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聖女と世界一かっこいいゴリラ  作者: 毒アリクイ先生
6/17

【6】

 同時刻――。


 中央大聖堂、城壁北側。


 ただし城壁の外側――つまりは討伐軍の側である。



「――斥候より報告!

 聖女エウァンシェリルに逃げられました!」



 大聖堂を包囲する討伐軍――

 メデテラ連合帝国の第四軍3千2百を率いる将は、副官の報せを耳にして、


「かまわん。

“聖女”は囮である。おそらくは偽物。

 追う必要はない」


 と断じた。


「ただし本物の聖女を囮として用いている可能性もある。

 斥候のうち特に俊足の者10名をもって、決して見失わぬよう後を追わせよ」


 それよりも自陣を急いで立て直さなければ。

 手柄を急いだ現場指揮官や兵たちが、持ち場を捨て、聖女のいる森の中へと殺到してしまったのだ。

 城壁の包囲は崩れかけていた。


「……見せしめに士官を何人か、首を刎ねてやらねばなるまいな」


 ぽつりと漏らしたその言葉に、周囲の士官たちは顔から血の気を失わせた。


 この将の名は、メルウ・グルゼ軍事伯。

 人呼んで“斬首姫”。


 北方討伐で名高きグルゼ・ノゼ軍事伯の長女である。

 まだ十代のうら若き乙女でありながら、引退した父親の跡を継ぎ、帝国の将軍として堅実に軍功を上げ続けていた。


「それよりも、先ほど混乱に乗じて裏手から脱出したという一団をこそ追跡せよ。

 あれが枢機卿一派であるならば、この討伐自体が失敗となろう。

 逃がせば罪は償いきれんぞ」


 この討伐軍の真の目的は、教会を実質支配する枢機卿一派の討伐なのだ。

 おかざりの聖女は後回しでよい。


 ――それに、どうせ囮の聖女は本物だろうと追っても無駄だ。


 聖女の護衛は、名高き“大剣”ローランド。


 あの出自不明の異民族傭兵がついている以上、千や二千の兵では手に負えまい。


(今は見逃す。

 だが、いずれ貴様の首はもらうぞ。

“大剣”ローランド――わが心を奪った男よ!)



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