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【本編完結】異世界から戻ったので、とりあえず復讐します~少年が大人になる通過儀礼~  作者: 高取和生@コミック1巻発売中
第五部

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【第五部】縁  三章  時間の交錯 10

10


正午を迎える頃。


柏内と聖子は、それぞれ、榛名山と日光二荒山に辿り着いていた。

畑野健次郎からは二人に、雲取山に向かうという連絡があった。


そして武内は今、竹芝桟橋にいる。


四極点、同時封印術。


それは四人の術者が、四か所から同時に、災厄を封じ込めるぎょう

江戸幕府の中枢部であり、日本の首都である領域を、守る呪法である。

無論

誰もが出来る技ではない。


だが

「私がいるから大丈夫でしょう。それにね」


柏内はともかく、行だの呪法だの、あまり縁のない人生を送ってきた聖子に、武内は言った。


「自然の恵みに感謝し、自然と共生できる人、すなわち、

平野聖子さん、あなたのような人なら、きっとできます」



同時刻。


放水路近くの堤防付近。

辺り一面、まるでとばりの如く、黒い霧が降り立っていた。


蜘蛛の糸で作られたドームも、外側にはびっしりと、蟲が貼りついている。

糸はギシギシと軋み、徐々に悠斗らがいる内側へ、凹み始めている。


瑠香は膝を地面につけた体勢で、額に汗を浮かべていた。

ぎりぎりの体力と精神力で、内部への蟲の侵入を押さえていた。

だが

瑠香が使役する蜘蛛たちも、ぽとりぽとりと落ちて来る。


悠斗は瑠香を支えながら、スマホでニュースを追っていた。


――埼玉県K市全域、外出禁止令。市内の学校臨時休校。

――東京都A区、高齢者施設内に、大量の蚊が侵入。一人がアナフィラキシー症状。

――千葉県I市、駅構内入場禁止。


わずか六時間足らずの間に、夥しい蟲らは首都圏を進軍し、人と街を蹂躙している。


SNSにひっきりなしに流れているのは、大群の蟲の画像と動画。

さらには、「悪魔の呪い歌」の歌詞。


悠斗の頭上、ビニールが裂けるような音がする。

蜘蛛の糸のドームの一部、蟲によって破られていた。


「悠斗、逃げろ!」

瑠香が小声で言う。


「走って走って、どこか屋内に逃げるんだ」


「いやです! 恭介も貯水槽に入ったまま出て来ない。

俺だけ、逃げるわけにいかない!


もう二度と

俺はアイツを一人にしない!」


破れたところから、堰を切ったかのように、黒い塊が流れてくる。


瑠香も悠斗も、視界が遮断される。

耳鳴りにも似た、無数の羽音。


今度こその

絶体絶命。


瑠香は心中叫ぶ。


パパ!

おじいちゃん!


その刹那。


黒い空気が斜めに切り裂かれた。

雲を突き抜ける、稲妻のようだ。


車のワイパーが水滴を弾くように、上下左右、黒い塊が何度も弾かれる。


「瑠香さ――ん!」


瑠香も、もちろん悠斗も、聞き覚えある声がする。


間に合った!

瑠香の上体が崩れかけ、駆け寄ってきた侑太に抱きとめられる。


視界が晴れてきた。

そこで瑠香と悠斗が見たものは、蟲の大群をものともせず、華麗に飛び回る鳥たちの雄姿だった。



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