表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】異世界から戻ったので、とりあえず復讐します~少年が大人になる通過儀礼~  作者: 高取和生@コミック1巻発売中
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/243

【第一部】絶望 二章 地上と地底 5

6月15日、小幅加筆


「キヨスケよ、あまりレイ様に負担をかけるでないぞ」


泉に戻ると、リンが長い耳の手入れをしていた。

ちょっと可愛い。


「はい」と答えて恭介は、レイから聞いたことをかいつまんで話し、疑問に思ったことをリンに尋ねてみた。


「地上から、意識を飛ばすことができるなら、この泉を通して、俺が地上へ思いを届けることってできますか?」


リンはふん、と息をつき、答えた。

「出来ないこともないな。ただし…」


それには、いくつかの条件が必要であった。


「天空の星廻り、受け取る側の感受性、そして何よりも」


リンは恭介の胸を軽くたたく。

「お前の思いの強さ、だ」


リンは泉の水を自分の掌に乗せる。最初に水で地球を形作ったように、リンの手の上で、水は恭介の姿を成型した。


「このくらいの小技が使えるようになったら、思いが届けられるやもしれんよ」

水を掬って、会いたい人の姿形を作ってみろ、とリンは言った。


会いたい人、思いを届けたい人は二人。

そして、悠斗。


天空の星々の動きと、どの星がどう動くと何が起こるか、ということについては、今まで同様、泉での知識をひもとくことで、さほど時間もかからずに、恭介は習得できた。


だが、水を操るような思念を持つことは、存外難しかった。


ある日、恭介がいつものように、泉のほとりで水に思いを込めていると、スズメがバサバサと降り立った。


「水遊び、ですか?」


恭介は笑いながら答える。

「まあ、そんなとこかな。水に形を与えるって、難しいね」


スズメは小首を傾げる。

その名の通り、小鳥みたいだ。


「恭介さんは、石をもっていませんでしたか?」

ああ、悠斗から貰った、プレなんとかの原石か。


お守り代わりに小さな袋に入れて、いつも首にかけている。


取り出して「これ?」と聞くと、スズメはコクコク頷いた。

プレシャスオパールの原石は、薄いオレンジ色に光る。


「それは、プレシャスのようなユラユラ揺れる光だけでなく、炎の色も併せ持つ、稀少な石のようですね」


スズメはこともなげに言う。

「この石の力を借りれば、出来ますよ」


「えっ? 石のちから?」


「そうです。恭介さんも、陰陽五行の知識は知ってますよね」

木・火・土・金・水(もくかどこんすい)のことだろうか。


「そうです、地上のあらゆるものは、その五種類の元素からなり、互いに影響を与えて循環する。木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生じるという…」

「それなら、この石は…」

恭介は原石を握りしめた。


「原石は鉱物です。すなわち『金』。金は水を生み出すことが出来る」


恭介は原石を強く握りしめ、悠斗の顔を思い浮かべた。


瞬間


石の間から水があふれだし、空中に人の姿を形作った。


「悠斗!」


水から湧き出た悠斗の顔は、笑っているように見えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ