ッッ!(ふるふる)」


 ティタンが叫ぶのと、ほぼ同時にアカが肉体を膨張させた。

 俺たちの体をアカが包み込んだ―――その刹那、俺たちは吹き飛ばされた。

 凄まじい衝撃が肉体を襲う。

 バウンドしながら何十メートルも後方へ飛ばされる。


「ガハッ……な、何だ?」


 一体何が起きた?

 見れば、周囲の建物や地面が大きく抉れていた。

 巨大な穴がいくつも空き、建物を貫通して向こう側の景色を見る事すら出来る。

 まさかと思い、ティタンの方を見る。

 右腕が無くなっていた。

 

「……腕を投げたのか?」


 ボロボロにひび割れ使い物にならなくなった右腕。

 それをアイツは千切って投げつけたのだ。

 投げつけた腕が散弾銃の様に拡散し、周囲にあるモノをまとめて吹き飛ばしたのだろう。


「化け物め……!」


「ルォォォォ……」

 

 ティタンは残った方の腕で周囲の瓦礫をかき集め、ザラザラと口へ流し込む。

 ぼりぼりと咀嚼し、飲み込むと奴の体に変化が起きた。

 足、そして胴体と、ひび割れが修復してゆくではないか。

 おいおい、あの巨体でさらに再生能力まで持ってるのかよ。

 本当に化物だな。


「……ルォォォ……」


 奴はそのまま食事を続けていたが、やがて地面の中へと沈んでいった。

 右腕が生えてなかったところを見ると、回復するために撤退したのか?

 

(何にせよ助かった……)


 戦闘が終わったことに俺は安堵した。

 そして思いっきり脱力した。

 怖かった。死ぬかと思った。めちゃくちゃヤバかった。


「でも、収穫はあった」


 キキの反射が有効だと分かった以上、対策を立てられる。

 向こうも警戒しているだろうが、それでも一歩前進したと言えるだろう。


「ともかく俺たちも一旦ここを離れるか」


 どこか腰を落ち着かせられる場所で一息つきたい。

 俺たちも気配を消し周囲を警戒しつつ、その場を後にするのだった。




 それからしばらく俺は近くの民家で体を休めた。

 時刻は既に昼近くになっていたので適当に昼食を済ませる。

 

「さて、それじゃあ職業を選択するか」


 待ちに待った職業選択の時間だ。

 先程の戦闘で溜まったJP30ポイント。

 これをつぎ込めば、ようやく次の上位職が手に入る。

 現在の俺の職業は『忍者LV7』、『狩人LV7』、『影法師LV5』だ。

 ポイントを全部つぎ込めば、『忍者』か『狩人』のどちらかを上位職へ変更することが可能だ。


「やっぱ、選択肢としては『忍者』だよなぁ……」


 火遁の術とか攻撃用の忍術は覚えられなかったけど、もしかしたら上位職で覚えられるかもしれない。

 でも『忍者』の上位職ってなんだろうか?

 『上忍』? 『御庭番』? もしくは『火影』とか?


「まあ、見ればわかるか」


 俺はJPを使い、『忍者』のレベルを上げようとした。

 だが、その直前、


「……(ふるふる)」


 アカが震えた。

 

「どうしたんだ、アカ?」

「……(ふるふる、ふるふる)」

「もしかして、アカのお薦めは『狩人』の方なのか?」


 そうだよー、とアカは震える。

 アカのお薦めは『狩人』なのか……。


「きゅー」


 キキもアカに賛成するように頷いている。

 そういえば以前、『影法師』を選んだ時も、モモやアカに薦められて選んだんだっけ?

 

 うーん、悩むなぁ……。

 でもこういう時のモモやアカの勘って外れた事ない。

 きっと何かあるのだろう。忍者の上位職よりもメリットのある何かが。

 

「……よし、分かったよ、アカ」


 しばし考えた末、俺はアカを信じることにした。

 ポイントを使い、『狩人』をLV10まで上げる。

 さあ、どうなる?


≪狩人のLVが上限に達しました≫


≪上位職及び派生職が選択可能です≫

≪第四職業が解放されました≫


≪上位職『熟練狩人』が解放されました≫

≪上位職『追跡者』が解放されました≫

≪上位職『野伏』が解放されました≫


≪職業における一定条件を満たしました≫


≪派生職『役者』が解放されました≫

≪派生職『詐欺師』が解放されました≫

≪派生職『駆除人』が解放されました≫

≪派生職『祈祷師』が解放されました≫



 新たな上位職と派生職が提示された。


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― 新着の感想 ―
詐欺師…詐欺師かー。役者の上位職な気もする。
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