【第一部】絶望 二章 地上と地底 7
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再度突風が吹き、竜は消えた、
恭介たちのいる場所へ、いつものメイロンが帰ってくる。
「すごい! すごいよ、メイロン。五メートル、いや十メートルの大きさだった!」
顔を紅潮させた恭介に、メイロンは照れくさそうに頭を掻く。
「メイロンが本気を出したら、六千キロメートルくらいになるぞ」
いつもの如く、偉そうなリンがやって来た。
六千キロとは、地球の半径くらいの大きさだ。
「だいぶ荒らされましたね」
スズメは決壊した泉のほとりを、ちょこちょこと見て回っている。
「ふん…少し急がなくてはならんな」
リンはひげをこすりながら、何か考えていた。
「キヨスケよ」
「はい」
「お前、今も地上に戻りたいか?」
「そりゃあ、出来ることなら…」
恭介は地底での生活は嫌いではない。
スズメやメイロンと一緒に食事をして、好きなだけ知識を得る。
リンやレイとの会話は、まだまだ難しくて全てを理解できないけれど、なぜかほっとする心持ちになる。
それだけではない。
ここに来るまで、あまりやったことのなかった肉体の鍛錬も十分できた。
結果、反射神経や脚力が桁違いに上昇し、ひ弱だった自分を変えられたのだ。
思念のコントロールも、コツがつかめてきた。
それでも、なお…
「俺は地上に戻って、やらなければならないことが、あるような気がするんです」
恭介は真っすぐにリンを見つめた。
「…強くなったな、キヨスケ。…よかろう」
リンは少し目を細め、恭介に言った。
「地上に帰るのは、来ることよりも何倍か困難だ。それに耐えられるかどうか、試験を受けてもらおう」




