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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います  作者: よっしゃあっ!


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124.レベリング


 現在、俺は市街地をバイクで駆け抜けていた。


「もうすぐ討伐区域に入るな……」


 市長のマップに表示された『討伐区域』。

 それは市役所を中心とした直径一キロほどの領域を指す。

 この中に入れば、蟻のモンスター、そしてゴーレムに出くわす可能性が非常に高くなるだろう。

 だが、それでも行くしかない。


「西野君たちの話では確かこの辺だったな……」


 俺は市役所へは向かわず、その近くにある商店街に来ていた。

 バイクを停車させ、アイテムボックスに収納する。

 ここからは徒歩だ。


「……ここも酷いな……」

「きゅぅー……」


 商店街は酷い有様だった。

 どの店も荒らされボロボロだが、それ以上に目に付くのは死体だ。

 目を覆いたくなるような凄惨な死体があちこちに転がっている。

 血と腐臭が鼻をしびれさせる。

 だがそんな死体を見ても俺は何も感じなくなっていた。


「『精神苦痛耐性』の効果だろうな……」


 酷い匂いがする。血だまりで足を滑らせないよう注意しないと。

 その程度の感想しか出てこないのだ。


「スキルの効果は凄いけど……人間性が薄れてる気がする……」


 人としてなくしちゃいけない当たり前の感性。

 上位のスキルは、それらをいとも簡単に塗り替えてしまっている様な気がする。


 まあ、この数日で嫌という程死体を見てきたんだ、

 慣れてきたってのもあるんだろう。

 死体を啄んでるハトやカラスの横を通り過ぎながら、俺は商店街を歩く。

 そろそろ準備した方が良いだろう。


「キキ、支援魔法バフを頼む」

「きゅうー」

 

 キキの額の宝石が赤く光る。

 次いで俺の体が淡い光に包まれた。

 ステータスを確認する。


クドウ カズト

レベル19

HP :210/210

MP :58/58

力  :157(+18)

耐久 :153(+15)

敏捷 :338(+55)

器用 :308(+40)

魔力 :35

対魔力:35


 やっぱり元の数値が高い分、『敏捷』や『器用』の上昇値も高いな。

 キキの支援魔法は上昇する数値は毎回異なるが平均して一割~二割ほど上昇する。


「よし、次はアカ、頼む」

「……(ふるふる)」


 アカが擬態したオークの包丁を握りしめる。

 これで準備は万端。


「市役所へ戻る前に少しでもレベルを上げておきたいからな……」


 ゴーレムやネームドクラスは勘弁だが、それ以外なら今の俺たちならそうそう遅れを取る事はないだろう。

『索敵』、そして『危機感知』、『敵意感知』が反応を示す。


「……来たか」


 モンスターの気配を感じる。

 一匹ではない。


(十……いや、二十匹以上は居るな)


 かなりの数だ。

 だが気配はするが姿は見えない。

 となれば、地下に隠れているのだろう。

 気配を感じるってことはゴーレムじゃない。

 俺は内心ほっとする。

 十中八九、蟻の方だろう。

 カタカタと地面が揺れる。


「さあ、経験値を稼がせてもらうぞ」


 今回俺はあえて潜伏系のスキルをオフにしていた。

 俺自身が餌となってモンスターをおびき寄せるためだ。

 今までの俺とは正反対の行動。

 だが自衛隊の兵器が手に入らなくなり、他の町や県にはより強力なモンスターが居ると分かった今、これまで通りの行動をとってばかりもいられない。

 リスクばかりを恐れていては前に進めないのだから。

 

 ビキリ、と地面にひびが入る。

 いくつもの穴が周囲に出現する。


「「「「ギィィィィッッ!!」」」」


 そして穴の中から大量の蟻が姿を現した。

 人ほどの大きさもある巨大な蟻。

 巨大蜘蛛も大概だったが、どうしてデカい虫ってのはこうも恐怖心を煽るんだろうな。

 地面に何箇所も穴が開き、次々に蟻共が這い出てくる。


「キキ、しっかり掴まってろよっ」

「きゅっ!」


 俺は蟻たちが接近してくるのを待つ。

 まだだ。

 もう少し、あともうちょっと。


「ギィィ」

「キシッ!キシッ!」


 蟻たちは牙をカチカチと鳴らして威嚇する。

 既に地上に出てきた蟻の数は数十匹になるだろう。

 周囲を埋め尽くすほどの黒い濁流。

 その中心で、俺は小さく呟いた。

 

「―――アイテムボックスオープン」


 俺はアイテムボックスから『電柱』を取り出し、地面に突き立てる。

 突き立てるのは、先程蟻たちが出てきた穴だ。


「ギィ!?」


 突如出現した電柱に蟻たちの動きが硬直する。

 その隙を見逃さず、俺は一気にジャンプし、電柱に掴まる。

 そして頂上まで一気に駆け登る。


「ははっ、こりゃ便利だな」


 忍術『壁面歩行の術』。

 効果は文字通り、重力を無視して壁や天井を歩く事が出来るというモノ。

 消費MPは一回につき3。

 それを使って俺は一気に電柱を上ったのだ。


 立体的な移動を可能にする便利な忍術だが、当然欠点もある。

 まず移動の際には必ず体の一部―――正確には片足が壁にくっ付いてないといけない。

 しかもジャンプしたり、他の建物に飛び移ろうとするとその瞬間に効果は失われる。

 つまり壁から壁、建物から建物に飛び移る場合は、その都度、忍術を発動させなきゃいけない。

 『変化の術』と違い、他の『忍術』との併用は可能だが、俺のMPの少なさを考えれば、おいそれと無駄遣いは出来ない。


 あっという間に天辺まで到達した俺は、地上を見下ろす。

 蟻たちは俺がいる電柱を囲むように集まってきた。

 ある個体はガリガリと牙を突き立て、電柱をへし折ろうとする。

 またある個体は、他の個体を押しのけて電柱を上ろうとする。

 さながら運動会の棒倒しのような光景だ。

 

「高い所からだと、どこに蟻たちがいるかよく分かるな」


 計算通りだ。


「そんじゃあ、いくか」


 俺はアイテムボックスに収納していた『ソレら』を解き放つ。


 より高く、より広範囲へ。

 

「ギィ!?」

「ギギィィィ!?」

「ギィィイイイイイイイイイ!?」


 蟻たちには突然視界が暗くなったように感じただろう。

 視界を覆い尽くす程の大量の岩が頭上に出現したのだから。


 ―――消波ブロック。


 一個二トンの岩の塊。

 海で手に入れた新しい質量兵器だ。

 

「潰れろ」


 そして出現した消波ブロックは重力に従い地面に落ちる。

 その光景はさながら隕石の雨だ。

 密集していたジャイアント・アントたちは突如出現した岩の雨に対応できるはずもなく、次々にその身を押しつぶされていった。

 激しく揺れる地面。

 グチャグチャと蟻達の潰れる音。

 そして消波ブロックが地面を叩きつける音が周囲に響く。


≪経験値を獲得しました≫

≪経験値が一定に達しました≫

≪クドウ カズトのLVが19から20に上がりました≫


≪経験値を獲得しました≫

≪経験値が一定に達しました≫

≪クドウ カズトのLVが20から21に上がりました≫


 大量の経験値獲得を告げる天の声。

 どうやら今ので一気に二つもレベルが上がったらしい。

 そりゃこれだけの数を倒せばそれ位は上がるか。


「こりゃあ強力だな……」


 その効果に俺は我ながら感心してしまう。

 半径三十メートル程に渡って行われた絨毯爆撃。

 いや、爆発はしてないか。物量弾幕か?

 ともかくその効果は絶大だった。


「雑魚狩りにはもってこいだな」


 派手で目立つが、その分効果はデカい。

 地上に降りて電柱と消波ブロック、それに蟻たちの魔石を回収する。

 アイテムボックスには、『ジャイアント・アントの魔石(極小)』と表示された。


「(極小)ってことは、ゴブリンやゾンビと同格か……」


 一体一体の強さはそれ程でもないのだろう。

 その分、数でカバーしているんだろうな。


「キキ、アカ、食べるか?」

「きゅー♪」

「……♪(ふるふるー)」


 手に入れた大量の魔石は、キキとアカに与える。

 一応モモに上げる分は取ってある。

 合流したらあげよう。そして思う存分モフモフするのだ。


「……お?」


 そんな事を考えていると、再び『索敵』が反応した。

 蟻たちが出てきた巣穴。

 そこから新たなモンスターが姿を現した。


「キシィィィィ……」


 先程までの奴らと姿が違う。

 二足歩行の蟻と言えばいいのだろうか?

 ハンター◯ンターのキメラアントの女王蟻みたいな見た目だ。

 

「上位個体か……」


 先程までの蟻たちと違い、武装もしている。

 四本の手には、ファンタジーで見かける様な片手剣と盾が装備されていた。


「蟻の戦士……ソルジャー・アントってところか」


 更に別の巣穴からもソルジャー・アントが現れる。

 その数、四体。

 どうやら向こうは完全に俺を『敵』と認識したらしい。

 

 だが、それはこっちとしても望むところだ。

 ここでたっぷり経験値を稼がせてもらうぞ。


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【モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 外伝】
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書籍7巻3月15日発売です
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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しく読ませてもらっております。 1点修整をご検討いただけると幸いです。 消波ブロックの重量は2tではなく20tです。 よろしくお願いいたします。
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