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第六部

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【第六部】暁光 一章 残務 6


「武内宿禰って、はるか昔の伝説の人でしょう?」


侑太は健次郎に言う。


「そう。伝説であり、実在でもある」


侑太は、母香弥子から、家系にまつわる事柄を、それなりに聞いていた。

眉唾ものの言い伝えもあれば、香弥子が生まれた島の、リアルな風土病の話もあった。

よって、大抵のトンデモ話には耐性が出来ている。


しかし。

武内宿禰とくれば、話は別だ。


だいたい西暦一世紀くらいの人である。

二千年もの時を生き続けているとしたら、コールドスリープでもしていたか、地球外生命体か、あるいは

神ではないか。


侑太が考えあぐねている間に、健次郎は「ちょっと失礼」と席を外した。


瑠香は健次郎が廊下を曲がったのを見届けて、侑太に向かう。


「気にしないで」

「えっ。何を、ですか?」

「おじいちゃんが『結婚』とか言ったこと」


侑太は残った片目で笑う。


「俺は気にしないし、ていうか、許されるなら、したいです。結婚

瑠香さんと」


瑠香は固まった。


「いやいやいや。

自分で言うのもなんだけど、私とは止めといた方が良いと思うよ。

侑太より七歳も年上だし、ワガママだしオタクだし」


「恭介から聞いてるかもだけど、俺、どうしようもない人間でした。

別鑑か少刑送りでもおかしくない。

母と一緒に死ぬとこだったし」


「そのあなたのお母さん、亡くなる直接のきっかけは、私がやったことだよ」


侑太は頭を横に振る。

「あれは母の積んだ罪の清算です。瑠香さんのせいじゃない」


母が最期に呼んだのは、侑太の名ではなかった。

香弥子が真に愛したのは、一人だけ。

侑太の母への慕情は、あの時に切れた。

残ったのは、憐憫のみ。


健次郎が席に戻った。


「あ、タバコ臭い!」

瑠香が口を尖らす。

その表情もまた可愛いと、侑太は思った。


「畑野さん、瑠香さんとの結婚、俺はお受けします。

つきましては、畑野家と宇部家、ならびに壬生家と新堂家の関わりについて、詳しくお話下さい。

武内宿禰のことも」


健次郎は満足そうに頷いた。

瑠香は不貞腐れた顔で、ストローを咥えた。


「どの国も、固有の守護神を持っている。それは神話や伝説という形で残っているだけで、現在では実態を知る者は限られている。

日本においては、東西南北を守る四体の聖獣が守護神だ。

奈良時代、平城京は、『四神相応しじんそうおう』の地として選ばれたそうだ」


「東に青龍、西に白虎、南に朱雀、北に玄武、っていうアレね」

「そう、以前、瑠香には説明したな。神聖な生き物として、麒麟、鳳凰、霊亀、応竜と呼ぶこともある」


侑太は、夏のあの日、体育館の水底で邂逅した、不可思議な生き物を思い出す。


大きな亀と、馬のような龍のような生き物。

あの者たちは、何だったのだろう。


まさか、な。


「日本が国難に襲われた時、四体の聖獣は国を守ってくれるそうだ。

だが、条件がある」

「どんな条件ですか?」


「悲壮感や恨みつらみ、暗い心で呼んでも四聖獣は動かない」


「それで、なるべくみんなが明るい気持ちになれるような、演出が必要なのね。

今回も」


侑太は合点がいった。


瑠香から急に、牧江を日本に呼びたいと言われた。

そして牧江と一緒にパフォーマンスを行い、動画配信をするからと言われ、必要な機材の手配と設置を慌ただしく行ったのだ。


確かに、配信した動画のアクセス数が伸びるほど、空の空気は明るくなっていった。


「そう。嘆き悲しむだけではダメだからな。人として、明るく前向きに、最大限奮闘する姿勢。それを示すのが前提だ」


「前提って、それだけでは十分じゃないってこと?」


「そうだ。四聖獣を動かす、鍵を持つ人物がいないと難しい」


「その鍵を持つ人が、武内宿禰なんですね」


ほおっとした表情で、健次郎は侑太を見た。


存外、侑太こいつは頭が良い。

恭介と初めて会った時も、年齢に似合わず賢い少年と思ったが、侑太は回転が速い。


さすがに「藤」の血縁である。


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