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【本編完結】異世界から戻ったので、とりあえず復讐します~少年が大人になる通過儀礼~  作者: 高取和生@コミック1巻発売中
第四部

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【第四部】 追跡   四章  意識の狭間 6


恭介と悠斗が向かっているのは、亜由美の兄、岩崎江一の墓である。


江一は今、どこにいるのかと亜由美に聞いたところ、行方が分からなくなって十年くらいたった頃、死亡宣告をしたと言われた。


「まったく、行方不明になりやすいって、ウチの血筋かしら」


その後、藤影の墓がある霊園の片隅に、小さな墓を建てたという。


しばらく歩くと、確かに霊園の入り口から離れた場所に、江一の墓はひっそりと建っていた。


「ここか」


長い間、誰もお参りに来ていないようなお墓である。

恭介は、用意した線香に火を点けようとして気付く。


江一の墓石の四方に、高さ三十センチばかりの石柱が立っている。


エジプトのオベリスクに似た形の、石柱である。

柱にはびっしりと、細かい模様が描かれている。

よく見れば、梵字の羅列であった。


何かを、封印しているみたいだ。


恭介は試しに、石柱を動かそうとしたが、両手で力を込めてもビクともしない。

それに触った瞬間、ビリビリと電流が走ったように感じた。

気色悪い石柱である。


諦めた恭介は、線香を立てる。

白い煙が、いつぞやの男の影を想起させる。


煙は上に昇っていくことをせず、何故か真横に流れる。

一番手前の石柱に、線香の煙がぶつかると、そこから更に煙は直角に曲がる。

瞬く間に、煙は四本の石柱を幾重にも結び、恭介は煙の中に閉じ込められた。


恭介の数歩後ろにいた悠斗には、墓地にいきなり濃い霧が立ち込めたように見えた。

まるで

二人で泊まった秩父の夜みたいだ。


「どこだ? キョウ!」


恭介は墓石を前にして、煙が人の型を作る様を見ていた。

驟雨の際、空を覆う、雲のようだ。


――かえしてくれ


前回よりも鮮明に聞こえる人影の声。


「これか?」


恭介は再度金庫から持ち出した、巾着袋を人影に投げる。


――おおお……


嗚咽にも似た声がした。

中の骨は巾着袋ごと、人影に吸い込まれた。


――ありがたい


「その骨を持ち出したのは誰だ。何のために」


――うつしたま……


煙が薄くなる。

人影はまた、すうっと消えた。


岩崎江一の墓に供えた線香は、燃え尽きていた。


「おい、キョウ」

恭介が振り返ると、心配そうな悠斗がいた。


「良かった。霧が晴れた」


霧?

悠斗の目には、霧に見えていたのか。

それにしても、「うつしたま」とは何だろう。


恭介がスマホを開くと、タイミング良く白井からメッセージが届いていた。

「一緒に昼飯食おうって」


恭介と悠斗は、墓に向かって軽く手を合わせ、霊園を後にした。


いつものファミレスで三人はおち合った。

「墓参り?」

「うん。俺の」

「何それ」


恭介は霊園での出来事を二人に話した。

侑太の話は割愛した。


「食事時に話すことじゃないけど」


そう前置きして、白井は、オーキッドに含まれていた寄生虫のことを話す。


隔靴掻痒とでも言うのだろうか。

薬物のことも、呪いのことも、答えが喉元まで来ているのに正解が言えない。


「それで、その煙の中に現れた人ってやっぱり」

「うん、母の兄、俺の伯父に当たる人だと思う」


話ながら恭介は、自分の意識を江一に向ければ、ひょっとしたら真相に近付けるかもしれないと思っていた。


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