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第五部

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【第五部】縁  二章  突き抜けたその先 4


「おい恭介、祖母ちゃんが来いってさ」


生徒会のメンバーによる、平野聖子へのインタビューが終わったようで、侑太が恭介を呼びに来た。


聖子は、侑太の自宅で過ごしたあと、校内のゲストハウスに滞在していた。


恭介は、亜由美に頼んで、校内のあちこちにSPを配置してもらっている。


聖子のいる部屋に向かう途中も、教師のようないでたちで、そこここに、インカムを付けた警備員がいる。


ノックをして部屋に入ると、漂う蘭の香りの中で、聖子は微笑んでいた。


室内には静かに音楽が流れている。


「なんだか、ものものしい学園ね」

「すみません。平野さんの安全を保証するため、警備員を増やしています」


恭介は頭を下げる。


「安全、ほしょう。略して、アンポ」


一語一語を噛みしめるように、聖子は呟く。


聖子は恭介に椅子を勧め、お茶を淹れた。

紅茶でも緑茶でもない、薄紫色のお茶だった。


「懐かしい言葉だわ。ねえ、恭介」

聖子は、テーブルの上の飲料水が入った瓶の形を、指で確かめる。


「火炎瓶って、ご存じかしら」


かえんびん?

ぶつけたら、炎が上がる、アレ?


聖子の口から出た、物騒な言葉に恭介は驚く。


「私の世代は、いつも何かと闘っている。過激なことも、たいがい経験したのよ。自作の火炎瓶を、機動隊に投げつける、とかね」


たおやか、という表現が似合う、この祖母が、そんなことを体験しているのか。

にわかには信じられない。


「今も闘っている。私も、友人たちも。危険は承知の上で」


聖子はスマホの画面を開き、恭介に差し出した。


「これが友人。そして私の恩人」


画面には、二人の女性が映しだされている。一人は若い頃の聖子であろう。

もう一人の人物は


「柏内さん?」

若い頃の柏内がそこにいた。


「闘争が終了し、彼女は救いを求めて神の道へと進んだの。

私は妊娠に気付き、創介を産んだ。道は離れたけれど、今も目指す場所は同じ」


陽介が柏内を頼ったのも、聖子からその存在を聞いていたからだという。


何処を目指しているのだろう。

祖母や柏内は。


恭介が高校で白井と出会い、気が付けば親しくなったのも、祖母同士が親友だったからなのか。


そういえば白井は、柏内から勧められ、狩野学園を選んだと言っていた。


聖子と柏内が、約束でもしていたのだろうか。

いずれ、孫でも出来たら、友だち付き合いをさせよう、などと。


まさか、な


「恭介。あなたと創介のいきさつは、陽介から聞きました。

創介のやったこと、許してとは言わない。でも、創介のこと、理解して欲しい。

創介の母として、あなたの祖母として、私の願いはそれだけ」


蘭の香りが流れた。


音もなくドアが開き、何者かが侵入した。


恭介が振り返るのと、侵入した男が棒状のものを振り下ろそうとするのは同時だった。


振り下ろされた棒状の物を、恭介は左の前腕で受けとめた。


金属の棒だ!


指先まで痺れた。

骨は、大丈夫か。


いや、俺の体の心配よりも

守らないと!


聖子を!

祖母を!


恭介が相手に拳を突き出す前に、金属棒を持った男の体が崩れた。


ガラスの破片と水しぶきが、室内に飛び散った。


しなやかな身のこなしで、聖子が男の側頭部に、ガラス瓶を打ちつけていた。


「鉄パイプの使い方、なってないわね」


ガラス瓶の割れた音に気付いたSPたちが駆けつけた。


「この生徒さんに守っていただきまして」


にこやかな表情で、侵入者を引き渡す聖子の姿に、恭介は祖母たちがくぐってきた、修羅場を垣間見た。


講演会は


明日。


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