【第五部】縁 四章 残照 6
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牧江と瑠香の動画は、佳境を迎えていた。
「拾ったよ!」
魔女の牧江がにっこり笑う。
その手に輝く真紅の石。
「やったね!」
天使の瑠香がピースサイン。
V字を作る指の間に、紫色の石。
「そろったよ!」
「そろったね!」
魔女と天使が手を取って踊りだす。
校庭全体から、拍手と歓声が上がる。
「あのね、みんな」
魔女の牧江が語りだす。
「りなって悪いコだったの。すごく、すっごく悪いコだった。
いっぱい人を傷つけた。今更謝っても、もう遅いけど」
アップの牧江の瞳が潤んでいる。
「でもね、りなは変わった!
変わることが出来た!」
瑠香が牧江に問いかける。
「どうやって変われたの? りなリン」
「それはね
信じる心を取り戻したから!
未来を信じることが、出来たから!」
牧江のコスプレは、魔女のダークなコスチュームから、真っ白い衣装に変わる。
牧江は魔女から、天使にチェンジした。
「だから、みんな信じて!
自分を信じて!
仲間を信じよう!
絶対、大丈夫だよ!」
牧江の科白に呼応するかのように、空からキラキラ光るものが落ちて来る。
オレンジ色の宝石のカケラ。
同時に、大型の鳥の羽ばたくような音が、辺り一面に響いた。
ベランダの白井と綿貫は、互いの手を握りしめ、それを見送る。
綿貫が描いた場所から抜け出た聖獣が、夕陽に向かって飛び立つ姿を。
鳥の様な聖獣は、東京湾からうねるようにやって来る、竜の姿の聖獣と共に、空を駆ける。
群馬の山奥には、既に、二足歩行のウサギのような姿の聖獣が跳ねていた。
ウサギのような聖獣は、地に伏したまま動かない、一人の女性を抱え上げた。
女性は口から血を流して倒れていたが、息はまだあった。
群馬、栃木、埼玉の山から吹き下ろす、強い風は県境を目指す。
風は蟲たちを散らし、重い空気を払っていく。
仙波は忌々しそうに空を見る。
「チッ。奴らが動いたか。いきなり空気が変わったな。
ここいらで決着をつけないと」
傷だらけの体のまま、恭介は刃を構えていた。
腕はどんどん重くなり、足の動きもままならない。
汗と血が恭介の視界を狭くする。
仙波の攻撃は真正面から来た。
避けられない!
風が渡った。
恭介の視界が晴れる。
恭介の目の前を横切る影が、仙波の直撃を受けた。
どさりと落ちる影。
フクロウか。
そして恭介の耳に届く友の声。
「恭介!
受け取れ!」
悠斗が投げた包みを、恭介は確実に受け取る。
考えるより早く、恭介は鞘から刃を抜く。
恭介が持つ小刀と、新たに手にした刃が重なり、落陽を撥ね返す。
撥ね返した光は、光輪を放つ。
フクロウのような鳥が一声鳴いた。
突き刺せ!
そう恭介には聞こえた。
恭介は躊躇なく、重ねた二本の刃を、己の胸に突き刺した。




