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【本編完結】異世界から戻ったので、とりあえず復讐します~少年が大人になる通過儀礼~  作者: 高取和生@コミック1巻発売中
第五部

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【第五部】縁  二章  突き抜けたその先 1


藤影創介は自社の社長室で、小型のナイフを眺めていた。


午後の日差しはブラインド越しに、線状の光を投げている。

ナイフの刃に写る創介の顔に、陰影を生じさせながら。


このところひっきりなしに、マスコミからの取材依頼がある。

その件に関して、間もなく会議が開かれる。


数日前、仮説検証かたがた、創介は再度、社内診療所を訪れた。


武内は、パラパラと創介の検査結果を見つめて言った。


「さすがですな、坊ちゃん。失礼。社長

ご推測通りの結果でした」


創介の読み通り、彼の血中には、寄生虫の痕跡が認められた。


見当はついている。


新堂香弥子から感染うつされたものであろう。

もっとも、香弥子が亡くなった今、確認のしようもないのだが。


「先生、対処はしたよ。今後のことも、含めてだ」


武内は長い髭を撫でながら、にっこりと笑った。


「それは何より。私も心置きなく退職できますな」


「えっ、退職?」


「はい。年も年ですし。懸案事項も片付きました」


武内は引き出しを開け、何かを取り出す。

金色に光るそれを、創介に手渡した。


小さく、刃の薄いナイフだった。


「お持ちください、社長。由緒正しい剣の刃先だけ、このような形に残したものです。

先代、先々代にもお世話になったお礼です。


これで

断ち切れますように。

あなたの血脈に繫がる、想いのすべてを」


「先生の懸案事項とは、なんだ一体」


「坊ちゃんの女グセです」


笑えない冗談だった。


「私はあと一つ、片付けることがありますので、退職願はあとで郵送します」


社長室に内線が入る。


「お時間です」


会議の議題は分かっている。


社長、藤影創介の退任。


創介はナイフを懐に忍ばせて、会議室へ向かった。



同時刻。


恭介は母、亜由美と共に、成田にいた。

まもなく、平野聖子が到着する。


平野は創介の母。

すなわち

恭介の祖母である。


恭介が直接会うのは、初めてだ。


「どんな人?」


恭介は緊張した面持ちで、亜由美に聞いた。


「不思議な人よ。お顔は創介さんに似ているわ」


到着口で待っていると、ふわりと香りが漂った。


蘭の香り?


目の前に、湖面のような色のワンピースを着た、年配の女性が立っていた。


輪郭は柔らかいが、鼻梁の高さは、創介と同じだった。


「お久しぶりです、お義母さん」

亜由美が女性と抱き合った。


女性は亜由美の側の恭介を見て、目を見開らく。


「恭介、なのね、あなた」


「はい。藤影、恭介です。はじめまして」


その女性、平野聖子は恭介の両肩に手をかけ、そっと抱き寄せる。


「そっくりね。創介に」


恭介の胸に、鈴の音が響いた。


血のなせる業なのだろうか。

連綿と続く、母と息子と、その子ども。


初めて会ったはずなのに、いたって懐かしい感覚。


恭介は実感した。


間違いなく、俺のお祖母さんだ。この女性ひとは。


三人はタクシーに乗り、都内へと向かった。


その道すがら、聖子の話を聞いた恭介は、ふと、父、創介に会ってみようかと思った。


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