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第二部

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【第二部】失くしたものと得たものと 四章 青空に向かって 3


戸賀崎は、つかみかかったが、非常勤講師の東山はひらりと身をかわした。

戸賀崎は床に転がり、そのまま喚き始めた。


東山は、一応聞いていたが、ふう、とため息をつく。

「日本語として難しい訴えだが、要は君が言いたいのは、私の出題内容が不適切だった、ということで良いのかな?」

戸賀崎は、まだ喚く。

「そ、そうだぞ! 非常勤講師のくせに、生意気だ!」

お前なんか、いつでも馘にしてやる、とまで言った。


東山はいたって冷静に、戸賀崎を諭す。

「まず、第一に、君が正解できなかったらしい、『動物門間の系統図』だが、教科書にきちんと載っている図で出題した。そして、数年前に最高学府と言われる大学で出題された、入試問題を参考にしている」

徐々に戸賀崎の鼻息は、小さくなってくる。

「第二に、私は、生物系の最高教育を施して欲しいと、校長と理事長に頼まれたので、君たちにも難易度の高い授業を行っている」

理事長と聞いて、戸賀崎はだんだん頭が下がってくる。

「最後に、私は所属大学での研究と学生指導に忙殺されているので、馘になったところで痛くも痒くもない。むしろそうしていただいた方が、有難いくらいだ」

何か質問はあるかと問われ、戸賀崎はうなだれた。

そして始業チャイムが鳴ったため、すごすごと戸賀崎は自分の教室に向かった。

戸賀崎が出ていったあと、東山は呟いた。

「ドーパミン過剰放出系かな、今の生徒は」


その日の昼休み、恭介や白井に、美術部の三年生から、生徒会企画への協力依頼と企画書が回ってきた。

「コスプレ演劇? 何コレ」

白井が素っ頓狂な声を出す。

企画書には『人気アニメの再現&オリジナルストーリードラマ』などと書いてある。

美術部への依頼とは、劇の背景となる書割と、一部の衣装の製作だった。

そういえば、牧江はコスプレーヤーとしても有名だ。

「牧江による、牧江のためだけの企画、みたいな…」


「ヒロ、このアニメって知ってる?」

恭介が白井に尋ねた。

企画の元になるアニメのタイトルは

『悲恋の恋人同士だった二人は魔人によって引き裂かれた後、転生して、私は鳳凰の力、彼は麒麟の力を得たので、今度こそ闇の魔族を倒し、ハッピーエンドを迎えます!』

だった。

白井は首を横に振る。隣にいた綿貫が

「あんまり見たことないけど、内容は、多分タイトルそのままだと思う」

と答えた。

鳳凰とか麒麟とかが出てくるアニメがあることに、恭介は少し驚き、ちょっとだけ嬉しかった。詳しい内容は、あとで瑠香に聞いてみよう。それよりも…


「綿貫、この企画、使えるよ、復讐に」

恭介は二人に宣言した。


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