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【本編完結】異世界から戻ったので、とりあえず復讐します~少年が大人になる通過儀礼~  作者: 高取和生@コミック1巻発売中
第六部

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【第六部】暁光 最終章 始まりの地 1

新年を迎え、一週間。


恭介は七日の昼前に、セッコク島に着いた。

同行したのは、亜由美と悠斗。あとから畑野健次郎が、瑠香と侑太を連れて来る。


飛行機で鹿児島まで飛び、セッコク島までは、船で渡る。

セッコク島の開発に当たり、古びた桟橋を停泊できる港に変えた。


恭介は中古のフェリーを用意し、今までの定期便に加え、本土と頻繁に行き来出来るよう、取り計らっていた。もっとも、フェリーといっても小型の船舶で、海を渡る時にはそれなりに揺れる。


「母さん、船酔い大丈夫だった?」

「ええ、大丈夫よ。風が気持ちよかった!」

朗らかに亜由美は答えた。


この辺りの島は、冬場は本州よりも気温が高いが、意外に雨の日も多い。

今日は天候に恵まれ、海上には爽やかな風が吹いていた。


かつて藤影薬品の工場だった空き地には、真新しいゲストハウスが建てられていた。


「あら、ステキ!」

亜由美ははしゃぐ。


「泊まれるのか?」

悠斗が恭介に訊く。


「うん。元々、インフラ整備はされていたから、電気も水道も通っているし、Wi-Fiも完備してる。食事が出ないくらいかな。まあ、基本、素泊まりのゲストハウスだし」


「ああ、それで」

乗船する前に、恭介と亜由美は、食材などを買い求めていた。


午後になり、健次郎や瑠香と侑太がやって来た。


「と、遠い」

侑太がため息をついた。


「だろ? 俺が島を手放して、都会に舞い戻ったの、わかるだろう」

健次郎は笑った。


瑠香は口を尖らせながらも

「あとで、おじいちゃんと私が暮らした家、見せてあげる」

侑太に言った。


亜由美が、皆に紅茶を振る舞う。

飲み干した恭介は、砂浜へ向かった。


波は静かに呼吸を繰り返し、カモメが空を旋回している。


恭介は砂浜に腰を下ろし、景色を眺めた。

足音に振り返ると、悠斗がいた。


「ここ、だったのか?」

「うん。だいたいこの辺だと思う」


砂浜は、恭介が地底を脱出し、辿り着いた場所。

もう一度、現実社会を生き直すきっかけを、くれた場所。


「よく戻ってくれた」

しみじみと悠斗が言う。


「悠斗がくれた、オパールのおかげだよ」

悠斗は照れた表情で、恭介の頭をくしゃくしゃにした。


「この海に潜ると、異世界に行けるのか?」

悠斗が尋ねる。


「どうだろ? もう一回行けと言われても、俺は行かない」

「なんで?」

「この現実世界で、やることがあるから」


それは何なのか、恭介は言わなかった。

悠斗も敢えて、尋ねなかった。


西に向かう太陽は、徐々に朱色を増す。

恭介は立ち上がる。

「今夜は、流星群が見られそうだ」


夕食後、恭介は健次郎に依頼する。


「例の池に、連れていってください」

「なんだ、あまり酒を出さなかったのは、そういうことか」


例の池。


この島に伝わる伝説の、月が映った水面に落としたものは、尽く飲み込むという底なしの池である。


恭介が、今回島に来た理由は、島の開発の進捗状況を確かめることと、その池に行くことであった。

後者の理由の方が、メインとも言える。


そして、出来れば関係する人たちに、立ち会って欲しいと思っていた。

恭介の決意を知って欲しいと。


日没後のセッコク島の闇は、相変わらず深い。

六人は懐中電灯やろうそくを片手に、健次郎の後に続いた。


池は海岸のほど近くにあり、地面との境が殆ど見えない。


「落ちたらヤバそうだな」

侑太が呟く。


地面との違いは、黒い水面に星が光っていることだ。

時折、夜空を流れる星が、水面に光の流れを描く。


恭介は他の五人にそれぞれろうそくを渡し、手持ちのろうそくの火を移した。


「丁度六人ね」


瑠香の言葉に恭介は頷く。

瑠香は分かっているのだろう。


恭介の指示により、六人は池の畔に散らばる。


各人が持つろうそくの灯が、六芒星を作った。


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