表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】異世界から戻ったので、とりあえず復讐します~少年が大人になる通過儀礼~  作者: 高取和生@コミック1巻発売中
第四部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

153/243

【第四部】 追跡   三章  交差する光と闇 7


気が付くと、床に倒れた女性の姿は消えていた。

店内は何事もなかったように静かである。


「そもそもね」

景之は更に追加で「大判焼き・メープルクリームかけ」をオーダーした。


「日本の厚労省の年間予算、だいたい三十兆円くらいなんだけど。それが適切な額かどうか、ともかくね。内訳は、年金関係十一兆。介護関係一千億。子育て支援に七百億。生活支援に五百億。感染症対策って四百億にもいかないの」


いきなり景之は話題を変えた。恭介も数字に弱い方ではないが、こうもすらすら並べられて、「はあ」としか言えない。


「悪質な感染症が流行ったら、ろくな対策とれないよね」

「悪質って、例えば?」

「最近で言えば、鳥インフルエンザ。H5N1」

「鳥のインフルエンザ、ですか」

そういえば、時折ニュースで聞く病名である。文字通り、鳥類の感染症として。


「そう。鳥の感染症。今のところは、ね」


確かに、鳥インフルエンザウイルスは、まれに人に感染することがあるが、今のところ人から人への感染は確認されていない。


しかし、鳥から豚に感染が起こると、豚から人への感染は容易となり、豚や人の体内で突然変異の危険性が高まる。既にWHO(世界保健機関)は、十年以上前から、鳥インフルエンザのウイルスが変異して、人類のパンデミックを起こしても、おかしくないと警告している。


「そういったウイルスの突然変異の研究、やってたの。藤影創介さん」

「えっ!」


「それでね、今、藤影さん、米国の企業を買収する話が大詰めなんだけどね、相手の企業さん、予防接種の製造に関して、いくつか特許を持ってるところ」


恭介の知らない事実が、明かされていく。

ついていくのが精一杯だ。


「なんで買収話が進んだかといえば、藤影創介氏の研究実績があったからなの」


「だから今は、藤影創介を表舞台から降ろすことは出来ない。というわけね」

瑠香が大判焼きを半分食べながら言った。


「そうなのよ。さすが瑠香たん!」


実は年内、藤影本社の四半期決算を目安に、恭介は手持ちの株をすべて集めて、臨時株主総会開催と社長退任の要求を出そうかと思っていた。


時期尚早だったのか。

あるいはこれが、恭介の今の実力か。


「恭介くん。君は大変賢いし、勇気も度胸もあるよね。実際、君と君のお友達のおかげで、若者の間で困った流行をしていた、ドラッグの取り締まりも上手くいった」


瑠香はお茶請けで出された塩豆を、ぽりぽり食べながら頷いている。


「ただね、悪とか正義とかって、そんなに簡単に判断できるもんじゃない。法律という物差しがあってもね。君が藤影さんと対等に戦いたいのなら、もっともっと社会経験と、実績を積んでいかなければならないって僕は思う」


なるほど。

恭介の腑に落ちる景之の言霊である。


「ってまあ、ここまでは、現実社会のお話ね。こっからが本題。僕が今、日本にいる理由。恭介くんにも大いに関わること」


そう言って景之は立ち上がり「ご馳走さん」と言っただけで、支払いもせず外に出た。

店の前には一見タクシーのような、一台の黒い車が停まっており、景之はさっさと助手席に乗り込んだ。

恭介と瑠香も、慌てて後部座席のドアを開けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ