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142/220

No.142:どこから話せばよいのやら

ID:1053851様、今回も誤字報告有難うございました。いつも助かってます。引き続きよろしくお願いします。


 オレはそのまま、寝たふりをしようかどうか迷っていた。

 5秒ほど逡巡する。

 結局オレは迷いながら、言葉を探した。


「ああ……さて、どこから話せばよいのやら、だ」


「悪い。もちろんまだ話せないということだったら、言わないでくれ。ただ俺が気になってるだけだ。いわゆる下衆の勘繰りというヤツだ」


「いや、そりゃ気になるだろ」

 オレは苦笑する。


「まずな……オレは綾音のことが好きなんだよ」


「……やっぱりそうだったのか?」


「やっぱり、って?」


「いや、なんか最近やけに仲良かっただろ?」


「あー……それはあんま関係ないな」


「そうなのか? それじゃあ……いつからだ?」


「いつからって……いつから好きになったか、ってことか?」

 

「ああ」


 瑛太も綾音と同じことを訊いてくるんだな。


「最初からだよ。一目惚れだ」


「えっ? そうなのか?」


「そうなんだよ」


「それは全然気がつかなかったぞ」


「そうだろうな」

 瑛太に気づかれるようだったら、きっと今ごろ世界中に知れ渡っている。


「で……その事を綾音に言った、と?」


「ああ……それがな」


 オレはこの間の昭和純喫茶での出来事を、一部を除いて全て話すことにした。

 その一部とは……綾音の瑛太に対する気持ちだ。

 それは絶対にオレから言ってはいけない。

 綾音が直接、瑛太に伝えなきゃいけないんだ。


 オレの話を一通り聞いた後、瑛太は呆れ気味に口を開いた。

 

「……そんなことがあったんだな。全く驚きだ」


「ああ。オレもビックリだった。まさかエリちゃんにバレていたとはな。それにオレもエリちゃんのことは全く気づけなかった」


「そうか……でも海斗はナイスフォローだったな」


「ああ、本当に海斗には感謝してるよ。海斗がいなかったら、こんな風に話は落ち着かなかったと思う。変な話だけど、オレはこれで少しでも海斗の思いが届いてくれるといいなって、勝手に思ってる。」


「そうだな……て言っても、最後は当人同士の問題だけどな」


「ああ、その通りだ」


「それで……誠治は結局のところ、綾音とはどうなんだ?」


「ど、どうなんだって……」

 お前がそれを聞くか?


「今まで通りだよ。オレがそうしてくれって頼んだんだ。てか『今オレが綾音に告ったって振られるだけだろ?』って聞いたら、『そうだけど……』って即答されたわ」


「そうなのか?」


「そうなんだよ」

 オレは少しヤケになってそう言った。


「……でも最近、いい感じじゃないのか?」


「だからそれはいろいろあったからだろ? オレは逆にちょっとやりにくいわ」


「……俺にできることはないか?」


「やめてくれよ!」

 オレは声が大きくなってしまった。

 冗談じゃねぇ。


「そ、そうか」


「あ、ある。あるぞ。瑛太にできること」


「おお、なんだ?」


「何もしないでくれ」


「……ん?」


「オレと綾音のことは、できるだけ触れないでくれ。今まで通り、冷やかすことも茶化すことも止めてほしい。そっとしといてくれ」


「……そうか。わかった」


「頼むぞ」


 オレはふぅっとため息を吐いた。

 それから瑛太とポツリポツリと話したが、いつの間にかオレたちは意識を手放していた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 誠治が綾音好きって瑛太にバレた時点でもう綾音の目はなくなるっすね;
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