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藤井政人の異世界戦記 ~勇者と共に召喚された青年は王国の統治者となる~  作者: へびうさ
第二章 闇の勇者を求めて

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45.クロアの町の病院にて

『随分長い間会っていないが、英樹は無事に過ごしているか? 俺はなんとか元気にやっている』


 政人は英樹に手紙を書いていた。


 聖司教との会見の後、クリッタが「俺もそろそろ仕事をしないとな」と言って、記事を書きだしたのを見て、政人も近況報告がてら、英樹に手紙を書こうと思い立ったのだ。


 今までの旅で経験したことを、事細かく書いていく。


 王都デセントを出発し、聖騎士たちに守られながら、港町ゾエまで馬車に乗って旅をしたこと。


 ゾエの町ではゴドフレイ一家と抗争になり、怖い思いをしたが、なんとか解決したこと。


 イヌビトのタロウを飼うことになったこと。


 ソームズ家の船に乗せてもらい、ガロリオン王国まで行くことになったこと。


 船酔いで死にかけたこと。


 港湾都市アンクドリアで、ゴルグ石の横流し業者の摘発(てきはつ)に協力したこと。


 その結果、公都ホークランへ行き、ソームズ公に会うことになったこと。


 迷宮都市ヘルンへ、ソームズ家の騎士に守られて旅をしたこと。


 ヘルンには「冒険者ギルド」という、異世界ファンタジーに出てきそうな組織があったこと。


 新聞社で「広告」の説明をしたら驚かれたこと。


 イヌビトのハナコを飼うことになったこと。


 新聞記者のクリッタに案内されて、六神派信徒が住むクロアの町へ行くことになったこと。


 その道中、盗賊に襲撃されそうになったが、ルーチェとクリッタが倒したこと。


 クロアの町は豊かで、住人たちも親切だったこと。


 闇の神殿で、ガロリオン王国におけるメイブランド教会の最高指導者、ケンブローズ聖司教と会見したこと。


 そこまで書いて、政人の筆が止まった。


 闇の勇者には王でなければなれないため、神聖国メイブランドに闇の勇者を連れていくことは、現実的には不可能になったことを書くのは、気が重かった。英樹を失望させることになる。


 だが、嘘を書くわけにもいかない。

 その代わり、まだ諦めたわけではないことも書いておいた。


『正直、王に会って説得することは厳しいと思う。だが、やってみないで諦めるのは早い。俺はこれから王都ヴィンスレイジアに行き、方法がないか模索(もさく)してみる。あまり期待せずに待っていてくれ』




 翌朝、町でちょっとした騒ぎが起こっていた。


「昨夜、かなり遅い時間に騎士が二人と女が二人、この町にやってきたらしいぜ」


 クリッタがそんな話を仕入れてきた。


 クロアの町に騎士が姿を見せるというのは、住民にとっては非常事態と言っていい。騎士は信仰心が(あつ)く、その分六神派への敵意も大きいからだ。


「なんでも、女の一人が病気になったのでやってきたとか。治療を受けて、今は入院しているらしい」

「騎士か……」


(騎士なら、王とのつながりがあるかもしれないな。ダメ元で声をかけてみるか)


「どの病院か、わかるか?」

「調べればわかるだろうが……会ってみるのか?」

「ああ、王に会うために、できることはやってみよう」



 病院の場所がわかったので、行ってみることにした。


「大勢でぞろぞろ行くのはよくないので、俺とクリッタだけで行ってくる」


 政人は仲間たちにそう告げて、病院へ向かった。


「しかし、騎士様がどこの誰ともわからん俺たちに会ってくれるもんかね」


 クリッタがそう言うので、政人は何か自分たちの身分を証明するものがないか、考えた。


「これが使えないかな?」


 ゴルグ石の横流し業者を見つけたことで、ソームズ公から貰った感状を見せた。


「ソームズ公の感状か……ないよりはましだろうが、そいつらがヴィンスレイジ王家の騎士だとすれば、たいした効果はないな。ソームズ公は所詮、諸侯にすぎんからな。あまり期待はしないほうがいい」


「まあ、そうだよな」


 政人は病院の受付で看護師に感状を見せ、騎士に面会を取り次いでくれるように頼んだ。その際、自分たちは六神派ではないことを伝えてくれるように言った。


(五神派でもないけどな)


 待合でしばらく待っていると、看護師が戻ってきた。


「フジイさん、会ってくださるようですよ」

「えっ、そうなのか」


(試してみるものだな)


 病室に入ると、一つしかない寝台に女性が横たわっており、その隣に付き添いの女性が座っていた。


 そして騎士の恰好をした男が二人、こちらを向いて座っていた。

 他の患者はいない。


「おまえたちか、我々に会いたいというのは。見ての通り、我々の仲間が病気なのだ。用があるなら手短にすませろ」


 真面目そうな騎士が立ち上がり、頭ごなしにそう言った。


「おいネフ、いきなり喧嘩腰でどうするんだ。俺たちはここじゃよそ者なんだぞ。それに彼らはソームズ公から感状を貰うような人物なんだぜ」


 もう一人の軽薄そうな騎士が言った。「すまんね。こいつは悪い奴じゃないんだが、融通がきかん堅物なんだ。こいつはネフ、俺はギラタンと言う」


「俺はマサトだ。こっちはクリッタ」


 政人はそう言って、クリッタを紹介した。しかしクリッタは、寝台の女性を見て固まっていた。


「こいつは驚いたな」


 クリッタは目を見張っている。「ヴィンスレイジ・シャラミア様ですね。クオン王の即位の儀でお見掛けしたことがあります」


 それを聞いた二人の騎士は、今にも剣を抜きそうな剣幕になった。

 だが、それなりに場数を踏んでいる政人は、怯えることはない。


「ここは病室だぞ。座ってくれ。俺たちはあんたたちの敵じゃない」


 そう言うと、近くにあった椅子にさっさと腰を下ろしてしまった。

 続いてクリッタも座ってしまうと、騎士たちは所在なげに立ち尽くすことになった。


「ギラタン、ネフ、座りなさい」


 寝台に横たわった女性がそう言うと、彼らも仕方なく座った。


(なるほど、王族のシャラミアと、それに付き従う騎士たちか。これは面白くなってきたな)


 シャラミアは体を起こし、政人たちの方を向いて、寝台に腰を下ろす体勢になった。両足は包帯でグルグルに巻かれている。


「私はそちらの方の言われる通り、ヴィンスレイジ・シャラミアです。こちらは侍女のティナ。それで、なんの御用でしょうか。ただ見舞いに来られたのではありませんよね?」


(さて、ここからが問題だ)


「シャラミア様、俺たちは互いに協力できると思います」

「どういうことでしょうか」

「あなたたちは、王都から逃げてきた。違いますか?」


「なぜそう思う?」


 ギラタンが問いかけてきた。

 政人は部屋の隅に置いてある脱衣かごを指さして答えた。


「そのかごに入っている白黒のボーダーの服は、王族や騎士が着るような服には見えないし、この病院の患者衣でもない。どう見ても囚人服に見えます。なぜそんな服がここにあるのでしょうか?」


 そして政人はシャラミアに言った。「それに、ソームズ公の感状を見て俺たちに会おうと考えたのは不思議です。あなたの立場で諸侯とつながりを持とうとしたことがバレれば、王の周辺の者たちから疑いの目を向けられるでしょう。王位を狙っているのではないか、とね」


 さらに政人は、続けた。


「世間の評判では、あなたは聡明な方のはずです。そんな軽はずみなことをするとは思えません。それなのに今、ソームズ家と関わろうとしているのは、もうそれを隠す必要がなくなったからではありませんか? つまり――」


 政人はとどめを刺すように言った。


「あなたはすでに王家との縁が切れているのではありませんか?」

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