表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】異世界から戻ったので、とりあえず復讐します~少年が大人になる通過儀礼~  作者: 高取和生@コミック1巻発売中
第三部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/243

【第三部】 開始   六章  遺伝子と環境 9


夏休みの終わり近く、白井に連れられ、恭介と悠斗は、白井の故郷に赴いた。

東京から、在来線でも一時間半。

海はないが、山脈は美しい。


「お前、こっから通学しようと思ったら、出来るじゃん」

悠斗に言われて白井はあたふた答える。

「い、いや、駅からウチまでが遠いんだよ」


駅前ではSUV車が三人を待っていた。

「こんにちは。初めまして」

車の窓から顔を出した女性は、白井の母、寿和子すわこだった。

ショートヘアが似合う、若々しい女性だ。


「ヒロって、お母さん似なんだね」

恭介がそう言うと、白井は照れながら、寿和子に二人を紹介した。


「いつも弘樹がお世話になっていますね。うわあ、噂通り、二人ともイケメン! おばさん、テンション上がっちゃうわ」

「余分なこと言うなよ、おかん」


車は繁華街を抜け、郊外へと向かう。

山の姿が近づいてくる。

車中では、寿和子が語る「余分なこと」、すなわち白井の中学時代のエピソードに恭介も悠斗も大笑いした。


白井の実家は、駅から車で三十分くらいのところにあった。

立派な門構えの日本的家屋で、門は東南を向いていた。

風水的に、良い造りである。

玄関では、白井の祖母の柏内が待っていた。


「ようこそおいで下さいました」

恭介と悠斗は、それぞれ手土産を渡す。

「弘樹が高校のお友達を連れてくるとは」

しみじみと柏内が言う。


「お前、ひょっとして、ぼっちだった?」

「ち、違うよ!」

悠斗がからかうと、白井は頬を膨らませた。


その日の日暮れ、恭介らは柏内の部屋で、高校での一連の騒動や、房総での出来事を話した。

蜩が鳴いていた。


一つひとつの話に頷きながら、柏内はなぜ、白井を東京へ送り出したかを語り始めた。


「実は一昨年のことです。祈りを捧げていると、お山から南に向かって、突風が吹きました。神が渡っていく風です。南には、首都東京がある。きっと、何かが東京に降りるのだろう。そう、私には感じられました」

「じゃあ、ばあちゃんが東京に行けばよかったんじゃ」


「いいえ。私にはこちらの行があるのです。そして、南の方位の象意しょういには学問の意味もある。これから勉学を深めていく、弘樹にはぴったりの方位だったのです」


「しょうい?」

「方位が持つ効果、みたいなものだよ」

白井の疑問に、恭介が答えた。


「その通りです。では、南の方位が持つ、他の象意もご存じでしょうか」

恭介は地底で覚えた方位の意味を思い出す。

「あっ!」

「そうです、アクだし、すなわち毒を出す作用。さらに言えば麻薬などの薬物の意味」

「だから、親父も一緒に住むことになったの?」

「ふふ、それもありますね」


なるほど。

恭介を溺れさせようとした連中も、本人の持つ灰汁あくを出す必要があったのか。


「では、柏内さん、俺が房総の海底で見た、八人の女性とは、一体何だったのでしょう」


柏内の表情が、わずかに険しくなる。

「弘樹、あの塩を持ってきなさい」

白井は黙って従った。

白井が持ってきた天然塩を、柏内は部屋の四隅に撒いた。


「この家屋も私の部屋も、普通の邪気なら入ってこられませんが、ミサキは少々手ごわいのですよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ