【第三部】 開始 二章 後悔と改心と決意 6
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爆発音か煙なのか、はたまた両方か。
ビルの屋上に発生した事故を、誰かが通報したようで、遠くから消防のサイレンが聞こえてきた。
「こいつらどうする?」
悠斗が恭介に聞くと、恭介は放っておくようにと答えた。
仙波の部下なら、早晩回収されるだろう。こいつらを問いただしても、たいして情報は持っていまい。
まずは島内と瑠香に合流する必要がある。
「こんな時なんだけど、言っていいかなあ」
白井が恭介の肩に手をかける。
「腹減った!」
丁度その時、瑠香から合流場所が届いた。
それは隣駅にある、ファーストフード店だった。
「人目の多いトコが良いのよ」
瑠香なりのリスクマネージメントらしい。
恭介と島内が直接話をするのは、初めてである。
ただしメールなどを通じて、今回の計画を共有していた。
恭介からは、事前に島内に依頼をしていた。
牧江が改心したら、裏切り者扱いをうけるだろうことは、容易に推測できた。
場合によれば、荒っぽい方法で牧江を拉致するくらいやるだろう。
そこで、牧江の兄にはとんぼ返りになってしまうが、そのままアメリカに、牧江を連れていって欲しいと伝えてもらっていた。
「島内さん、藤影の部下である、仙波という男をご存じですか?」
島内の目に銀色の光が走った。
「藤影侑太らの背後にいるのは、そいつです」
一方。
牧江が逃げたという情報は、侑太にも届いた。
侑太は牧江に連絡を試みたものの、既にスマホは不通となっていた。
あのビッチ!
侑太は牧江に対して、もともと愛情など持ち合わせていない。
ただ、欲望の捌け口としては重宝していた。
イラつくときは、呼び出し、発散した。
都合の良い玩具だった。
それが勝手にいなくなるなんて許せない!
玩具を壊すのは、自分の役目だ。
侑太は戸賀崎に連絡する。
「あいつ、外部生の松本。好きにしろ」




